プロローグ
初めまして、初心者に毛が生えた程度の文才ですが宜しくお願い致します。
「……まいったなぁ……」
各務 桂菜は火照った体を冷ますように窓際でグッタリしていた。
別に長風呂をし過ぎたわけではなく。考えに考え、長考を重ねてひとりで錯乱し、自己完結に至った結果によるオーバーヒートのようなものである。
視界に納まる風景は抜けるような青い空にぽつぽつと浮かぶ白い雲。ほぼ快晴である。
その下へ目を向ければ、延々と連なる山脈にその麓から広大な面積を占める森。
そして視線を徐々に下げていくと、目前に十数棟立ち並ぶ木造の家屋。
自分の生活していた二十二世紀という時代からは想定できない長閑と言えばいいのか、寂れていると言ってしまっては失礼であるような。そんな光景の一部として存在している自分にも、つい乾いた笑いを零す。
彼女が自らの置かれた状況把握に努め、疲れ果てた事の発端は今朝に遡る。
「おきゃくさ~ん、朝ですよ~」
ぱっと差し込んだ強い光と、舌足らずな幼い呼び声に彼女はうっすらと目を開く。頭上にぼんやりと見えるのは木目の付いた木の天井。
視線を右へずらせば四角く開かれた鎧戸となっている窓。
左に向ければ広がる白いシーツの先に胸から上を覗かせた少女が元気いっぱいの笑顔で「おはよーございまーす」と挨拶。
「あ~、あぁふ……。ぉはぉふぅ~?」
「えへへっ、おねーちゃん朝でっすよ~」
欠伸混じりに返事を返せば、眩しい笑顔で切り返してくれる少女に自然と目が覚める。
朝日に照らされた上半身で陽の光を吸収するように伸ばした桂菜は、自身を見下ろしてビシリと動きを止めた。 ベッド脇に立つ少女が首を傾げて不思議がるほどに。
「朝日の射す……木造の、部屋?」
昨日までというか、ついさっきまで目を閉じた場所は白い壁に囲まれ、見飽きるほどに過ごした病室だったはずだ。むしろ一人で起きることすら不可能な自分の体で起き上がって、伸びをした事実に放心する。
数秒か数分間か呆然とした瞬間は僅かだった。朝を知らせに来た少女が顔を覗き込んでいるのに気付いた桂菜は、俯き気味だった体を起こす。
「だいじょーぶ? おねーちゃん?」
心から心配してくれたのだろう。黒い瞳に悲しみをにじませる少女を安心させるにはどうしたものかと思案する。自身の悩みを横にズラして、彼女はアイテムボックスを開く。
中から無造作に掴み上げた飴玉、────MPを微量に回復させる効果───、を掌に載せて少女の前に差し出した。
かつて泣いてばかりだった幼少期の頃、よく担当の看護婦に貰った時のように。 少女に笑顔で飴玉を手渡す。
「あ、ありがとう。おねーちゃん!」
「いいえ、どういたしまして」
ベッドから離れて少女の頭を軽く撫でると、頬を軽く染めとびっきりの笑顔ではにかむ少女。
ゆったりとしたスモックに似た服の上から掛けたエプロンのポケットに飴玉を納めた少女は、桂菜の寝ていたベッドからシーツと毛布を剥ぐと綺麗に折り畳み、胸いっぱいに抱えて部屋を出ていく。
その際に「朝ごはんだからはやくおりてきてね?」と、告げるのも忘れずに。
胸にぽわぽわした暖かなものが広がる光景に浸りたかった心中を理性で抑えつけ、桂菜はつい今し方の行動を反芻した。
(……アイテムボックスを開く……?)
意識した途端に視界の右端へ表示される半透明縦長のウィンドウ。
いっぺんに並ぶ単語数は15個。ウィンドウ内右上角にあるスクロールバーを操作すれば、膨大な数のアイテムが下から上へと流れていく。
「これは……、まさか……」
頬をつねる。
……痛い。まぎれもなく現実だ。
古典的な現実と夢との判別方法により直面しているこれこそが現実と認識。
夢、なんて考えたものだからアイテムウィンドウの隣に魔法技能用の画面も開く。【夢落し:ナイトメア】がピックアップ表示されるのを見た桂菜の顔からザーッと血の気が引いた。
ここは直前までプレイしていたオンラインゲーム、その世界。リアデイルそのものではないかと。
1600文字しかありませんでした(汗)
おかしい、こんな短くなるはずではなかったのに……。