白の記憶
______カ_____ア___ス
誰?聞いたことがあるようで、ない声。
低い、落ち着いた声が反響して全体から聞こえてくる。
暗い、暗い、部屋のなかで私は目が覚めた。
頭が痛い。
幾万もの針で頭を刺されているような痛みだ。
起き上がって辺りを見回すと、部屋の明かりがついた。
「っ………」
「目が覚めたようだね。」
真っ白な部屋に笑顔で突然入ってきたのは20代の青年だった。
白衣を着て、黒ぶち眼鏡をかけていて茶髪だ。
「具合はどう?」
しゃがんで私と背を合わせて話す。
「大…丈夫です。」
できるだけの笑顔でそう答える
「そっか。びっくりしたよ!あの子が血だらけで帰って来たと思ったらこんなに小さい子を抱いてきて、この子を助けて。って。無関心なあの子が…ねぇ……」
そうか。
あの男の子が私をここまで運んで来てくれたのね…
彼はどこにいるんだろう?
それより……
「ん?どうした?聞きたいことあんだったら聞け?答えてやっからさ。」
「あの……あなた…誰?」
「あぁごめんね。俺はサヤ。医療班班長だ。つってもわかんねぇか。」
「…いりゅーはん?」
「医療班。簡単に言えば、お医者さんだよ。キズや病気を治したりするんだ。」
このあとも丁寧に質問に答えてくれた。
サヤさんによると、ここは白の古城と
言うらしく、特別な力を持った人達が集まる場所らしい。
名前の通り部屋も廊下も建物の半分以上は真っ白だった。
彼はどこにいるのかと聞いたら、お仕事に行っていると言った。悪者を倒しているのだと。
逆に、君は何歳かと聞かれた。私は、気がついたら紅い雪の上にいた、それより前の事はわからない、私は誰なのかもわからないと言った。
サヤさんは私の頭を撫でながら、辛かったな…といった。
話が落ち着くと、<城長>と呼ばれる人が入ってきた。
黒いフード付きのコートを着て、黒いブーツをはいている。20代後半くらいだろう。
「目は覚めたか、良かった。検査でキラが呼んでいるから、この子借りるよ。」
歩けるかい?
その人は私の手を取り、ゆっくり歩き始めた。
サヤさんは笑顔で手を振っている。私は振りかえしながら歩いて行った。