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対決の時

春日井東陵高校 グラウンド - 勝負の3打席


(グラウンドに張り詰めた空気が漂う中、松川永史はマウンドに立っている。すでに初夏を思わせるような強い日差しが背中に当たるが、その表情に迷いはない。バッターボックスに立つ市山塁を見つめる眼差しには、静かな闘志が宿っている。)


第1打席

(松川は軽く腕を回し、ワインドアップに入る。バランスの取れたフォームから放たれた初球は、地を切るようなストレート。)


【1球目】

球種:ストレート(152km/h)

ボールカウント:ストライク 1-0


(市山のバットが振り出されることなく、キャッチャーミットが高らかな音を響かせる。松川はバッターを一瞥し、淡々と次の準備に入る。)


(わずかに口角を上げた松川の表情は、自らの球威に対する確信と、勝負への楽しみを感じさせるものだった。)


【2球目】

球種:ストレート(156km/h)

ボールカウント:ストライク 2-0


(市山がタイミングを合わせようとするが、ボールはすでにミットに吸い込まれている。松川は小さく息を吐き、最後の球を投げるため、力強く振りかぶる。)


【3球目】

球種:ストレート(164km/h)

ボールカウント:ストライク 3バッターアウト


(豪速球が市山のバットをあざ笑うようにすり抜け、ミットに突き刺さる。松川の顔には静かな満足感が浮かび、次の打席へ向けて軽く肩を回した。)



第2打席

(市山が再びバッターボックスに立つ。松川は無言で構えを整え、冷静にボールを握る。)


【1球目】

球種:カットボール

ボールカウント:ストライク 1-0


(バットがわずかに動くが、芯を捉えることはできない。松川は無表情のままボールを受け取り、次の球の握りを作る。)


【2球目】

球種:スライダー

ボールカウント:ストライク 2-0


(アウトコースに大きく外れたと思われたボールは、バッターボックス手前で大きく軌道を変え、ストライクゾーンいっぱいに決まる。市山礼の目に驚きの色が浮かぶ。松川の目がわずかに細まり、勝負の終わりを見据えて動作を開始する。)


【3球目】

球種:フォーク

ボールカウント:ストライク 3バッターアウト


(視界から消えるような鋭いフォークボールに、市山のバットが空を切る。松川は軽く頷き、バッターに視線を送る。その目には、わずかに興味を引かれたような色が見え隠れしている。)



第3打席

(市山が汗をぬぐいながら構える。松川はゆっくりと帽子を直し、腕を伸ばしてリリースの感覚を確かめるように投球動作を始める。)


【1球目】

球種:スライダー

ボールカウント:ストライク 1-0


(市山のバットが迷うように止まり、キャッチャーがしっかりと捕球する。)


【2球目】

球種:フォーク

ボールカウント:ストライク 2-0


(市山は鋭いフォークに手が出せず、僅かな焦りを見せる。松川は一瞬微笑み、次の球に集中する。)


【3球目】

(市山がフォークに喰らいつき、ファウルで粘る。その姿に松川はかつて対決した男を重ねていた。)


松川永史

「私のフォークをバットに当てたのは、君で二人目だ。一人目のやつも、君と同じ左打ちのショートだった。」


(その言葉には敬意と挑発が入り混じる。市山の目が燃えるように輝き、次の球を待ち構える。)


【ラストボール】

球種:スローカーブ

ボールカウント:ストライク 3バッターアウト


(緩やかに浮き上がるようにして落ちるカーブが、市山の目の前を通り過ぎる。見逃し三振。松川は少しだけ肩を緩め、帽子を取り、額の汗を軽くぬぐう。)


(市山は唖然とした表情でその場に立ち尽くしている。松川は特に言葉を交わすことなく、その姿をじっと見つめる。静かな余韻がグラウンドを包み、勝負の重みが確かに残されていた。)


(風が吹き抜ける中、松川は市山を見据えながら微かに頷き、グラウンドに立ち続ける。市山の表情には悔しさと敬意が入り混じり、勝負は確かに終わった――。)

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