2024年 5月
2024年5月 東京 ザ・タワー・オブ・エクセレンシア本郷文京 最上階 松川永史の部屋
(玄関のチャイムが鳴る。松川永史がドアを開けると、帝都ホテルの寿司店から招かれた寿司職人が立っている。)
寿司職人
「どうも、松川さん。毎度ごひいきに。」
松川永史
「ひさしぶりだね。さあ、あがって。」
(寿司職人は丁寧に頭を下げながら、玄関を上がりダイニングへ向かう。松川永史は彼を案内する。ダイニングテーブルには仕込み用のスペースが用意されている。)
(寿司職人が道具を広げ仕込みの準備を始める。)
寿司職人
「松川さん、こないだはどうもありがとうございました。桜花賞、勝ちました。」
松川永史
「それはよかった。なんかうまい物でも食ったかい?」
(寿司職人が少し照れくさそうに笑い、左腕を差し出す。そこには真新しい腕時計が輝いている。)
寿司職人
「実は、これ。」
松川永史
(腕時計をじっと見つめる。)
「オメガのシーマスターか…。いい時計だ。でもそれ、90万くらいするやつじゃないのか?」
寿司職人
「松川さんを信じて馬券1万円分買ったんです。」
(松川永史は驚き、あきれたように肩をすくめる。)
松川永史
「俺の言葉だけでか…。大将、あんたの方がよっぽどギャンブラーだよ。」
寿司職人
(微笑みながら)
「こちとら客商売ですからね。誰が信用できるか、見る目はあるつもりです。」
(松川永史は呆れた表情を浮かべつつも、どこか嬉しそうな笑みを見せる。寿司職人は腕時計を外すと念入りに手を洗い、仕込みをはじめる。)




