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12話 魔法の利便性を追求しよう

サブタイ考えるのが辛くなってきました。

うーん、うーん、と悩んで変なものが……。


 その日は宿屋へ訪れたエーリネから始まった。


「ケーナ殿、北の国へ行きませんか?」

「んー、北の国ですか?」


 なんとなく気乗りしない、といった様子でルシュという赤い楕円形の果物をシャクシャク食べながらケーナは今ここを離れるかどうか考えた。少し思案したエーリネは頭から切り札を提示する。


「先に辺境の村に寄ってからですけれど?」

「行きます! ……って、あ」


 つい聞こえた単語に反応して了承してしまう。犬人族(コボルト)の表情は分かり難いが、密かに含み笑いで肩を震わせている商人を恨めしそうに見やる。


「うう~、ずっるいですよ」

「何を人聞きの悪いことを。私は唯、途中で立ち寄る村を述べただけじゃないですか」

「もう、エーリネさんてば上手いんだから……。ええと、村まで銀貨四枚でしたっけ?」


 王都に来るまでに乗せてもらった料金を思い出して、それより延びるとなるとどれくらい増えるのかと、エーリネに聞く。しかし彼は眉間に皺を寄せて首を振った。


「いえ、村まではお客様扱いでも構いませんが、その先は護衛としてついてきてもらいたいのです……」

「え? 北の国ってそんなに物騒な所なんですか?」


 黒の国(別名、魔族の国)なんかを併合すれば危険かもしれないな。と思っていたケーナだったが、実は……と、エーリネが最近の流通事情を話し始めた。

 地図を開いてから大ざっぱな通商路を指で描く。


「先ずは大陸の外側を大きくぐるりと回る外郭通商路。次に国の境を横に走る内郭通商路、この国は大河の南北に二本ですね。最後に国の王都同士を結ぶ、大陸大動脈です」


 都市間を走る電車みたいだなあと思ったが、口には出さず素直に頷いておく。エーリネは西の国境をトントンと叩いて続きを説明する。


「今、フェルスケイロの王都と北のヘルシュペル国の王都を結ぶ大動脈。西側を走る外郭通商路が通行止めになっています。なので、今回は内郭通商路から東側の外郭へ出て大河を渡り、それからあちらの国の内郭通商路を外れて王都を目指します」

「通行止めって、崖崩れでもあったんですか?」

「いいえ、盗賊です」


 間髪容れずに返された言葉が若干の緊張感を孕んでいるのを感じとり、ケーナは息を飲んだ。エーリネは西側の国境よりやや上を指す。


「ここに古ぼけた砦があるんですが、最近そこを盗賊団が根城にしてあちこちに手を伸ばし始めたらしいんですよ」

「はあ……」

「なんでもその盗賊団の頭が強力でな。騎士団も手を出しあぐねていて、膠着状態に陥ってるっつー話だぜ」

「へー、そんな強い人がまだこの世k………、って、アービタさん!? いつから居たんですか?」

「んー、『のし』からか」

「「どこだかわかりませんよっ!?」」







「ええっ! 御母様この国を出るの!?」

「さも出奔するみたいな言い方は止めなさい、マイマイ。仕事よ仕事、商隊護衛のお仕事」


 翌日には王都を出る予定となり、一応報告のためにスカルゴを訪ねたら仕事で居なかった。あとで子供たちに心配かけるのもなんなので、王立学院までマイマイに知らせに行ったのである。

 ちなみに教会も学院も子供たちの権限で顔パスである。


 教会のシスターが言うには、大司祭様も先日以来落ちついてきた、んだそうな。未だに遠目で見かけると、びかぴか光って鳴って唸り薔薇が咲き乱れるので理解に苦しむところだ。


「んー、でもヘルシュペルに行くのね。だったら丁度いいかな、御母様ちょっと手紙の配達を頼んでもいい?」

「手紙くらいなら別に問題ないけど、向こうの国にお友達でもいるの?」

「んっふふふ~。ちょーっとね、御母様に紹介したいと思ってたから。いいタイミングかなって」


 何か企んでいそうな笑みを浮かべた娘の姿に最大限の警戒をする母親。それを分かっていながら普段と同じに振舞うマイマイ。





 ─── 翌日、エーリネの商隊。


 二台の箱馬車と三台の幌馬車を見送ったマイマイとカータツ。

 街道を東に消えていく一行に弟は難しい顔をして、姉は涼しい顔をして、見えなくなるまで手を振っていた。


「うーん、お袋が護衛って……。世界で一番安全な一行だな……」

「むしろ御母様なら盗賊の根城を一撃で破壊できるわよね?」

「まあ、今のお袋は冒険者だからなあ。益にならないと動く理由にはならねえだろうよ」

「ええ、そういうことにはなるわよね」

「それよりも手紙渡したって、あれか、あいつらか?」

「そうよ、ふふふ。きっと御母様ビックリするわよね~」

「いや、俺はきっとお袋が卒倒すると思うんだが……」





「おう、嬢ちゃん。さっきの姉さんに何を渡されたんだ?」


 出発する直前になってカータツを伴って見送りに来たマイマイは、一通の封書をケーナに託した。


「恋文ですか? ケーナ殿、貴女の魅力は女性にも人気なのですね?」

「いや、アービタさんもエーリネさんも何言ってるんですか!? 手紙ですよ手紙! あっちの王都に知り合いが居るって言うので、郵便配達を頼まれたんですよ。けしてそこにやましい気持ちは入ってませんよ」

「ふーん、ま。話半分には聞いとくか」

「話半分も無いんですってば。自分の娘と交際なんかしたらおかしいでしょうっ!?」

「え゛? あれが嬢ちゃんの娘さんか? じゃあ、一緒に居たドワーフさんは?」

「あっちは末の息子です」


 別の商人からの質問に素直に答える。ひゅー、と商隊全域に冷たい風が吹き荒んだ。

 その後はいかにしてドワーフを息子にしなければならなかったのか、……を即興で語る羽目になったのは余談である。口八丁で取り繕う技能はないものかなと思ったのは秘密だ。


 辺境の村までは前回は十日。今回は試験的にケーナが魔法【行軍速度上昇(ムーブアップ)】を使ったので八日で済んだ。

 これは戦争時に全軍の行軍速度を20%UPするもので、本来ならばいっぺんに三百~四百人へ掛け、五分程度持続するくらいだった。だが馬十四頭と護衛の炎の槍傭兵団十一人プラス、ケーナをひと纏めて使用したところ効果が一時間強まで継続したのである。楽しくなって嬉々として使っていたら、全行程が数日分も短縮された。これにはエーリネもビックリで、真剣な表情で商隊に勧誘されたのは言うまでもない。


 久し振り、と言ってもケーナがこの村を離れて大体五十日ぐらいしか経っていない。それでも村の様子は少し変わっていた。

 村の入り口の過去馬車溜まりだった所に平屋が一軒建てられていて、見た目は開放された工房のようだ。中からは大工作業的なトテカントテカンなる音が響いてくる。村の奥の人が住まなくなって廃棄されていた家からは、食事の支度をする煙が上がっていた。


 夕刻にもかかわらず商隊を迎えに出てきた村人たちは、一行にケーナが混じっているのを見つけると、次々に挨拶を交わす。あっという間に囲まれた彼女が人混み諸共宿屋に連行されるのに、エーリネとアービタは苦笑いで見送った。


「まあまあまあ! ケーナじゃないのさっ、久し振りだねぇ! 元気にしていたかい?」

「おねーちゃん、こんにちは」


 マレールとリットに暖かく迎えられ、ケーナは「ほぅ」と安堵した。肩の力が抜けられる家に帰ってきたといった感じである。注文したでもないのにパンとシチューを出されて、口を付けて変わらない味にほっこりしたところで、慌ててお金を持ち出したりするケーナの姿に二人は笑い出す。


その晩は王都で過ごした日々や、依頼のことや子供たちの話などで宿屋は大いに盛り上がった。





 翌朝、日も昇らぬうちから銀の塔へ飛んだケーナは壁画の守護者へNO.9の塔を再起動させたことを告げ、改めて二百年前に起きたことを尋ねた。


『他の守護者カら聞いたくらいしか知らネエが、ほぼマスターから別れを告げラレたってぐれぇしかわからネエな』


 結果は特に変わらず。元々この地域は白の国の端、東に行けばマップ無しの未踏エリアが広がっていたくらいで、銀の塔の試練を受けに来た者以外ではプレイヤーを見た記憶はない。東側はいつかバージョンアップで新エリアになるんじゃないか? とかギルドメンバーと話し合ってたりはしたが、結局それは実装されたのかは不明。


 その後はアイテムの補充をしてから塔を出て村へ戻ったのだが、宿屋で朝食を食べていると見なれぬ顔が近づいてきた。ドワーフが三人に、眼鏡をしたひょろ長い印象の女性が一人。彼女と彼らは自分たちがヘルシュペルから来た技術屋であることを告げると、単刀直入に井戸の水汲み機について質問してきた。


「あれは貴女が作られたと御聞きしたのですが、どのように造られたのですか?」

「え、普通に【技術技能(クラフトスキル)】でレシピ通りに実行しただけですけれど?」

「おお、くらふとすきるなる方法があるのですか!? でしたらその製造方法をぜひ伝授していただきたい」

「伝授しろといってもなあ、前提条件が色々必要ですけれど?」


 アイテムボックスから一本の人の腕ほどもある丸木を取り出すと、その場で【技術技能(クラフトスキル):加工:仏像】を実行。丸木を包み隠すように翠の小さな竜巻がケーナの手の中に発生し、僅かな時間で消えた後には全高二十センチメートルくらいの木彫りの観世音菩薩が出来上がっていた。 前提条件で覚える技能ではあるが、覚えた後は使わないスキルの内のひとつである。クエストは人身御供の代わりに湖の主に人形を納める依頼で、造ると何故か日本古来の仏像がランダムで出来上がる。 


「最低コレくらいできないと、教えたとしても使えませんけど?」


 ウインクして格好つけたつもりのケーナの前で、四人は恐れ戦いていた。耳を澄ますと「こ、古代の御技だ」とか「アレは伝説の!?」とか聞こえてきたので、大体の事情をケーナは察した。カータツが【技能(スキル)】を使わないで弟子や職人を使って舟を作っている理由を思い出したからである。 


(そういえば、技能がすたれてるとか退化してるとかマイマイが言ってたっけ?)


 などと思い出すケーナの裾をリットが引っ張るのに気が付く。


「どうしたの、リットちゃん?」

「おねーちゃん、それはなあに?」


 彼女の指差す方向はケーナの手にある木彫りの観世音菩薩。デモンストレーションで造っただけだし別にいいかと思ったケーナは、リットにそれを「はい、あげる」と差し出した。当然ソレはマレールにも目に入るもので。


「なんか随分こまかい意匠をされてそうだけど、いいのかい?」

「構いませんよ。特に何かに使うってわけでもありませんから」


 リットはキラキラした眼でそれをテーブルの上に置き、うっとりと眺めている。朝食の席だったので商隊の皆や、炎の槍団員の目にも止まることとなり、何を例えて彫った物なのかしつこく聞かれた。故郷で慈悲の女神だったと言ったら、当然ハイエルフの崇める女神だと勘違いをされたが、訂正するのもアレなので勘違いさせておくことに。最終的にはエーリネが「これは売れる」宣言をし、薬師如来や阿修羅像や弥勒菩薩、御地蔵様がテーブルに並ぶことになった。その後、技術者たちにはケーナが地面に絵を描いてギアの仕組みを伝えたが、キチンと理解してくれたかどうかは不明である。 



 翌日には村を出て、今度は過剰なお見送りは無かった。二日も進むとエッジド大河の本流にぶち当たる。これより下流に幾つか支流が合流するとはいえ、王都辺りの川幅まではない。それでも対岸までは二~三百メートルはある。


「どうやって渡るんですか、これ?」

「半年くらい前までは、丸太を繋ぎ合わせただけの橋があったんだがなあ……」

「大水で流されてしまったんですよ」

「はぁ……」

「……で、ここからがケーナ殿を雇い入れた本題なのですが」

「任せた」

「は!?」


 一瞬呆気に取られたケーナ。 彼等の言わんとする意図を徐々に理解して、額に手をやり頭痛を抑えた。


「丸投げですか……」

「ケーナ殿ほどの魔導士でしたらこの程度、困難には入らないでしょう?」

「うーん」


 けして速くはないが、水量が膨大な流れに悩むケーナ。アービタの手がポンと肩に置かれた。


「ま、軽い気持ちでやれや。無理だったら無理で仕方がないと、旦那も理解してる」

「ここまで来てそれはないでしょう?」


 むむむ、と腕組みして川に向かって唸る彼女の姿を見たアービタも失笑した。





 ―― とりあえず、第一案。橋を架ける。


「架けられるのかっ!?」

「なんですって!?」


 そんな莫迦な。驚く一同の中で、発案したケーナだけが眉間に皺をよせて、物凄い嫌そうな顔をしていた。そんな表情から察したエーリネは即却下、ケーナが安堵したのは言うまでもない。理由は言わずもがな、木を数十本単位で切り倒さなければならないからだ。


「凍らせたりはできねーのか?」

「やってやれないことはないですけれど、堰止める形になりますから、そのうち諸共に流されるかも……」

「やってやれないことは無い、ってトコにビックリッスよ……」


 当人は無難なところを述べただけなのだか、聞いてる方はあまりの規格外さに苦笑するしかない。



 ──  第二案、魔法で【引き寄せ】るか、【水上歩行】。


「その【引き寄せ】ってのは何だ?」

「見える範囲の個人を手元まで引き寄せるんですよ。断崖絶壁とか登るのに使います」


 むしろそんな感じのクエストから取得した。 しかし、アービタは一点に引っ掛かりを覚える。 


「個人?」

「ええ、今まで人以外を引き寄せたことはないもので。馬車に掛けたら馬車だけが来るのか、中身も無事なのか、その辺が不明です」


 これにはエーリネが難色を示す。商品を蔑ろにしては商人の名折れだからだ。


「じゃ、【水上歩行】しかないですね」


 【飛行】は自分にしか使えないし、乱暴なところで【召喚魔法:LV9:竜種】で運ばせる手段も考えたが、一日も進まずにヘルシュペルの関所があると聞き、目撃された場合の釈明が面倒なので諦めた。


 【水上歩行】の利点は、水上であれば、一度掛けた効果が永続な所。欠点は平坦な場所に限られる所と、途中で水以外の物を踏めば効果が切れることだ。数人が首を傾げるので、ケーナは例を挙げてみた。


「つまりは、この魔法を掛ければ寝っ転がっていても流れに乗って、王都まで辿り着けますが。 途中で石とか流木を踏んだら溺れます」


 これだけ聞ければアービタが自分の団で護衛の割り振りを決める。馬車一台につき、先導で露払いに一名と上流側からなにかが流れてこないかを警戒する者を一名配置。真っ先にアービタとケーナが対岸側の安全確認に一度渡り、セイフティスペースを確保する。


「って言うか、真っ先に歩きたかっただけじゃないの? アービタさんは」

「いや、こりゃすげえな。嬢ちゃんの魔法は何でもあるんだなあ」


 おそるおそる水上に足を踏み出したアービタに、残った者たちから「おお~!」と感嘆の声が上がる。そのまま水中に何か居ないかを確認しつつ対岸まで移動。とは言え透明度はソレほど高くないので伺うくらいしかできない。対岸に着いたら周囲を警戒してみるが、それほど危険そうな物は見当たらないのでアービタが残る。もしもの時があるので【召喚魔法:水精】でアービタを守らせるように命令しておく。


「うーん、これに守られるかと思うと自分が情けなくなるな……」


 見た目は手に乗るくらいの水魚なため、アービタは疑わしそうに自分の周りをぴょんぴょん跳ねるソレを見ている。


「危険が迫ったら、アービタさんがその危険の前に身を投げ出せば、その子が守りますから」

「冗談じゃねえ。そんなの自分の名折れになるじゃねえか」


 先ずは一台目に箱馬車が、エーリネ自ら先陣を切っていくことに。馬三頭と馬車と団員二人に魔法を掛けて、用心のためケーナが後ろをついていく。皆がはらはらと見守る中、特に問題なく渡りきった。水魚ファンネルを纏ったアービタが「騒がしい方が野生動物も避ける」と言い出したので、残りは二台ずつ。護衛対象を長時間分割させるわけにもいかないという観点から、とっとと渡らせる。


 箱馬車と幌馬車が渡りきったところで、残りの幌馬車二台と団員へ魔法を掛けて、ケーナが再び最後尾やや後方に着く。異変は渡りきる直前。対岸十数メートル手前で、五台目に繋がれた馬がいきなり甲高い嘶きとともに棒立ちになった。団員やケーナが反応するより速く、水中から伸びたアームのようなモノが下流側の馬の首を捕らえ、水面下へ引きずり込んだ。当然馬具で繋がれたままの馬車すらも斜めに傾くし、片方の馬もムチャクチャに暴れ出す。対岸からアービタが「綱を切れ!」と叫んだところで、困惑していた団員も慌てて水中に沈み掛けた馬側の綱を斬る。追いついたケーナが【獣遣い(ビーストマスター)】で片方の暴れ馬を静かにさせ、早々に岸に上がらせた。






「び、ビックリした……」


 突発的な事態に慣れてないケーナは、緊張感が切れて地面に座り込む。事前警戒用に幾つか能動技能(アクティブスキル)を立ち上げてはいたが、直接ケーナに向かう脅威ではなかったため、ほとんどが意味を成さなかったらしい。しかし、団員達からは「いい対応だった」や「助かった」とねぎらいの声を掛けられていた。


 団員へ対応の遅さをたしなめたアービタは、血が流れたために多少色の変わった水面を苦い顔で見つめる。


「何ですか、今のは……」

「ライガヤンマのヤゴだろう」


 チラリと水中に見える影だけでも馬よりも大きい。スーッと深みへ消えていく影にケーナは身震いした。


「こっわぁ……」

「あれだけデカいと騒いでも無駄だったか…。すまん旦那、見通しが甘かったらしい」

「人命や品物に被害もないようですし、結果だけみれば上々でしょう。ケーナ殿のお陰もあることですし」


 馬車内の商品チェックを済ませたエーリネが頭を下げたアービタを労る。問題は減った馬と、繋がれたまま暴れたせいでびっこを引くもう片方の馬だ。


「ケーナ殿、治療とかは?」

「はい、できます!」


魔法技能(マジックスキル)単体回復(デュール)LV1:ready set】


 ケーナの行使した魔法、ぽわんと薄青く灯った手中の光が、馬の怪我をみるみるうちに癒やす。皆がケーナの魔法に興味津々な中、アービタとエーリネは減った馬の代わりを箱馬車を引く三頭から間に合わせで使う話をしていた。


「多少全体の速度は落ちますが、ケーナ殿のお陰で日数は短縮されています。構わないでしょう」

「仕方ない、この失態の埋め合わせは後に回すか」

「アービタ殿が卑下するものでもないでしょう」


 打開策の話し合いの最中、背後からどよめきが聞こえ、振り返った二人の視界の中。ケーナが手前に白い魔法陣を展開していた。


「おい、嬢ちゃん。 何をする気だ?」

「馬代わりになるモノを喚びます」

「は?」


 魔法陣から膨れ上がる白い炎、黒い影がそこから皆の前へ躍り出た。




主人公の使う材木や植物素材などは基本的には、市場などで仕入れたもの。

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