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呪われ王子と金次第聖女※第二章完結  作者: まる
第二章

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ライアス王国の初代聖女

リャト王子はこの場にいる全員に注目されていることに気づいたのか、ごくりと喉を鳴らした。全員の前で喋るのは緊張するだろう。そんなリャト王子の背中をマーロ様がゆっくりと撫でる。


「ゆっくりで大丈夫ですよ」


優しい声だった。私たちに聞かせている声とはまた違っている声だ。心からリャト王子のことを思っているのがわかる声音。

その声に勇気付けられたのか、リャト王子が顔を上げる。


「あ、あの、そ、その本には」


もう一度ごくりと喉を鳴らしてリャト王子が喋り出す。なんとなくじっと見つめるのも悪いかなと思ってカップを手に取って飲み物を口に含んだ。甘い香りがする。


「ラ、ライアス王国の建国の歴史が、か、書かれていました」


一言一言区切るようにリャト王子が言葉を繋ぐ。相当緊張しているらしく、そこまで言ってカタカタと震える手でカップを持つと飲み物を震えながら飲んだ。視界の端にその様子を捉えながら、偉いなと思った。この人数の前で喋るのは緊張するだろうに、一生懸命喋っている。


「ほ、ほとんどが、その、日記のようなもので」

「ああ」

「た、ただ、ところ、どころに」

「うん」

「の、呪いは、だ、大丈夫だろうか、とだ、誰かを、心配、心配すような記述が、あ、ありました」


そこまで言い切ってリャト王子がカップを乱暴に掴み、その中身を全部煽る。よく言い切れました、と言いたいくらいの緊張具合だった。


それにしてもやっぱり呪いのことを書いていたとなると魔法使いシュルベルの可能性が高い。魔法使いシュルベルは海を渡り、ライアスの建国に貢献した。でもなぜ海を渡ったのだろう。勇者カリアスとの間に何が?


疑問が次から次へと湧き上がってくる。自分が思考に沈んでいることに気づいて顔を上げると、全員が黙り込んでいた。王太子殿下も何かを考えている最中らしい。


「やはりライアスの初代聖女は魔法使いシュルベルということだろうか」

「その可能性が高いのではないでしょうか」

「そうなのですか?」


マーロ様が驚いた様子で会話に入ってきた。ギリウス王子もリャト王子も魔法使いシュルベルがライアスの初代聖女だということは知らないし、その可能性も知らない。説明しておく必要があるな、と考えたところで王太子殿下も同じことを思ったのだろう。口を開いた。


「こちらはフューイだ。ギリウスは知っているが、フューイは癒しの力が使える」

「癒しの力?」

「怪我しているのを治せます」

「騎士団が神様がきた、と騒いでいたのはあなたでしたか」


その話を持ち出されると少し恥ずかしい。神様ではないと言っても騎士団からすれば神様のようなものだと言われて、氣志團のところへ行くたびに感謝されてしまう。感謝されると悪い気はしないもので、私も怪我を無償で治してしまう。


「フューイは俺の呪いを抑えることができる」

「ル、ルリアート兄様のの、呪いをですか?」

「ああ、そうだ」


リャト王子も一応王太子殿下の呪いのことを知っているんだな、と驚いた。なんとなく知らなさそうだなと思っていた。リャト王子が私の方を見て、私と目が合うと慌てて目を逸らす。そんなに怖がらなくてもいいのに、と思ってしまう。


「魔法使いシュルベルと同じ力だ」


リャト王子が思わずと行った感じで口を開いた。滑らかに出てきた声に、本人も気づいていないようだ。マーロ様がそんなリャト王子を見て優しく笑う。リャト王子はもしかしたら、緊張さえしなけえれば普通に話せるのかもしれない。


「そうだ、それでフューイの力と魔法使いシュルベルの力が同じならば、ライアスの初代聖女は魔法使いシュルベルなのではないかと思ったんだ」

「だから初代聖女の手記を?」


マーロ様が王太子殿下を見ながらそういった。彼が写しを持ってきてくれていなければ、行き詰まっていただろう。本当にありがたい。


「呪いを解く方法やその手がかりが見つかるかと思ってな」


王太子殿下がそういうと、リャト王子が視線を彷徨わせたあち意を結したように口を開いた。


「じ、実は初代聖女の手記には、女神ティアはま、まだ、お、怒っている、だろうか、という記述が、あ、あります」

「そうなのか?」


王太子殿下が椅子から思わず腰を浮かせた。それくらい衝撃だった。つまり魔法使いシュルベルは女神ティアにあったことがあるのだろう。そしてその時、女神ティアは怒っていた。誰に?何を?


「魔法使いシュルベルは女神ティアにあったことがあるのか」

「そ、そうかも、し、しれません」


腰を浮かせてリャト王子の方に前屈みになった王太子殿下を怯えたようにリャト王子が見る。


「リャト、なぜそれを黙っていたんだ。お前なら兄上の呪いに関係があるかもしれないと気づいていただろう」

「…」


リャト王子が黙って俯いてしまう。マーロ様がそんなリャト王子の背中をまた優しく撫でた。


「自信が持てなかったからですよね」

「リャト、何度も言うがお前は本当に優秀だ。何か気づいたことがあればすぐに教えてくれ」


ギリウス王子がため息をついてそういうと、リャト王子が俯いたまま頷いた。ギリウス王子って言い方でかなり損をしているなあと思っていると、ギリウス王子と目が合う。ふい、とそらされてしまった。

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