14話 予期せぬ出会いをしよう
のんびり回です。
夜が明けてからの行程は慎重に進められた。
何が待ち受けているのか分からないので、エーリネはケーナの移動補助魔法も断った。その代わりに何時襲撃に会ってもいいようにと、ケーナは常に防御上昇魔法を使って有事に備える。
皆には体力を心配されたが、日中はクリムゾン・ピグ(幼生)の召喚と補助魔法だけでMP全体の一割も減っていない。本人にとっては別に心配される事でもない実状であるが、連発して使用して貰う方は気が気で無い。
これも団員達との戦闘連携の打ち合わせで発覚した事だが、一般的な魔道士は魔法を使い過ぎると体力切れで倒れるらしい。ゲーム中とは違いHPがMPの役目も果たしているのか、MPが体力ゲージとして機能しているのか。それともゲームに関係した人物だけしかMPを持たないのかが不明だ。
(そういえばリットちゃんはどうなるんだろう? 【サーチ】でMPがあるって事は冒険者の素質があるって意味だよ……ね?)
心配する一同とは裏腹にそれからは一度も盗賊等の襲撃は無く。魔物の襲撃があってもケーナの補助を受けた傭兵団員だけでコレを退け、十二日の行程を経てヘルシュペルの王都へと到着した。
クリムゾン・ピグ(幼生)を連れての入国は問題有りそうなので直前に送還してからだ。
この都市はフェルスケイロの王都とは違い、山裾のなだらかな斜面に建築されている。
見た目はスイスの別荘地か、高山都市の様に。
一番ケーナを呆れさせたのは都市を見下ろす位置に建てられた王城だ。白い城壁は西洋風であるが、その中央に燦然とそびえ立つのはなんと日本の城。左右の巨大な風車に挟まれたソレを見て、和洋折衷もここまで混濁してるのかと思うと苦笑いしか出てこない。
「ああ、そういえばあの城、フェルスケイロの廃棄区域に建ったのと似てますね。気付きませんでした」
「あー、あれか……。あの城も元々この地に建っていた砦だったと言う話だからな」
「砦……。ってことは紫の国のギルド『暁の鼓動』かな? たしかあそこは武装や見た目が武士だったなあ」
街門を通ってエーリネの商隊が入り込んだのは都市の中央段だ。
この段より上側に商家や貴族街が配置され、下側に市場や一般的な住宅街がギリシャの街並みみたいに広がっている。山裾はさらに下に続いていて、遥か下の方には沢山の湖や幾つにも枝分かれした川が、水気溢れる清楚な風景を造り上げていた。
「そういえばケーナ殿はどなたかに手紙を渡す依頼がありましたね?」
「渡す奴は知っているのか? 嬢ちゃん」
言われて脳内よりマイマイに告げられた名前を思い出す。……たしか。
『堺屋、ケイリック様デス。ケーナ』
真っ先にキーが答えた。
必要が無ければ一言も発しない為、ケーナ自身も彼の存在を忘れる事も多い。心の中で「ありがとう」と礼を述べてそのまま口にする。
「堺屋って所のケイリックって人ですね(堺屋って時代劇みたいだなあ)」
ケーナからその名を聞くと驚いた顔のエーリネと、納得するアービタ。
「もはや驚く気も失せたっつーか、一々驚いていられねえっつーか……」
「交友関係まで規格外なのはケーナ殿の常、と言いましょうか。そこでしたら私共も取引をする所です、一緒に行きませんか?」
「すみません、お願いします」
ケーナが頭を下げ、皆がそれぞれの役目を果たす為動き始めた。
ある者は荷物の運搬用の台車を借りに行き、ある者は荷物のチェックを始め、ある者は馬車から馬を外して専用の預かり所へ連れて行く。
アービタは団の半分を馬車の護衛に残して、宿屋を纏めて確保しに行く。
「じゃあ旦那、いつもの所で入れておくぜ。嬢ちゃんも一人部屋になるようにしておくからよ」
「ありがとうございます、アービタさん」
「礼はいいって、この旅の間は苦楽を共にする仲間だしな」
それでも礼を述べるケーナにアービタは頬を掻いて苦笑する。
商隊より離れ、エーリネの後を付いて街中を歩くケーナはキョロキョロと落ち着きがない。フェルスケイロに着いた時と同じ反応にエーリネは噴き出した。
「あ、すみません。 エーリネさんの護衛なのにキョロキョロしちゃって……」
「街中ではせいぜいスリに気をつけるくらいですか。 本当にケーナ殿は今をよく知らないのですね」
「お恥ずかしい話ですが、基本田舎者なので」
先ずは通商ギルドに向かいつつ、街並みを見ても理解し難い部分を説明してくれた。
ここから湖へ続くなだらかな坂に設置してある風車と、その間を繋ぐ線についてだ。線にしか見えない物は【鷹目】を持つケーナでも何かの丸太のように見え、詳細は分からない。
「この王都は別名“風車都市”とか“技術都市”とか呼ばれます。水源があのように低い位置にあるので、風車を回して水を汲み上げ、丸太をくり貫いた管を通して都市まで届けているのですよ」
「井戸とかは無いんですか?」
ケーナの疑問に一際大きい風車、王城の左右に二基あるそれをエーリネは指差した。
「あれがそうですよ。但し、とんでもない深さまで掘ったと聞いています」
「……はぁ~」
エーリネの説明に生きる努力って凄い、と感心するケーナ。それを思えば辺境の村で会った人達の熱意に対して、少し適当過ぎた対応だったかなと反省する。
「次に会ったらキチンと説明してあげよう……」
ケーナの呟きを聞いて、お人好しが過ぎやしないかとエーリネは苦笑いだ。
二人が訪れた通商ギルドは真っ白なお椀を上下逆にして伏せた型で、一言で言えば白い大福かドーム球場か。中の受付で用件と共に遺品を受け取った職員は慌てて上司に報告し、奥の部屋に通された。
そこでギルド長も交えて二人は幾つかの質問をされた。日にちと場所と状況を伝えると、通商ギルドから口止め料のようなものを支払われた。ギルドはそれを騎士団に伝えて、この後に詳しい説明を聞きに騎士団から人員が赴くと伝えられた。
その次にケーナが連れて来られたのは左右に長い家屋、商家の中でも随分と大きい敷地面積がある所だった。ここもまた周囲の家屋と一線を越すデザインで、白い壁に覆われているのは他と変わらないが、二等辺三角形を載せた様な斜面の屋根に並んでいるのは、なんと瓦だ。手前の道にまで張り出しているのは、ジプシーの小さいテントに似た一時的に荷物を置くスペースみたいなもの。
「なによこの和洋折衷は……」
「ワヨウセチュー……、妙な響きの言葉ですね?」
つい呆れた彼女の呟きを聞いたエーリネが首を傾げる。なんと返せばと迷ったケーナは、東方と西洋の混じった文化と説明してみた。エーリネはそれをゆっくり吟味し、もう一度建物を良く見てから深く頷いた。
「成る程、ワヨーセチューですか。前々から何となく違和感を感じていたのですがそう言った事だったのですね、合点がいきました」
(あ、あれ?)
あっさり受け入れられて、逆に拍子抜けするケーナ。
竜人族の人足やドワーフと犬人族の下男が荷物を持ってちょろちょろと移動している中を、すいすいと抜けたエーリネは商人らしき人達が引っ切り無しに出入りしている正面入り口に入って行った。
彼の説明によると、『堺屋』と言うのはこの国になくてはならない商家だそうだ。
大陸でもあちこちに手が伸びていて、通商ギルドにも影響力がある根源的な商人の家系である。ここに睨まれたら商人としてやっていけないので、取引には細心の注意を払うとも言っていた為、ケーナは黙って護衛に専念する事にした。
「おや、エーリネ様。今年はあのような状況でどうやってこの国に?」
「中々侮れない伝手を手にしましてね、持つべきものはやはり友人かと」
軽い挨拶から入って取り引きの話へ繋ぐエーリネと、ここの代表格と言えそうな雰囲気を纏ったエルフの青年(?)。二人のやり取りを聞きながら、自分だと顔にでるからああいった交渉は無理なのだろうなーと、感嘆するケーナ。
そうこうしているうちに話は進み、最後にはがっちり握手を交わして交渉は終わった。
「本日、大旦那様はいらっしゃいますか? フェルスケイロの方から手紙を預かって来たのですが」
「手紙ですか? 失礼ですが拝見させて貰っても?」
「はい」
交渉のついでにと予めエーリネに渡してあった手紙を受け取る青年。手紙をひっくり返し、差出人を確認した青年の頬が引きつった。
「ちょっとお待ちを」
返事も聞かずに慌てふためいた様子に、顔を見合わせて疑問符を飛ばしまくる二人。
暫く待って戻ってきた青年に押し込まれる様に奥へ通され、落ち着いた調度品に囲まれた静かな部屋に通された。意味が分からず首を傾げるケーナとエーリネの前に、先程のエルフ青年を更に貫禄UPさせた美丈夫が現れる。
「これはこれは大旦那様、ご無沙汰しております」
「久方振りですなエーリネ様、相変わらず見事な手練手管と聞いておりますぞ」
座っていたソファーから立ち上がり深々とお辞儀をするエーリネを片手で制し、楽にするよう進める堺屋の大旦那。
彼はケーナの前に進み出るや否や、いきなり深々と腰を折った。これに心臓が飛び出る程驚いたのはエーリネだ。『堺屋のケイリック』と言えば、百年も前に通商ギルドを立ち上げ、三国に渡って通商路を整備して商人の神とも称される人物だ。
彼が頭を下げる者だなんて王族以外に考えられない。道すがらそれを聞いていたケーナの脳内には最大級の警鐘が鳴り響く。時既に遅く、次の言葉に思考が吹っ飛んだ。
「お初にお目に掛かります、お婆様。貴女様の娘マイマイが長子、ケイリック・サカイと申します」
「………………………え?」
「母からお婆様の御高名は聞き及んでおりました。 至宝の守護者であらせられる貴女様に出会えて、真に光栄で御座います」
エーリネは目の前で降って沸いた事実に唖然とするが、無言のケーナはその上を行くパニックになっていた。
(マイマイの息子って事はー、つまり孫っ!? 齢十七にして孫とかじゃあマイマイが今の旦那以外にも夫を持ったかもしれなくて鼠算式にさらに孫や曾孫がポコポコと出て来る可能性があっていやこのケイリックにももう子供や孫がいたら私が曾祖母とかに……は、ははは)
「お婆様?」
「……ケーナ殿?」
微塵も微動だにしない彼女におかしく思ったエーリネは、失礼して目の前で手を振ってみた。反応はない。エーリネに肩を叩かれてハッと我に帰るケーナ。深呼吸をひとつしてから改めてエルフの青年と向き合う。さらさらの茶色い髪に濃い碧瞳、顔付きから何となくマイマイに似ているがスカルゴみたいにキリッとはしていない、むしろ柔和な優しい顔付き。
「やはり、道中魔法を使い続けて疲れてるのではないですか?」
「なんと、そんな事が! さぞお疲れでしょう、粗末な宿屋より立派な部屋を用意させますので、此方でお休みを」
「あー、大丈夫です。ちょっとショッキングな事実を突き付けられたと言うか……、マイマイ許すまじと言うか……」
なんとなくケーナから黒い感情が流れ掛けたのを察して視線を逸らすエーリネ。 彼女を中心に、ぶわっと広がる威圧感。正面からモロに悪意の欠片を浴びて硬直するケイリック。
「それに粗末な宿屋の方がゆっくりと寛げますから、お構いなく」
彼女の言葉に棘があるのを、身近な付き合いになりつつあるエーリネは感じ取った。
辺境の村でマレールの宿屋や、フェルスケイロ王都の安宿に愛着があるケーナは違う国の宿屋を結構楽しみにしていた。
素朴だけれど味わい深い料理や、苦学生と冒険者との交流。下町風情溢れる市場での買い食いは、半生以上口で物を摂取しなくなっていた彼女の趣味とも言える。
それを「粗末な」と貶されたケーナはすっかり臍を曲げてしまう。大人気ないと言われればそれまでだが、相手は地位も権力もある商人だとしても、孫と言われてピンとこない他人である。
マイマイは息子の存在を秘密にして対面させ、母を驚かそうとした。しかし、予期せぬ一言で機嫌を損ねたケーナの中で、ケイリックは『嫌な』人物と分類とされてしまった。
片やその不機嫌な雰囲気を纏う、祖母たるケーナの自動起動した【威圧】に圧倒されたケイリックは萎縮していた。相手は母親から寝物語に聞いていた太古の十三守護者の内一人。『機嫌を損ねれば身内であろうとも木っ端微塵』と聞かされた最凶の処刑人(全部マイマイのナマハゲ的たとえ話である)。
何処で対応を間違えたのかと今度はケイリックがパニックに陥った。
流石にこの両者に挟まれては、如何なエーリネと言えども解決のし様が無い。
不機嫌なケーナを連れて堺屋から早々に退出するのが精一杯であった。
原因が分からなければ宥め様も無く。ぷりぷり怒ってるケーナを伴って、いつもこの国に来るたびに使う宿屋に足を踏み入れたエーリネ。
旅の疲れを癒すべく、陽の明るいうちに酒宴を始めている炎の槍傭兵団一同が目に入った。これまたいつもの事なので大して珍しくも無い。違うとすれば、同じ商隊の仲間に聞き込みをしていた三人の騎士である。
どうやら堺屋で長居しているうちに、騎士団の事情聴衆が先に到着していたようだ。新たに宿屋へ入ってきたエーリネに気が付いた同僚が彼を指し示し、それに納得した彼らが寄ってきた。
三人の内隊長格らしき者はエルフ女性で、何故か気の毒そうな視線がケーナの方を向いている。
「あなたがこの商隊の責任者ですか?」
「ああ、通商ギルドの言っていた騎士団の方々ですね。初めましてエーリネと申します」
「ヘルシュペル騎士団所属のケイリナだ。早速で悪いが東の国境での事に付いて聞かせてもらいたい」
「ええ、なんなりとお答え致しましょう。まずは………」
ケーナはその脇を抜けて酒盛りをしている炎の槍傭兵団一同の方へ向かい、空いてる席にどっかりと腰を落とす。誰が見ても機嫌が悪いのが丸分かりだ。
「どーしたァ、嬢ちゃん。人込みで尻でも撫でられたのか?」
「人のお気に入りを貶されたんです。腹が立つったらもう!」
「まあ、嫌な事は美味いモンでも喰って忘れちまえ。おーい! 女将! 自慢の食事をコッチの嬢ちゃんに出してやってくれよ」
気心の知れた者達に囲まれたせいで多少は落ち着いたケーナ。
団員の注文ですぐ出てきたシチューを口にしたおかげでみるみるうちに機嫌を戻す。彼女の纏う雰囲気が元の穏やかなモノに戻ったのをこっそり確認した団員達は、安堵の溜息を付く。
普段が温厚なだけ、先日の魔法の威力を見るに実力は折り紙付き。怒らせておいたままだと流石に怖いからだ。特に逆鱗に触れる可能性がある第三者が。美味い食い物を与えておけば満足するので、すっかり操縦方法を関係者一同に理解されているとは思わないケーナだった。
「う~ん、美味しい!」
「味わってるところすみませんがケーナ殿、こちらへ来て頂けますか?」
素朴なシチューを堪能し終わったところで、騎士段との話がひと段落付いたエーリネに呼ばれて彼のテーブルに近付くケーナ。そこにいた三人の騎士のうち、隊長格だったケイリナと名乗ったエルフ女性騎士だけが残っていた。
ヘルシュペルは現在大陸にある三国中最も人間以外の異種族が多く、国を治めている王族がエルフと言う国柄ではないが、重要な役職にエルフ族が多い。もちろんドワーフや竜人族もいるが。
その騎士はエーリネの隣にケーナが座ると同時に立ち上がり、頭を下げる。その場に居た者達が面食らう程突拍子も無い仕草だ。
「ちょっ、ちょっといきなり何で頭を下げるってー!?」
「どうも弟のせいで貴女の機嫌を随分損ねてしまった様だ。あれに代わり私が謝罪する、申し訳ないお婆様」
「え……は、……ええ!?」
本日二度目の『お婆様』と呼称されて面食らったケーナだったが、よくよく観察するとケイリナの面立ちがケイリックによく似てるのに気が付いた。
「貴女、アレの血縁者?」
「そうです。私はケイリナ・サカイ、ケイリックの双子の姉です。それにしても『アレ』呼ばわりとは。 お婆様に余程の失礼を働いたようですね、弟は……」
頭を上げてから眉間にシワを寄せて腕を組む女性騎士、あまりの早い対応にエーリネが首を捻る。
「つい先程の事なのによく知っていますね……。こちらに来る途中で堺屋に寄ったのですか?」
「いや、我々は双子だからな。顔を合わせなくても会話する能力を持ち合わせているのです」
「ああ、【特殊技能:以心伝心】かあ……」
「流石お婆様。以前に母からそういった名前の能力だと伺った事が有ります」
いくら【スキルマスター】なケーナにも【特殊技能:スクロール作成】で他人に伝授できない技能がある。そのひとつが【以心伝心】だ。
これはゲーム内で兄弟姉妹親子の関係者と七十五文字制限の電報メールをやり取りする為のお遊び技能だ。仲のいい友人同士で血縁関係を決めて運営側に連絡、双方の同意をもって仮の血縁関係が交わされた者だけがこのスキルを得る。端的に言ってしまうと義兄弟の契りやら姉妹制やら桃園の誓いやらを交わせばいい。
もちろんケーナにもゲーム中に契りを交わした兄弟姉妹はいるが、今現在対象に対しての【以心伝心】は全部音信不通になっている。勿論、該当者全員にメールを送信したわけではないので、関係者の全部が音信不通だとは決め付けられないが。
何故か交わした覚えの無い息子娘達もこのスキルを持っていて、再会した時は返事が無いと駄々をこねられた。子供達に対してケーナ側が持っていないのだから、返事のしようもないし、受け取り様も無い。仕方なく、もっともらしい嘘を並べて誤魔化した。
(結界に遮断されていて忘れてた。とか、苦しい言い訳をよくも信じたわねスカルゴ達……)
既に怒る気の無いケーナは、真摯に頭を下げるケイリナが悪い訳ではないのでその謝罪を受け入れた。 それを聞いたケイリナが凄くほっとした顔で安堵していたのが気になって、理由を聞いてみる。
「それは母によく聞いていましたから。『身内でも容赦なく木っ端微塵』や『怒らせると魔神の如く』とか……」
「しないわよっ!!」
「嬢ちゃん……、流石にソレはひどいと思うぞ」
「ケーナ殿、昔はそんな事を……」
「し、してませんよっ!! 私がそんな無差別殺人鬼に見えるとでも?」
団員達は顔を見合わせると考え込んだ。
「「「氷の華とか?」」」
「なんですか皆してその反応はっ!?」
ケーナの焦った反応が面白いので、アービタ達は宥めたりからかったりしていた。……が、からかいすぎて臨界点を突破した彼女の怒りに触れ、全員が地獄の釜を開けるのに時間は掛からなかった。
尚、その中にとばっちりでケイリナが巻き込まれたのは余談である。