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陽だまりの種  作者: ハギ
13/14

最終章-間奏曲 雪舞う聖夜に

更新が遅くなってしまい、誠に申し訳ありません。今回は今までで一番長くなってしまいましたが、心を込めて書き上げました。ぜひごゆっくりお楽しみ下さい!

『5分前』


 ――どのくらい時間が過ぎただろう。

 暗い世界に一筋の光が入り込む。そしてゆっくりと、暗黒の世界は見覚えのある鮮やかな世界へと移っていった。

「父さん!」

 静寂と沈黙。当たり前のように返事はない。

 体を起こして部屋の中を見渡す。

「母さん……?」

 僕の部屋。過去でもなく、あの白い世界でもなく、“今”の僕の部屋。いつもと変わらない朝だった。

 時計に目を送る。12月24日、クリスマスイブの朝8時を少し過ぎていた。

「夢……か?」

 わからない。でも夢にしては妙に記憶が残りすぎている。今でも二人が話していたことは頭に焼き付いていた。まるで現実のように。

「ふうっ」

 もう一度体を寝かせた。

 現実でも夢でもない世界。もしかしたら、この夢がそうなのだろうか。一体どこまでが夢で、どこまでが現実と言えるのだろう。疑問は次々とわいてきて、僕を悩ませていた。

 ふとカレンダーに視線を送る。カレンダーもいつもの姿を見せていた。

「ん?」

 なんだこりゃ? 今日の日付に“D”の文字なんて付けたっけ? 見間違い? 多分違う。じゃあなんだ……。

 ……ま、いいか。



「ん……っん」

 突然の厄介な音によって、僕の安からな時間は終焉を迎える。伸ばした手には、冷たく堅い感触。それを顔の前まで持ってくる。

「ん……んっ!?」

 時間はもう10時半を少し過ぎていた。かなり急がなければ結恵との約束の時間に間に合わなくなる。

「やっば!!」

 一気に身体を起き上げた。多少のめまいがある以外はすこぶる良好。やはり病気の影響が少しずつ出ている、と見るべきだろう。……ってそんな冷静に分析している時間も無い。

「携帯だろ、財布だろ、あとは……あ〜もう!!」

 よし陽介、一旦落ち着こう。まずは携帯と財布は入った。それから……そうそう、こいつを忘れたらいけないんだったよな。カードを財布に入れて、あとは着替えて身だしなみを整えれば準備は完璧。

 やっぱり落ち着いた方が物事の進行が早い。“急がば回れ”と昔の人はよく言ったもんだ……ってだからそんなことに感心している時間はない。

「じゃ、行ってくる!」

 誰もいない部屋に、僕の声だけが響いた。

 ドタバタと音をたてて階段を降りる。その音は家中を駆け回り、何度も僕の耳に届いていた。玄関に行く前に洗面所に寄り道をして身だしなみを整える。やっと外出できる体勢、しかも時間はかなりギリギリだった。

「行ってきます」

 毎日欠かさない言葉は、今日の空のように澄んでいた。




『彼女の希望』


 雲ひとつない空はいつも以上に高く見える。いつだったか、テレビで“冬の空が高く見えるのは空気が冷たく澄んでいるから”と芸能人が豆知識を披露してたっけ。

 確かにそうかもしれない。こんなに寒いと、人間が好き勝手に汚した空気も澄んでいるように感じる。

「あっ、陽介君!」

 いつもの高さに世界を戻すと見えるのは公園の前にいる結恵の姿。

「おはよ。待った?」

「ううん、今来たところ」

 そんなわけはない。結恵はいつも、計ったように時間通りに来る。遅れて来た僕に気を使った、彼女なりの配慮なんだ。

「じゃ、行こうか」

「うん!」

 ありきたりなカップルの会話に聞こえるのはほぼ間違いない。いつまでたっても、僕たちはきっとこうなんだろう。

「で、行きたいとこある?」

 今日のプランは昨日のうちに作ってはあった。でもここは彼女の希望もしっかり聞くべきだろう。

「ちょっと遠いけど、それでもいい?」

「ん〜、どのくらいかかる?」

「電車で40分くらい、かな」

 うん、それなら許容範囲内だ。

「うし、行くか!」

「うん! ありがとう」

 結恵の行きたい場所。一体どんな場所なのだろう。

「早く行こっ!」

 彼女は僕の手を取って、先を急がせた。僕と同じように、繋がった手から微かな温もりを感じながら。



「なぁ、教えてくれてもいいだろ?」

「だめ。着くまで秘密」

 小さく揺れる電車の中で、何度このやり取りを繰り返しただろう。一向に結恵は目的地を教えてくれない。

「んじゃあ、どんなとこ?」

「それも秘密です」

 柔らかい日差の中で電車はどんどん街から離れ、やがて潮騒が耳に入る。窓の外には連なる山と広大な海に挟まれた、どこか懐かしさを覚える小さな集落があった。

「ここは?」

「いいところでしょ? 次で降りるからね」

 電車はゆっくり速度を落とし、そして止まった。その駅で降りたのは、僕たちと腰の曲がったお婆さんだけ。

「誰もいないんだ……」

「うん。無人駅なの」

 それだけ言うと、駅の出口らしきものに彼女は向かう。

 聞こえるのは波の音とウミネコの声。ひどく静かで、時間がゆっくり流れていた。

「なんか、懐かしい……」

「陽介君、こっち!」

 少し遠くで手を振る彼女は、どこか楽しそうで輝いて見える。ほんの少し足早に、彼女の元に向かった。

「いいところだね」

「うん、ここは大好きなの」

 やっぱりいつもと雰囲気が違った。生き生きしている、という表現がしっくりくる。僕たちは車一台通らない道を、山の方面に向かって歩いていた。

「ここね、私が生まれた村なの」

「へぇ、ここが……」

 きっといじめさえなければ、結恵は今のように笑ってこの村で過ごしたに違いない。きっと、幸せに……。

 ふと結恵は向きを変える。僕も置いていかれないよう、小走りで後を追った。目の前には大きな茅葺かやぶき屋根の家があった。




『寄り道』


「すごいな」

「ちょっと寄っていい?」

「あぁ、いいよ」

 どうやらここが目的地ではないらしい。。

「こんにちは!」

「はーいー!」

 田舎らしいイントネーションで家の奥から返事が返ってくる。声からしてお年を召した人のようだ。

「はいはい、あらぁ」

「おばあちゃん覚えてる? 結恵です」

 奥から出てきた女性は本当に細く、今にも折れてしまいそうなほどだった。顔に刻まれたしわが、彼女自身の歴史のようにも思える。その中で目だけが異様に大きく輝いていた。

「あらまぁ、大きくなってぇ。ずいぶん綺麗になったねぇ」

「ありがとう、おばあちゃん」

「それに、こんなに立派なお婿さん連れてくるなんてねぇ」

 おばあさんは少しいたずらに言う。

「おばあちゃん!!」

「こんにちは。佐野陽介と言います」

「あらあら、ご丁寧にどうもありがとうございます」

 頭が床に付くほど、深く丁寧におばあさんはお辞儀をした。

「いい人みたいねぇ。大切にしてあげて下さい」

「はい」

「うん、わかってる」

 僕たちはお互いを見る。こういうことには常に顔を赤くしていた結恵が、妙に落ち着いていた。彼女は僕にしかわからないように、微かに笑みをこぼす。

「いいねぇ、若い人たちは。今日はゆっくりしていくんかい?」

「ごめんなさい。もうそろそろ行こうと思ってるの」

 思わず結恵の顔を見る。聞いてないぞ、そんな話は。

「そうかい。また来ておくれ、いつでも好きなときに来て、ゆっくりしていきなさい」

「うん、ありがとう。またね」

「それじゃあ、失礼します」

「あのおばあちゃんね、私が小さい時からずっとお世話になってたの」

「そうだったんだ」

 遠くの方に暗い雲が見える。夕方頃に一雨振るのかもしれない。

「おばあちゃんの話を聞くのがすごく好きでね、ほとんど毎日おばあちゃんの家に行ってたの」

 一人で? と聞こうとして、やめた。きっと聞かなくても彼女が自分から話すだろう。そして予想は見事に当たった。

「たまに友達も連れて行ったけど、ほとんど一人でね、だから……」

 年寄りの話を聞きたがる子は、今ではほとんどいないだろう。

「だから、クラスのみんなにバカにされて……、おばあちゃんだけが友達だって……」

 本当にささいなことなんだろうけど、子供の目には異様な光景に映ったのかもしれない。それが、明るい女の子を転校してきたばかりの彼女のようにしてしまった。

「でもね、陽介君のおかげで今日やっと戻ってこれたの」

 危うく言葉が出そうになった。僕の、おかげ?

「陽介君が近くにいてくれたから、おばあちゃんにまた会えたんだよ。ずっと、怖くて」

 今でも心に“しこり”が残るほどの過去。恐怖で行きたくても行けない。結恵を縛っていたものは彼女にとって、とてつもなく大きなものだったに違いない。

「また会えて、よかったな」

「うん」

 今は多分、僕と一緒じゃないとできないことなのだろう。でもいつの日か、彼女が一人でもここに戻れるようになってほしい。いや、残された短い時間でそうなるようにしてあげたい。そうなければ、彼女がここに二度と戻れなくなるかもしれないのだから。



『秘密の場所へ』


 それから僕たちは、この小さな田舎を結恵の案内でゆっくり歩いて回った。割と都会に近い場所で育った僕にとって、見るもののほとんどが新鮮で、それでいて懐かしさを覚えた。それほど広くはない村は、二時間ほどでぐるっと見てまわることができた。

「最後に行きたいところがあるの」

 唐突に言われた一言。了承すると、結恵は山の方に再び足を向けた。

「どこ行くの?」

「秘密の場所だよ!」

 はしゃぐ彼女はまるで子供のように見える。あんな笑顔、あと何回見れるかな……。

 彼女に先導されて着いた場所は、山の上の方に続く木々に囲まれた長い階段。それはどこかで見たような情景だった。

「陽介君、こっち!」

 階段の上で彼女は僕を呼ぶ。ゆっくりと、一歩を踏みしめながら登った。景色は同じ速度で後ろに流れて、それはふいに止まった。

「ここは……」

 初めて来たはずなのに、そこはどこか安心感のある不思議な場所だった。

「きれいでしょ?」

「……うん」

 青い海が、ずっと遠くまで広がっていた。水平線は少しぼやけて、僕を中心に円を描いているのが微かにわかる。やっぱり丸いんだ、僕たちが住んでいるこの星。

「陽介君にあの場所に連れてってもらった時、いつか私もここに陽介君を連れてこようって思ったんだよ。なんとなく似てるよね」

そうか、だからだ。ずっと感じていた安心感。それは、ここがあの場所に似ているから。

「うん、似てる……。いいところだね」

 あの場所に似ているからじゃない。ここにしかない雰囲気が、安心できるなにかがここにはある。包まれるような優しい空気。それはきっとここだから感じるものなんだろう。

「しばらくここにいようか」

「……ううん、帰ろう」

 答えは意外なものだった。結恵の表情が、さっきは違う見慣れたものになる。

「あんまり長くはいたくないの……」

 その一言で十分だった。僕を連れてきたかった、でもここは彼女にとって思い出したくないものがある。読み取ることはそれほど難しくはなかった。

「そっか……。帰ろう」

 僕が聞かなくても、彼女が話したい時に話せばいい。まだ時間はあるんだ。ゆっくり、ゆっくり聞いて、彼女が楽になればそれでいいんだ。

「……うん」

 いつか、その時が来ることを願う。ここで笑っていられるように……。



『夢と現実と運命』


 海に沈もうとしている日の光は、セピア色のフィルターを視界にかけた。

 一定のリズムでそれを感じる。僕の横から聞こえる、静かな吐息。揺れる電車の中には僕たち以外に人はいない。彼女は今頃穏やかな表情で、夢の中にいることだろう。


 ――夢……か。

 あの時に父さんと母さんが言ってたこと。……過去に戻ったすべてが夢だった。本当に夢だったのだろうか?


 “夢とは少し違うものなの。現実であって、夢でもある……。”


 夢じゃない? でも現実でもない? ならなんだっていうんだ、まるで意味がわからない。


 “あなたはあの日に起こるかもしれなかった過去を体験したのよ”


 多分その言葉にうそはないような気がする。起こるかもしれなかった過去、でもそれは実際には起こらなかったもの。


 そうか、だから“夢でもある”と二人は言ったんだ。

 じゃあどこから区別をつけるべきなのか。今だって……、この瞬間だって僕は体験している。聞いて、話して、感じて、考えて、思って、生きている。僕にとっては現実であることには変わりない。それは過去に戻った時にも言えることではないのだろうか。それに本当の夢ならすぐに“あれは夢だった”とわかるはず。現実と区別もできないほどの夢なんてあるのだろうか。

 わからない。でもそれでいいのかもしれない。無理に突き詰める必要もないだろう。それで僕が変わるわけじゃない。それでみんなの優しさとか、想いとか、そういったものが変わるわけでもない。でも……確かめなきゃいけないこともある。あの二人の想いが本当なら、きっと苦しかったに違いない。一年もの間、悩んでいたはずなんだ。聞いてみよう、二人に真実を。

「んんっ……」

 肩に圧力を感じる。それは彼女の命の重み。あと何ヶ月、いやあと何日支えることができるだろうか。僕が僕らしく、僕として生きていける時間。それが短いなら、やらねばならないことは本当に多い。

 そういえば父さんと母さん、病気のこと知ってたんだっけ。


 “お前はあの日……死ぬ……”


 一体どういう意味なんだろう。父さんの言った言葉はまだ耳に残っている。


 “私たちは事実を直接言うことはできないの。だから……あなたの部屋に……”


 僕の部屋? 別にいつもと変わったところなんて……あったけどさ。まさか、まさかね。


 “運命が変わる……”


 運命が……変わる? 僕に定められた運命なんて……。


 “この病気はやっかいでね。長くても、君を助けてくれた友人たちと共に卒業することはできないだろう”



 そうか。そういうことだったんだ。それならすべての説明ができる。それが、僕の未来。それが、あと少ししか生きられない僕に定められた運命。

「そう、なんだ」

 でも思った以上に冷静だった。何度もそうしてきたからか、あるいは自分に見切りをつけたからか。いずれにしても、

「時間、足りないよなぁ」

 ふと出た言葉は、誰かに伝えるためのものじゃない。

「んっ……」

 ふいに肩が軽くなる。どうやらお目覚めのようだ。

「おはよう。よく眠れた?」

「うん……おはよう」

 まだ意識がしっかりしていないのだろう。結恵は目をこすりながらきょろきょろと落ち着かない。

「あれぇ、もうここまで来たの?」

「ずっとここで寝てたからね。疲れてたんだろ?」

 低い場所で光る日に照らされているせいか、彼女の顔は赤く見える。

「どうした?」

「え、えっ!? ううん、なんでもない」

 彼女はもうすでにいつもの結恵に戻っていた。僕の知る、見慣れた姿に。

「寄り道してから帰ろうか?」

「うん、そうしよっ。プレゼント買いに行かないと」

 できるだけ長く、できるだけ一緒にいたい。残された時間は、もう長くないから。



『ふたつでひとつ』


「……で、結局ここか」

 僕たちが住んでいるところは、決して都会ではない。だから必然的に行く場所は限られてくる。

「だって、ここしかないよ」

 僕たちが来たのは、あのショッピングモール。若い人達が好むものを売っているのは、僕たちの町周辺ではここしかない。

「まぁ、仕方ないか」

 と言いつつもここまでは計算済み。ここからが正念場になる。

 そして僕たちはショッピングモールの中へと入っていった。


「ごめんね、今日は無理言っちゃって」

 まったくだ。おかげで前日に立てた僕の計画は総崩れ。

「気にしない気にしない。たまにはこういうのもいいだろ?」

「うん、ありがとう」

 でもおかげで計画以上の収穫があった。彼女の知らなかった部分。それがわかっただけでも今日は十分だと言っていいだろう。

「で、どこに行きたいの?」

「小さいけど、小物とかがあるお店があるからそこがいいな」

 過去に何度も行った店に間違いないだろう。

「じゃあ後で合流しようか。行きたい店があるけど逆方向だから」

「うん、終わったらメールするね」

 うまくいった。ここで彼女と一緒に行ったら元も子もない。

「じゃ、また後で」

 僕は結恵とは逆方向を向いて歩く。後ろから結恵が来ていないことを確認しながら、僕は目的の店へと足を急がせた。もちろん、彼女へのプレゼントを買うために。


 目的の店はすぐに着いた。8畳ほどの場所に所狭しと並ぶ光る銀色。

「いらっしゃいませー!」

 そこはシルバーアクセサリーの専門店。小さいながら品揃えがよく、男女問わず若者に人気のある店だった。

「驚くだろうなぁ」

 結恵の驚く顔が簡単に想像できた。

 いつの日だっただろうか。千春がつけていたそれを、彼女が遠い目で見ていたことがあった。千春からこの店を聞き出してからは何度かこの店にも足を運んで、彼女に似合うものを探した。でもまぁ結局、簡単には見つからなかったのだけど。

 しかしピアスにネックレス、イヤリングにブレスレット。いろいろあるものだ。

「プレゼントをお探しですか?」

 あまりに突然話しかけられて声を出すところだった。振り向くと店員と思われるきれいな女性の姿。

「え、えぇ」

「そうですか。彼女さんにですか?」

 ずいぶんとするどい……ってクリスマスイブに男一人でこんな場所にいればそう思われてもおかしくない。

「まぁ、そんなところです」

「どんなものをお探しですか?」

 その答えは既に決まっている。

「リングはありますか?」

「ございますよ。……こちらですね」

 ここにも所狭しと銀の指輪が並んでいた。サイズもデザインも、本当に多種多様。ここだけでも100以上はある気がする。

「うーん……」

 この中からひとつを選ぶことはかなり難儀なことに思える。せっかくなのだから、てきとうには選びたくない。でも見れば見るほど迷うばかりだった。

「失礼ですが、予算の方は?」

「とりあえず、どれでも大丈夫なくらいはあるんですけど……」

 予算は心配ない。もう使うことだってそんなにないのだから、多少使ったって罰はあたらないだろう。

「ペアでお求めになりますか?」

「そうですね。そうしたいです」

 そう、そうなれば言うことは何もない。女性は僕の言葉を聞くと、嬉しそうにひとつのリングを手に取った。

「……では、こちらはいかがですか?」

 差し出された女性の手の上。そこには少し幅が広い、一見男性用にも見えるリングがあった。真ん中に一本の黒い線が入っていて、途中でもう一本と垂直に交わっている。十字架のデザインだとわかるまでに少し時間がかかった。

「これ……ですか」

「はい、こちらがお客様にぴったりだと思います」

 僕にぴったり合わせる必要はないのでは? そんな疑問をよそに女性店員は話を続けた。

「こちらは“ふたつでひとつ”なんです」

「ふたつでひとつ……?」

「詳しくは話せませんので、騙されたと思って下さい」

 それで騙された方は堪ったもんじゃない。というか、客に向かって“騙されたと思え”という店員も店員である。

「いや、でも……」

「これは私が提供できる最高の商品です。もしご満足いただけなければ、返品していただいても構いません。もちろん代金はお返しします」

 そこまでこだわる理由が僕にはわからなかった。商品に対する自信か、あるいは他の理由があるのか。

「値段、結構しますね」

「そうですね。……このお値段でいかがでしょうか」

 女性が持つ電卓には、元の値段からは想像できないほどの値段が表示されていた。

「こ、これだけですか?」

「はい。これは私のわがままですので」

 確かにそうだが、こんなことをしてこの店は大丈夫なのかと心配してしまう。

「でも、これでは申し訳ないです」

「大丈夫です。ここは私が店長ですので上からなにか言われることもありませんし、それほどヤワな店ではないですよ」

 なんかとんでもない話になってきたような気がしたが、そこまで言うなら騙されるのも悪くないかもしれない。

「じゃあコレ、お願いします」

「かしこまりました。それと、これはサービスです」

 2本の銀色のチェーンがリングと一緒に包みの中に消えていく。僕が言葉を発しようとする一瞬前に、女性は柔らかく微笑んだ。

「いいんですか?」

「ええ、いずれ必要になると思いますので」

 その言葉の意図は理解できなかった。どうもこの女性店員――いや店長には敵う気がしない。でも、ペアと言ったのになぜひとつだけなんだ? 

「お買い上げ、ありがとうございました」

 まぁ、騙されてみるとしますか。




『恐れ』


 さっき買ったばかりのプレゼントを、僕はポケットに入れた。さて、準備はできた。あとはいつ渡すか、それが問題だった。できれば最高のシチュエーションで渡したい。そう思ってしまうのは男に生まれた性なのかもしれない。できるだけ自分をカッコ良く見せたい。結恵の驚く顔が見たい。そんな願望は、好きな子の前では多分男の方が強いのだろう。

「さぁて、どうしようかねぇ」

 とりあえず正面出口に向かって結恵を待とう、そう思って歩いている時だった。

「!?」

 胸のずっと奥の方で、それは静かに動き出していた。そして次第に、何度も感じたあの違和感となる。

「ばっ、……早すぎる」

 いつの間にか歩みも止まる。不安、恐怖。あの時の感覚が近づいている。そう思うだけで吐気がした。

「頼む、まだ来るな。もう少しだけ……」

 決して誰にも届かない小さな叫び。理解してくれる人なんて、まずいない。うずくまる僕を横目で見ながらも、人々は通り過ぎていく。

 あと少しだけでいいんだ、まだ来るな。ほんの少しだけ。あとほんの少しだけ、時間があればそれでいい。

「陽介君!!」

 まさに最悪。ここであの痛みが来ればすべてが台無しになる。


 ――頼む、今だけは来ないでくれ……


「大丈夫!?」

「……あぁ、ごめん。躓いただけだから」

 ぺたんと座った結恵の顔には、安堵と一緒に頬を伝う恐怖が見えた。

「ばっ、ばか! 泣くなよ」

「だって、この前みたいになっちゃうんじゃないかって……」

「大丈夫だって」

 そんなわけはない。実際、今でもあの違和感が胸の中で暴れそうになっていた。でもそれ以上に、彼女の涙は僕の心をえぐっていた。

「大丈夫、大丈夫だから。なっ?」

「……うん」

 彼女も感じたのだろう。僕がいなくなる恐怖、不安、悲しみを。

「泣かせてるみたいに見えるな」

「……いけないんだ、女の子のこと泣かせちゃって」

 彼女に笑顔が戻る。

「そりゃないよ」

「だって本当のことだもん」

 この様子ならもう大丈夫だろう。そう思わせるほどに、彼女の表情は穏やかだった。



『帰路』


 暗い夜の空に、厚い雲が横たわる。

「早く帰ろっ」

「よしっ」

 寒さはさらにその厳しさを増して、吐く息も白くなってきた。今さらながらマフラーでも持って来ればよかったと後悔していた。

「寒くない?」

「うん、大丈夫だけどちょっと寒いかな……」

 大丈夫なわけない。さっきから剥き出しの手が震えている。表情もどこか無理をしているように見えた。

「これで少しは温かくなるでしょ」

 そっと結恵の手を握る。ほとんどない温もりが、繋いだ手から伝わってきた。

「うん、ありがとう。温かくなってきた」

 普段の笑顔が結恵に戻る。

 いつもそうだ。結恵は多少自分が苦しくてもそう言わない。大丈夫と笑顔でごまかそうとする。どうして僕に苦しいと言わないのだろうか。僕が信じられないから? 僕が頼りないから?

 でもそれは僕自身にも言えること。結恵が壊れてしまわないか不安で本当のことを伝えられない僕。結局、他人のことを僕がとやかく言う資格なんてないんだ。

 いや待て。僕が死んだら本当に彼女は壊れてしまうのだろうか。信頼しきっていない人間が死んだとしても、彼女はきっと来るべき未来を歩むだろう。じゃあ僕が死んだところでなにも変わらない……?

 ある種の疑惑がうかぶと、それは際限なく広がっていった。

「陽介君、先に行ってるね!」

 いつの間にか繋いでいた手も離れていた。そんなことすら僕は気がつかなかったのか……。

「結恵!?」

 彼女は走り去った。結局こうなるんだ。いつかこうして、ひとりで死んでいく。

 一人。それはもう嫌というほど経験している。慣れたはずなんだ。そのはずなのに、胸を締め付けるなにかがある。

「おっ、雪……か」

 白い結晶があたりを舞う。気付けば僕の家にかなり近いところまで来ていた。もう家が見える距離だ。

「……ん?」




『その想い』


「千春? ……あいつ、なにしてんだ?」

 僕の家の前で立っている人の姿は千春のものにほぼ間違いない。もう夜になる時間に、しかもわざわざ僕の家の前まで来ている。

「千春!」

「あっ、陽介……」

 いつもと違う千春の姿に、僕は少し困惑した。

「髪おろしてみたんだ。似合わないかな……」

「……いや、悪くないと思う」

 千春とは長い付き合いになるけれど、ポニーテールでない千春を見るのは初めてだった。

「あれ、結恵は?」

「どっかに行ったよ。ついさっき」

「そうなんだ……」

 千春にいつもの元気がない。その理由は心当たりも見当もつかない。

「で、どうした?」

「うん、ちゃんと陽介には言おうと思って」

「言うって……なにを?」

 まさか……いや、そんなはずはないだろう。今さら言ったって、その想いは叶うはずがないのだから。

「あのね、実は……」

「う、うん」

 反射的に身構えてしまう。千春は噛みしめるようにその続きを話した。



「あたしね、裕也と付き合うことになった」



「はっ、はい?」

 そうかそうか、千春と裕也が……って聞いてないぞ、そんな話。

「おいおい、なにがどうなればそうなるんだ?」

 我ながら実にわかりにくい質問だ。

「私たちね、本当は違う人が好きだったの。でもその人たちは付き合うようになって、お互いにいろんな相談してたら、……そうなった」

 僕たちのことだ。やっぱりそうだったんだ。

「その人たちっていうのは……」

「わかってる」

 それ以上は言わなくたってわかる。ずっと二人は苦しい思いをしてきたってことくらい僕にだって。

「……ごめん」

「謝んなくたっていいよ」

 それは今までに見たこともない、優しい顔だった。

「仕方ないよ。友達でいること、やめたくなかったし。これで良かったんだよ」

 本当に良かったのだろうか。自分の想いを押し留めていることが、本当に良かったと言えるのだろうか。何か別の道はなかったのだろうか。

「おかげで裕也の大切さがわかったの。私のこと本気で心配してくれて、大切にしてくれて……。だから全然後悔してないんだから」

 やっとこの時わかった。結恵だけじゃなくて、千春も同じなんだ。

「うそつけ」

「うん、そうだね……やっぱり後悔してる。心のどこかで、陽介と付き合えたら、って」

 どうして人は、自分の心を素直に言えないのだろう。他人を信用できないからか、あるいは傷つけるのが怖いからか。どちらにしても、うまくはいかないものなんだろう。

「千春……あのな、」

 すっ、と千春の細い指が伸びる。

「だめっ、そこからは言わなくていいの」

「でも……」

「あたしには裕也がいるんだから。大丈夫、ちゃんとやっていけるから」

 うっすらと雪は僕たちに積もる。

「だから、あんたは結恵のことだけ考えてればいいの」

 きれいだった。僕のことを真剣に想ってくれているからこその言葉が、千春をそう見せているのかもしれない。でも今の千春は誰から見てもきれいなのだと、そう思った。

「ありがとう」

「それだけ。わかったらさっさと結恵のこと迎えに行って」

「もう帰ったんじゃないか?」

「バーカ! 待ってるに決まってるでしょ?」

 どうして千春はそんなことまでわかるのか不思議だった。

「わかったよ。行ってくる」

「それでよし! ……あーっ、ちょっと待って!」

 持っていた紙袋に千春は手を入れた。

「これ、クリスマスプレゼント」

 それは不恰好な手編みのマフラー。

「お〜、頑張った感が出てるじゃん」

「失礼するなぁー、力作だと思うんだけど」

 閑静な住宅街に僕たちの笑い声が響いた。

「じゃ、行くわ」

「うん」




『もうひとつの想い』


「ったく、どこ行ったんだか」

 いくら探しても結恵らしき姿は見えない。家にも行ったけど、結恵はいなかった。ということは千春の言うとおり、おそらくどこかで僕を待っているのだろう。しかしどこにいるのか皆目見当もつかない。

 彼女の行きそうな場所はもうほとんど行った気がする。近所はまわったし、公園にも行った。家にもいない。携帯も反応なし。

「もしかして……」

 ふと立ち止まる。

「まさかね……まあ、行ってみるか」

 偶然目についた場所。確信はないけれど、なんとなく結恵はここにいるような気がした。



「いた! ここだったか」

「うん」

 結恵は木の下に座って、どこか遠くを見ていた。

「どうかした?」

「ううん、大丈夫。なんでもないの」

 果てしない場所を眺める彼女の瞳は、どこか悲しそうに見えた。

「さて、帰るか。もうだいぶ寒くなってきたし」

「お願い……もう少しだけここにいさせて」

「えっ、ああ。別にいいけど」

 寒さに震えながらもここにいる理由、それはきっとここが結恵の大切な場所と似ているからだろう。白く雪化粧していく町が、ここからはよく見えた。

「結恵……」

「ずっと、陽介君に言おうと思ってたことがあるの」

 なにかを決心したような、そんな口調だった。

「ん? どんな?」

「ずっと怖くて、言えなかったこと。言ったら嫌われたりしないかとか、変な目で見られないかとか、そんなことばっかり考えてた」

「そんなこと……」

「わかってるの、そんなことないって陽介君は言ってくれるって。でも不安で、信じられなくて……そんな自分がすっごく嫌で、大っ嫌いだった」

 それは僕も同じだ。彼女に言ってないことは山ほどあるし、結恵を信頼しきれない自分は好きではなかった。

「今日は言おうってずっと決めてたの。でも言い出せなくって、だから、だから……」

「……」

 言葉に詰まる結恵にかける言葉が見つからない。

「あのね、千春ちゃんのことなんだけど……」

 千春って……まさか、結恵は知っていた?

「もしかして、さっき千春ちゃんから聞いた? 陽介君のこと……」

「ああ、聞いた。今でも信じられないよ」

「……ごめんなさい。ずっと前からわかってたの。ずっと陽介君に相談しようって思ってたんだけど、でも千春ちゃんがかわいそうで言えなくて、でもそのままも千春ちゃんはつらいし、もし話したら陽介君はどこかに行っちゃいそうで……、どうしたらいいかわからなくって……」

 優しさと僕への想い。人一倍強いそれが、逆に彼女を悩ませ続けてきた。

「ありがとう。もっと早く気付くべきだったんだ。そうすれば結恵は悩まないで済んだのに……」

「優しいね、陽介君」

 違う。優しいのは僕じゃなくて結恵の方だ。だから悩んだ。だから苦しんできた。僕はそれに気付かずに、ただ三人を苦しませてきたんだ。

「優しくなんてないよ」

 どうして僕のまわりの人間はみんなこうなのだろう。僕は優しくない。僕がもっとしっかりしていればよかっただけの話なのだ。

「優しいよ」

 違う。僕はずるくて、臆病なだけ。優しいのは、僕のまわりのみんなの方だ。

 彼女は強かった。僕が出しきれない勇気を出して、結恵は話してくれた。なのに事実、僕は今でも運命を告げるか迷っている。

「あっ、そうだ! はいっ!」

 小さな箱はきれいにラッピングされて、黄色のリボンで結んである。やたら小さいそれは、手のひらに乗るちょうどいい大きさ。

「クリスマスプレゼント。今、開けて」

 言われるがままに箱を開けた。

「こっ、これって……! どうしてこれを?」

「裕也君がね、ここでそれを渡せって教えてくれたの。陽介君が一番驚くからって」

 小さな箱の中には、もっと小さな種があった。いつかここで植えた、あの種と同じものが今ここにある。

「驚いたよ……、ありがとう」

「せっかくだし、植えていこう!」

 僕たちはいつかと同じようにそれを地中に埋めた。いつか、その生命が芽吹くことを願って。

「帰ろうか」

「うん」




『最後の刻』


「帰らないの?」

「今日は、陽介君とずっと一緒にいたいの」

 確かに僕はそれを了承した。でもまさか本当に今日が終わるまで、僕と一緒にいるつもりなのだろうか。

「ダメ?」

 こうなるとダメとは言えなくなる。

「好きにしていいよ」

 きっと後でダメだと言っておけばよかったと、後悔するのもわかってる。それでも、彼女にきつくあたることを心のどこかが拒否していた。

 リビングにある大きな柱時計が、一定のリズムで時を刻む。かなり古いものだけど、時間をほぼ正確に教えてくれる。そのカチカチという音だけが、妖しくリビングに響いていた。

「ごめんね」

 彼女はそれしか言わない。

「いいって。どうせ誰もいないから」

 それよりももっと重要な問題がある。結恵は勇気を振り絞って言ってくれた。僕もそうすべきか、そうじゃないのか。

「あのさ……」

「なに?」

 会話が止まる。もう時間がない。

「その……あれだ」

 今……今言わなければ、ずっと僕は……。



「ごめん……、さよならだ」



「……えっ!?」

 あまりに不自然なタイミングだった。でも、今でなければ同じことの繰り返しになる。

「今日で、結恵とはお別れしなきゃいけない」

「えっ、えっ!? なんで! どうして!?」

「……」

 決めなければいけない。僕の答えを。

「それは……」







  ――もう、死ぬから






 それ以上でも、それ以下でもない。僕が結恵に別れを告げなければいけない時なんて、こんな時以外は絶対にありえないんだ。

「……えっ!?」

「全部話す。だから、聞いてほしいんだ」

 今まであったことも、あの夢も、話さなければいけない。そして彼女と別れなれば、一番深い傷を彼女に残すことになる。

 そして言わなければいけない。今日が僕の最後の日だということを。

「……今まで黙っててごめん。病気で、長くても春までもたないらしいんだ。父さんたちの言葉が本当だとすると今日が、その日になる」

 このぐちゃぐちゃな感情は、なんて言い表せばいいんだろう。とにかく心が痛かった。

「本当……なの?」

 彼女を直視できない。下を見たまま僕は縦に首を振る。

「そう、なんだ」

 言葉が変に区切れていた。やっぱり泣いているのだろうか。

「……」

 返事がない。やっぱり……。

「バカ」

「えっ!?」

「バカバカバカバカバカバカバカ! 陽介君のバカ!!」

 結恵……?

「どうしてっ、そんな大事なこと隠してたの!? どうして! どうしてもっと信じてくれないの!?」

「……ごめん」

「私、もっと……陽介……んにはっ、ひくっ、信じてくれてるって……」

 結局同じだったんだ。僕の前でただ泣きわめくこの少女も、伝えられずにいた僕も、ただ信じてほしかっただけだったんだ。

 そしてこの涙は、僕に与えられた運命に対してじゃない。彼女を最後まで信じることができなかった僕自身にむけられたものだった。結局、僕の想像以上に彼女は強かった。

「ごめん」

 そして、僕はその強さを信じることができなかった。ただ彼女を信じてあげれば、それだけでよかったのに。

 どうして自分が求めていたものを、相手にしてやれなかったのか。この小さな女の子に、僕はできたはずなのに。それに気付いていたはずなのに。

「ごめん、……ごめんな」

 情けない。こうして謝ることしか僕にはできない。なんで……どうしてもっと気の利いた言葉が出てこないんだ! どうしてなにも言えない!

「でも……きっと私のこと心配してくれたんだよね」

 さっきまでとは違う、やわらかな声。

「やっぱり陽介君は優しいよ」

 彼女のそばにいてやりたい。もっと一緒にいたい。もっと話して、もっとわかり合って、もっともっと! ……今が続いてほしい。

「結恵……、くっ!!」

 来るな。まだだ……頼むからもう少しだけ……。

「陽介君!」

 胸を締め付ける強烈な痛みは耐えられるようなものではない。思わず胸を押さえつけて床に伏せる。

「ちっ、……があっ!!」

 どうして今なんだ! どうして待ってくれないんだ! まだなにもしてやれていないのに!

「誰よりも……、大好き……だから、」

 まだ話すことはできるらしい。でも、それほど長くは続かないだろう。

「私もっ、大好きだから! 絶対好きだから! だからまだ逝かないで! 私を置いてかないで!!」

 できることなら、そうしたいけどね。

「!!」

 忘れていた。

「……ゆ、えっ……」

 かろうじて掴んだ心残りが、どうにか見えるところまで来てくれた。

「プレ……ゼント……」

 小さな包みから銀のリングはゆっくりと落下して、縦にふたつに割れた。


「――……」

 

 結恵、なにを言ってる? 聞こえない。なにも、音がない。



 ――そうか。これが、死ぬということ。なにも、感じない。なにも、わからない。




 どうして、こうなるんだろう、父さん、母さん。




 どうして、今日、僕は、死ななければならない? なぜ、今、死ななければ、ならない?




 どうして僕を、過去に戻した? なんでかこを、たいけんしなければ、いけナカッ、……タ?



 ドウ、シ、テ……?





 低く鳴り響く柱時計が、白く染まったクリスマスイブの終わりを告げた。

いよいよ次回で物語りも最終話を迎えることとなりました。この長い物語がいよいよ終わるかと思うと感無量です。ぜひ最後までお付き合い下さい!!

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