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8話 王都を散策しよう (後編)

日に日に評価とPVがもの凄いんですが……。本気で自分の文章が理解に苦しみます。

 呼ばれたのが自分にしろ、その辺に居た誰かにしろ、声を掛けられれば振り向いてしまうのであって。

 ケーナが振り向いた先に居たのは、男女の二人組であった。


「今、私を呼びましたか?」

「うむ、呼んだとも。お嬢さん冒険者じゃろ?」


 ケーナの問い掛けに満足そうに頷いたのは、白い無精ひげを生やして、頭髪にも白いものが混じり始めた五十代くらいの全身鎧の騎士だった。

 騎士と言っても、着ている鎧は白よりも結構煤けていて年代物っぽい。腰より提げた剣は街中を巡回している騎士の物と違い、鞘も白くない普通の長剣だ。


 一緒に居るのは見た目がケーナくらいの娘だ。

 革鎧にローブとマントを装備し、先端に蒼い球の浮いている杖を持つ銀髪の女性。男性が呼び掛けた時分からケーナの方をぽーっと見ていて、目が合った瞬間にあわあわと両手を振って赤くなると、慌てて男性の背後に隠れた。 


 それを「はっはっはっ」と腕組みをして笑い飛ばし、男性はケーナに近付いてきた。


「ワシはアガイドと言う。ほれお主も隠れていないで自己紹介でもせんか!」


 後ろに隠れていた女性は、俯きながら男性の横に並び小さく頭を下げる。


「あ、あのぅ、ロンティ、です」

「……はあ、ケーナと言います?」


 何の趣旨で声を掛けられたのかさっぱり読めないケーナだったが、その場の、特にアガイドの雰囲気に流されるように、返事を返した。

 病院で快適に過ごす為の法則第一条、『相手が年配の場合、話の主導権を取られたら流されるしかない』である。


「お主、見たところ腕が立ちそうじゃのう? 少々手伝ってくれんか?」

「何を手伝うのかは判りませんが、それって依頼ってことですか? あいにくと今さっき冒険者になったばかりなので、都市を案内してくれと言われても困りますけれど……」

「安心せい、ワシらはこの王都の出身だからそんなことは頼みはせんよ。手伝ってほしいのは荒仕事じゃ」

「荒仕事? 魔物退治とか、盗賊退治とかー、ですか?」

「うむ、人探しじゃ」


 深刻な問題か? と思ったところへあっさりとした返答に肩透かしを食らい、軽くよろける。そんな態度のケーナに手を振ってアガイドは修正を入れた。


「人探しは人探しでも、相手は結構腕が立つでの。油断は禁物じゃ」

「はあ、犯罪者か凶悪犯ってことですか? それを捕縛しろと?」

「ふむ、まあそんな感じの認識でいいじゃろ。頼めんかの?」

「構いませんよ。報酬さえ払っていただければ」


 これがつい辺境の村に居た頃のケーナであれば、報酬の話など持ち出さなかっただろうが。

 エーリネ先生とアービタ軍曹のご教授を受けた今では、『貰える物は銅貨一枚でも増やして要求しろ』との教育が脳内リピートで流れていた。


「報酬なら任せておくとええ。無事に任務が成功すればお主が見たことも無いような金額を、ポンと払ってやるわい」

「よし、言質は取った。その依頼受けましょう!」


 互いにサムズアップを交わし、ガッチリと硬い握手を交わす老騎士とケーナ。

 ロンティはひとり置いてけぼりになっていた。



「……と、言いましても広いですよ、この街……」

「一応、標的は比較的にも王都のこちら側へ出没することが多いからの。手分けすればどうにかなるじゃろう」

「はあ、三方に分かれるんですか?」


 周囲を見渡して人の多さにうんざりするが、アガイドは自分も含めた三人を指差して告げる。


「いや、ワシは一人で探すからの。ロンティは標的の顔を知っているから、ケーナ殿と捜してもらおうかの?」

「け、ケーナさんと、わ、私がデスカァ?」

「ケーナ殿は探す相手の顔を知らんじゃろう? こやつのことは頼んだぞ」

「はい、いいですよ。依頼主の意向には従いましょう」


 片手をシュタッと上げて人込みに消えていくアガイドを見送ったケーナはロンティに向き直った。

 途端に「ひゃっ!」とか悲鳴を上げて、一歩離れる彼女に、自分はそんなに怖い顔をしていたのか、と心配になるケーナ。


「んー。エルフは、嫌い?」

「あ、ああああ、ゴ、ゴメンナサイっ。べ、別にケーナさんが怖いとかじゃないんでふ」


 言葉途中に噛んでしかめっ面をしたロンティにくすりと笑うと、病院の子供たちとの交流と似たような感じで、手を差し出した。意外なものでも見るように、差し出された手とケーナの顔を交互に見つめる。


「冒険者初日、ハイエルフ族のケーナです。どうぞよろしく」


 ポンと真っ赤な頬を上気させて、おずおずとその手に自分の手を重ねるロンティ。


「冒険者暦1年、ロンティ・アルバレストです。こ、こちらこそよろしくお願いします……」


 二人はしばし見つめ合って笑い合うと、早急に赤い顔のロンティが俯いた。

 ……が、何かに気付きハッと顔を上げた。


「って! ケーナさんハイエルフなんですかっ! エルフの王族が何でこんな所にぃ!?」

「あら、どこの世界にも例外は居るものよ? それよりも行きましょ。陽が暮れちゃうわ」


 午前中丸々観光に使っていたために、今日という日は残り半日しかない。

 夕方になったら人の数も増えるので、人探しには向いてない。何故か初々しい恋人のように手を繋いだ二人は、アガイドと逆の方向に歩みを進めた。







「ところで、どういった人物を探せばいいのかな?」

「あ、す、すみません。ええと、私より少し年下の赤毛の少年です」

「それはまた随分と曖昧な……」


 少し考えて大通りから一本隔てた裏通りへ。

 民家や商家の裏口側、入り組んだ細い道が続く辺りを歩く。子供の遊び場なら桂菜が生きていた街のように公園などが主流なのだが、そんな物の無さそうなこの都市では、こういった裏通りの方かと思ったからだ。


 しばらくロンティと共に子供の隠れられそうな所を探し、かなりの速度で裏通りを駆け抜ける。


「隅から隅まで歩き回ったわけじゃないから、どこがどうなっているのやら……」

「え? 無目的で裏通りまで入ったんですか?」

「一応子供には“秘密基地”なるモノを持つのがセオリーなのよ」

「せ、せおりい? ……ですか?」


 取得技能から何か探し物に使えそうなモノをキーにピックアップさせていると、大通りの方から悲鳴が上がったのが聞こえた。慌てて方向転換をして二人で裏路地から出る。


 そこには野次馬たちが頭上を見上げて、口々に「危ないぞ」やら「きゃーっ!」とこの世の終わりを見た感じな状況で叫んだり、悲鳴を上げたりしていた。

 その理由は頭上にあった。

 家と家の間、大通りを挟んで渡してあるロープ。その中央に子猫がしがみついている。それを助けようと、少年が芋虫みたいにズリズリと綱を渡っている最中であったからだ。

 

「なんちゅーかこう、必死の救出劇を見守る群集ってどこも変わらないんだなあ……」


 呟いて、その群集の一部となって上を見上げる二人。

 周囲の人々は時折小さな悲鳴を上げつつ、赤毛の少年の健闘を静かに、彼の集中力を乱さないように見守っていた。


(ん? 赤毛の少年?)


 嫌な予感がしたケーナは隣のロンティを制止しようとしたが、時既に遅かった。


「あ、ああああっ!?」


 唐突に絞り出された素っ頓狂な悲鳴は、場の空気を霧散させるには充分で。


 ビックリした子猫は、辛うじて引っ掛けていた爪を外してしまい空中に投げ出された。それを追って少年も空へダイブ、空中で子猫をキャッチ。

 下で見守っていた群集からは、悲惨な未来を予想しての悲鳴が上がった。

 誰か受け止めようとしてやれよ。


 事前に最悪を想定し、準備だけはしていたケーナだけは騒がす慌てず。予め準備してあった魔法を少年に向かって解き放つ。


魔法技能(マジックスキル):load:浮遊】

「ええっ!?」


 隣からの驚愕の叫び声は無視する。

 子猫を抱えた少年はふわりふわりと羽毛のように軽やかに、すんなりと地に足を付けた。途端に周囲の野次馬からはワッと拍手喝采が少年とケーナへ浴びせられる。

 くるくる回りながら「どーもどーも」と頭を下げるケーナ。子猫を抱いた少年には心配そうな子供たちが駆け寄り、周りを取り囲んだ。


「大丈夫かよ、大将?」

「おおよ、ぴんぴんしてらぁ」


 心配を掛けた仲間たちに応える赤毛の少年は、礼を言おうとしてケーナの隣に居たロンティを発見し、バツの悪い顔で一歩下がる。


「ろ、ロンティ……」

「やっと見つけましたよ。でん……、じゃなくて、ええと、坊ちゃま」


 それだけを聞いたケーナは全てを理解し、ニヤケた表情で頷いた。

 なるほど、こういうイベントにぶち当たったかー、てな感じである。


(クエストを四千個を経過してもこんなのはなかったなー)


 内心納得しているケーナを余所に、赤毛の少年は腕に抱えた子猫をロンティに押し付け、子供たちに「いくぞ!」と声を掛けて走り出した。


「あっ! ちょっと! こ、これってどうすれば?」

「ううむ、素早い。逃げちゃったよ、あの子たち」

「ちょっ、ケーナさん! 感心してないで捕まえてください!」

「はいはーい、とりあえず四肢が繋がってりゃあいいよね」

「ええっ!?」


 ロンティが何か反論するより先に、野次馬の壁を【能動技能(アクティブスキル):跳躍】でぴょーんと飛び越え、少年グループの後を追う。

 顔は今ので覚えたし、いざとなったら魔法【引き寄せ】でとっ捕まえればいいやと思いながら。





 一方、追われる側の少年たちは、裏路地の迷路的な入り組んだ所で一休みしていて、ケーナの接近に気付いた。

 なんと彼女は彼らみたいに細かい道に精通しているわけではないので、障害物の多い地面を走るのが面倒になり、……壁を(・・)歩いていた。


「「「「なんだそりゃああああっ!?」」」」


 一斉に突っ込む少年たち。

 綺麗サッパリ無視したケーナは、指を鳴らしながら歩み寄りつつ黒い笑みを浮かべた。横向きなのでちょいと様にはならない。寧ろ不気味感漂う。


「さあ、雇い主の依頼でね。手足の十本や二十本は覚悟してね?」

「「「「人間に手足そんなにねーし!」」」」



 再び逃亡の道を選ぶ少年たちの後を追いながら、実際のところケーナは困っていた。


(どうやって捕まえよう?)


 無駄に数ある技能だが、相手を無傷で捕獲できる手段が少ないからだ。

 魔法【麻痺の網】は相手を麻痺させるが、ダメージも入る。今のケーナでは最小威力で撃ったとしても対象は子供だ、一瞬で炭化するだろう。


 大型のクモの召喚獣を呼び出して、クモ網に捕らえるという方法もある。……が、そのクモ自体が体長四メートルもあるため、逆にコッチが騒乱罪と魔物使いかなにかで賞金首になってしまう恐れがある。

 仕方がないので、少年たちが疲れ果てて動けなくなるまで鬼ごっこに付き合おうと考えた。体を動かすのが随分と楽しく思えてきたところでもあるし。まずは説得から入ろう。


「コラー! 逃げられませんよデン助ー、神妙にお縄につきなさーい!」

  「誰がデンスケだ、誰がー!」

「さっきロンティにデン坊ちゃまって呼ばれてたでしょーがー!」

  「ロンティ許すまじぃー!」


 壁を歩くわ、障害物を『飛び』越えるわで、路地裏を知り尽くした少年たちを追い詰める軽装の女性冒険者に、赤毛の少年率いるグループは遂に切り札を発動することにした。

 今まで幾多の兵士を振り切ってきた最終兵器をだ。


 方向転換で住宅地区の更に奥、再開発区域と呼ばれる人が住まなくなった無人の民家が建ち並ぶ界隈へ逃げ込む。

 通称ゴミ溜めと呼ばれる裏路地だ。増築に増築を重ねた家屋の細い通り。左右に木箱やら廃材などが積み重なっている山を、女性冒険者(ケーナ)が近付いてきたところで一気に倒す。



 ゴワッシャアアァアアァ!!! 


 轟音が響き、埃が舞い、路地はあっさりガレキに埋まってしまう。


「よっしゃー!」

「やったー!」

「みたかー!」


 ……と歓声を上げる仲間達。額の汗を拭いながら仲間たちを労おうとした赤毛の少年は……、


  「危ないから山に近付くんじゃないよ~」


 廃材の山の向こうから聞こえてくるのんびりとした声に驚いて振り返った。


 【戦闘技能(ウェポンスキル)跳ね上げる兎(ラビッドストリーム)


 ─── バッカアアアァアアアァンン!!


 つい今しがたその場に山と積まれた木箱や廃材が、一瞬で木っ端微塵となって上空へと打ち上げられた。

 もうもうと煙る埃のカーテンの向こう、仄かに青白く光る剣を下から上へ振り抜いた姿勢のまま、不敵に笑う女性冒険者が姿を現す。遅れてバラバラと辺りに降り注ぐ残骸の欠片。


「ちょっちょっと待て、今その剣どっから出したーっ!?」

「ば、化けもんだ……」

「ちょっとー、人を見てモノを言いなさいよー。どこが化けもんなのよー」


「逃げろっ!」

「うわ、しぶとーい……」


 てっきり今ので戦意喪失したのかと思っていたケーナは、完全に当てが外れてがっかりだ。

 MPを注ぎ込めば威力を増す効果を持つルーンブレードを仕舞い込み、途中で彼らを探すために呼び出した“風精霊”に先行させて後を追わせる。


 再び追う者と追われる者が街中を駆け抜ける。

 大河に面した街の上流側に出た少年たちは、増築されてジャングルジムのようになった桟橋を伝い、その下にある下水溝に潜り込んだ。元々は街を増築する前にあった大河の支流の一部が合流していた場所で、今は川に生活廃水を垂れ流すだけの水路になっている。 


 そこに隠してあった小船に飛び乗った少年たちは、オールを手にもの凄い勢いで漕ぎ始めた。

 王都の祭りに小船漕ぎ競争があるが、毎年彼らは大人に混じって良い勝負を見せる。そこで培った才能を遺憾なく発揮する時、……とばかりに水上を高速で岸から遠ざかっていく。


 中洲を越えた所で、「どーだ、ざまあみろ!」と宣言するために振り返った彼らの表情が凍りついた。

 全く何の問題も無く水上を歩いて(・・・・・・)彼らに迫るケーナの姿を視認したからである。 これには桟橋側から「何の騒ぎだ?」などと野次馬に出てきた者たちも、目を丸くしてどよめいていた。


「私から逃げられると思うなー。さっさとお縄に付きなさーい!」


 どこからともなく取り出した黄色のメガホンを片手に降伏勧告を付きつける。

 少年たちはカクカクした動きで体を前に向けると、猛然とオールを動かし始めた。もうなりふり構わずといった感じである。

 「しょーがないなあ」と頬を掻いたケーナは、小走りに付かず離れずの距離を取って小船の後を追い始めた。 


 



 結局、中州を四周した所で精も根も尽き果てて、死人のようにグッタリした少年グループから赤毛の少年を捕獲したのである。





 空がオレンジ色になる頃に、ロンティたちへ襟首を摘み上げ、ついでに縄でぐるぐる巻きにした少年を引き渡す。先程の騒動の一部始終を二人とも目撃していたようで、ロンティだけはあんぐりと口を開けたままだった。

 「はっはっはー凄いのうお前さん」と笑うアガイドは特に何も言わなかったが。


「ほれ、報酬じゃ」


 小袋にみっちり入った銅貨を渡されたケーナは首を傾げた。

 確かに今までで見たことも無い銅貨の数だが。


「なんですか、これ?」

「うむ、さっきの水上捕り物レースで野次馬相手に賭けをしてのう。取り分は5:5でよいじゃろ?」

「うわ、抜け目ないわ、このお爺さん……」

 

 縄でグルグル巻きに縛られた赤毛の少年もぐったりして、ぷるぷると小刻みに震えていた。


「くっそー、何なんだよお前ー。この俺を誰だか知ってこんなことしてんのかよー」

「だいたい判るけど、デン助でいいや。そっちの事情には巻き込まれたくないしー」

「ほう、お前さんこの坊主の事情が判るのかの?」

「さっきロンティが『でんナントカ』って言いかけてたんだもん。窮屈なお城の暮しに逃げ出してきた王子様、とかでしょ? 定番過ぎて判りやすいわ。だから唯の悪餓鬼捕獲と考えて耳と目は塞いでおきますよっと」

「こらーっ、ロンティ! お前のせいでデンスケなんて呼ばれる羽目になったじゃないかーっ!」

「ううう、すみません」


 貰った小袋ごとアイテムボックスに仕舞い込み、「依頼は完遂でいいよね?」と聞く。何故か満足そうな笑みを浮かべたアガイドは、コートについていそうな大き目の丸い金属のボタンを渡してきた。


「今度はなんですか、これ?」

「この王都で困ったことがあったら、それを示すと良いじゃろう」

「いや、それはそれで騒動の種のような気がしますけど?」

「ほっほっほ、ではな。依頼御苦労じゃったな、嬢ちゃん」

「すみませんケーナさん、今日はありがとうございました」


 老人とは思えない豪胆な動作で芋虫状態の少年を肩に担ぐと、ふぉふぉふぉっとエコーを響かせて端の方に泊めてあった小型の立派な帆船に乗り込む。一度深々と礼をしたロンティもその後に続く。


「どこの宇宙忍者よ、あの御爺さんは……」


 


 悠々と大河を渡り始める帆船を眺めていたケーナは踵を返して宿に帰ることにする。まだこの時までは平和だったとケーナは後に知る。







 ドンッ!


 宿屋のドアを潜った途端、ケーナを迎えたのは歓声と大ジョッキになみなみと注がれた酒であった。自然と顔が引きつるのはもはや条件反射だ。


「おかえり、遅かったねえっ!」


 茶色い猫耳がピンと立った女将さんが嬉しそうに大ジョッキをケーナに渡した。

 つい受け取ってしまったケーナに一気コールが掛かる。イマイチ事情が飲み込めないケーナは女将さんを振り返った。


「アンタ川の方で面白いことやってたって話じゃないかい。皆に聞いたけれどよく分からなくてねえ。それなら本人に聞けば全部判るだろうってみんなが言うもんだからさあ。あ、その酒はみんなのオゴリだよ」


 ……つまり、皆の酒の肴にするために、今日の捕り物を全部話せと? 一瞬で理解したケーナの顔色が真っ青になる。

 とくにこのジョッキが原因で。そうこうしていても終わらないコール声援に、投げやりになったケーナは諦めてジョッキに口を付けた。






────ちなみにその後の記憶は無い。

ちょっと勢いを失ったかもしれません。 

これで呆れられないといいなあ……。

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