最終章‐序曲 夢
最終章は3部にわけて投稿致します。序曲は3部のうちの一つ目です。いつもより短めですが、ごゆっくりお楽しみ下さい。
「陽介……」
ダレ? ボクヲヨンデルノハ……?
「陽介……」
オンナノヒト?
「陽介」
オトコノヒトモイル……。
「陽介、気付いて」
「ちゃんと聞くんだ」
……ヨンデイル
ボクヲ?
だれが?
「聞いて、私たちの声を聞くの」
きいてるよ。ちゃんときいてる。
「もう少し時間がかかるな」
大丈夫。ちゃんと聞こえてる。
「もう大丈夫みたいね」
うん、大丈夫。
「これなら話をしても大丈夫だな」
話? 話ってなに?
父さん、母さん。
「わかってたの?」
うん、なんとなくね。
「じゃあ話は早いな。まずお前に謝らせてくれ、本当にすまなかった」
ちょっ、ちょっと待って。どうして謝るの?
「あなたを残したまま私たちは死んでしまったでしょ?」
なんだ、そんなことか。それならもう大丈夫だよ。
「本当に?」
本当だよ。いろんな人たちに助けられたし、苦しいときには裕也も千春も、結恵もいるしね。
「そう……よかったわね」
「でも、謝らなければいけないことはそれだけじゃない」
まだあるの?
「お前が、一年前と今日を何度も経験したことだ」
あぁ。あれって……父さんたちのせいなの?
「そうだ。でもあれは擬似的な過去に過ぎない」
擬似的? どういうこと?
「お前は一度も過去に戻っていない。すべて陽介の頭の中で起こっていたことだ」
頭の中で? 現実じゃ、ない?
「そうね、夢に近いものだと思って」
夢……だった?
「夢とは少し違うものなの。現実であって、夢でもある……。あなたはあの日に起こるかもしれなかった過去を体験したのよ」
……よくわからないよ。
「だから現実でもあるの。そして、あなたが“あの世界”でみんなを救うことができれば、試練を乗り越えれば運命が変わる……」
運命……変わる?
「いえ……なんでもないの。ごめんなさいね、母さんたちのせいで、あなたにつらい思いをさせてしまって……」
……そうだったんだ。それも謝らなくていいよ。
「陽介……」
わかったんだよ、誰も悪くないって。仕方なかったんだ。
「そう……」
つらかったし、苦しかった。でもその分、いろんなことがわかったし、楽しかった。だから……
「そう……ありがとう」
「理由は聞かないのか?」
いいよ。理由を知ったところで何も変わらない。父さんと母さんの優しさはもうわかってるしね。
「優しさか……」
「ふふっ、大きくなったわね」
一年たてば変わるよ。
「そうかもな」
そうさ。僕だっていつまでも子供じゃないよ。
「陽介、最後にひとつだけ言わなきゃいけないことがあるの」
? なにを?
「母さんたち、知ってたの」
えっ?
「……あなたの、病気のこと」
そんなっ……!
「あなたに言えなかった……。いつかは言わなきゃいけないって思ってた。でもその前に私たちは死んでしまった」
そんな……知ってたなんて……
「陽介、時間がない。お前には伝えなければならないんだ」
伝える? 伝えるってなにを?
「私たちは事実を直接言うことはできないの。だから……あなたの部屋に……」
母さん?
「お前はその日……死ぬ……」
その日ってなんだよ! 死ぬって……父さん! 父さん!!
「見つけて……たちの……セージ……」
待って! まだ聞きたいことが……話したいことがあるんだ! 母さん!
「お願い……」
お願い! 父さん!
「よう……、……るんだ」
待ってよ!! まだ……聞き……ある……
最終章序曲、いかがでしたでしょうか。実は“結恵”という名前は将来の私の子供につけようと思っていた名前です。もちろん女の子が生まれた場合の話ですが(^^; ちなみに男の子の場合はまだ未定です(笑)
さて、いよいよ最終章に突入しました。最終章は3部にわけて投稿しようと考えております。ぜひ最後まで温かく見守って下さい。