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運命

シーン:2024年4月 高蔵寺駅前 高級スーパー


(夕方、雨の降り出した街。高級スーパーの袋を片手に、松川永史は傘を差しながら高蔵寺スープリームコートタワーレジデンスへの道を急ぐ。雨がしとしとと降り続く中、彼の頭には仕事のことや日常の雑事が巡るばかりだった。)


松川永史(心の声)

「急に降ってきたな…。傘を持っていて正解だった。」


(マンションの前に差しかかると、遠目に女性の後ろ姿が見える。警備員と話をしているようだが、傘も差さずに雨に濡れている様子が気にかかる。松川の足がふと止まる。)


松川永史(心の声)

「……あれは?」


(一歩、また一歩近づくうちに、その女性が誰かを確信する。胸の奥が強く締めつけられるような感覚が彼を襲う。)


松川永史(心の声)

「あおいちゃん……?」


(1年前の記憶が鮮明によみがえる。そのときよりも一層美しくなった姿が目の前にありながら、彼女の純粋な雰囲気は少しも変わっていない。言葉にできない感情が胸に広がり、気づけば声をかけていた。)


松川永史

「あれ…あおいちゃんじゃないか?」


(振り返ったあおいの瞳が揺れる。驚きと安堵、そしてどこか熱いものを含んだ目に、松川の胸はさらに締めつけられる。)


あおい

「松川さん…!」


(雨の中、濡れた髪の彼女はじっと彼を見つめている。その様子に、松川はあふれそうな感情を必死に抑えながら微笑む。)


松川永史

「こんな雨の中でどうしたんだい?こんなところで会うなんて、偶然だね。」


(彼の言葉にあおいの唇が震える。少しの間があって、彼女が絞り出すように言葉を発する。)


あおい

「……会いたくて…来てしまいました。」


(その一言に、松川の心が一瞬揺れる。)


松川永史(心の声)

「……会いたくて…だと?何てことだ。そんなふうに言われたら……俺は……。」


(戸惑いながらも、あおいの顔をじっと見つめる。彼女の瞳には確かに何かを求めるような輝きが宿っている。だが、それに応えることの重さを考え、微笑を装う。)


松川永史

「それなら…少し話そうか。雨宿りに俺の部屋へおいで。」


(あおいが小さく頷き、涙ぐみながら傘の下に入る。松川は彼女の肩を軽く抱くようにしながら、タワーレジデンスへと歩き出す。)


(ふと、あの日の寿司職人の言葉が脳裏に浮かぶ。)


「……もしその人とどこかでもう一度出会えたら、それは運命ですよ。運命がその人と松川さんを引き合わせようとしてるんです。そのときは全力でぶつかっていかないといけないですよ。」


(胸の内でその言葉を反芻しながら、松川はあおいとともに扉の中へ消えていく。)

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