2024年 10月
シーン:2024年10月 春日井東陵高校 教室
(教室内は中間試験が終わり、生徒たちのざわめきと笑い声で満ちている。あおいは自分の席で用具をかばんにしまいながら、ふと窓の外を見る。秋の柔らかな日差しが差し込む中、心は遠く、松川永史のことを思い出している。)
あおい(心の声)
「6月に東京へ行ったあの日から、もう4か月も会ってない……。でも、片時も松川さんのことを忘れたことなんてない。」
(視線をノートに落とし、ふっと微笑む。)
あおい(心の声)
「東大に合格したら……また会えるのかな。」
(近くの席で男子2人組が盛り上がって話している声が耳に入る。)
男子A
「おい、マジで最近の内津峠、ヤバいらしいぞ。聞いたか?」
男子B
「俺も聞いた。あの伝説の『頭文字E』が復活だろ?」
男子A
「ああ、話を聞いてるだけで体が震えるぜ、あー、早く卒業してえ。そして俺も走り屋デビューだ!」
男子B
「お前が走り屋?無理だって。せいぜいメガネかけてヒゲ伸ばして、頭文字Eごっこでもしてろよ。」
男子A
「そうそう、まずはメガネかけてヒゲ伸ばして、『俺は松川永史、またの名を頭文字E(キリッ!)』ってなんでやねん!」
(その名前を聞いた瞬間、あおいは動きを止め、驚いた表情で二人の方を振り向く。)
あおい
「……えっ、松川永史?」
(あおいが立ち上がり、男子二人の方へ近づく。二人は突然声をかけられ、慌てた様子で顔を見合わせる。)
男子B
「あ……あおいさん?」
あおい
「ねえ、今の話、詳しく聞かせて。」
(男子二人はどぎまぎしながら椅子を少し引き、急に態度を改める。)
男子A
「え、えっと……その……最近、内津峠に現れた最速の走り屋の話ですけど……。」
男子B
「そ、その人がスーパーカブに乗ってて、『頭文字E』って呼ばれてるんだよ。……もしかして、あおいさんも知ってるの?」
(あおいは少し驚いた表情を浮かべ、心の中で松川永史の姿を思い浮かべる。自分でも気づかぬうちに、口元が微かにほころぶ。)
あおい(心の声)
「松川さん……内津峠にいるの?」
(あおいはその言葉を飲み込み、穏やかな笑みを浮かべながら二人を見つめる。)
あおい
「ありがとう。その話、もっと聞かせてくれる?」
(男子二人は再びどぎまぎしながらもうなずき、詳細を語り始める。)
シーン終了




