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2024年 3月 東京

シーン:2024年3月 ザ・タワー・オブ・エクセレンシア 本郷文京 最上階 松川永史の部屋


(広々としたモダンな部屋のダイニング。部屋の中央には木目の美しいカウンターテーブルが据えられ、その向かいに寿司職人が立つ。帝都ホテルの寿司店から招かれた職人が、丁寧にネタを握る。部屋には穏やかな音楽が流れ、窓の外には東京の夜景が広がる。)


松川永史

「今日は俺一人のために来てもらってすまないね。」


寿司職人

「いえいえ、実はちょうど大トロの一番いい部分が1人前しか取れなかったんです。これはぜひ松川さんに味わってもらいたいと思いまして。かえって都合が良かったです。」


(職人が微笑みながら、包丁で繊細に切り分けた大トロを握り始める。目の前に美しい一貫が置かれる。)


松川永史

「それはありがたいな。こんな贅沢ができるのも君のおかげだ。」


(松川が大トロを口に運び、一瞬目を閉じる。)


松川永史

「……最高だ。脂の甘さとシャリの温度、完璧だな。」


寿司職人

「ありがとうございます。こうしてお客様の反応を直に見られるのが出張の醍醐味です。」


(雑談を交えながら寿司が出される。白身、貝類、光物と進み、焼き物が登場する。)


松川永史

「こういう出張、ほかにはどんな人のところに行くんだい?」


寿司職人

「だいたいはパーティーか、あとはお店に来づらい方たちですね。政治家や芸能人の方々、それとその愛人とか…いろいろですよ。」


松川永史

「ふーん。」


(松川は軽く受け流すが、一瞬あおいの顔が浮かぶ。もし二人でこの寿司を楽しめたら…そんな光景を頭に思い描いてしまう。)


松川永史(心の声)

「いやいや、50を超えたおっさんが何を考えてるんだ。」


(職人が次の一貫を握りながら、ふと尋ねる。)


寿司職人

「そういえば松川さん、お付き合いしている女性はいらっしゃらないんですか?いつもお仕事関係の方とご一緒みたいですが。」


(松川が少し驚いたように目を上げるが、すぐに微笑む。)


松川永史

「……心からいとおしいと思っている女性はいるよ。でも、その人は遠くにいて、もう会えることはないだろう。俺の方から会いに行ってはいけない人なんだ。」


寿司職人

「そうですか。」


(職人は静かにうなずく。次に握るネタを選びながら、少し言葉を続ける。)


寿司職人

「でも、もしその人とどこかでもう一度出会えたら、それは運命ですよ。運命がその人と松川さんを引き合わせようとしてるんです。そのときは全力でぶつかっていかないといけないですよ。」


松川永史(心の声)

「運命か…。あおいちゃんのような女性ともう一度出会える、そんな運命があるのだろうか。」


(熱燗を一杯、ぐっと煽る。)


(寿司懐石のコースが終わり、職人が帰り支度を始める。)


寿司職人

「本日はありがとうございました。またお呼びください。」


松川永史

「こちらこそ、どうもありがとう。今日も素晴らしく美味しかったよ。」


(一拍置いて、松川が続ける。)


松川永史

「それに、とてもいい話を聞かせてもらうことができた。」


(職人が少し照れくさそうに笑う。)


松川永史

「お礼に、いいことを教えてあげよう。」


寿司職人

「え?」


松川永史

「今度の桜花賞、三連単12-9-11が来る。1000円でいいから買っておきな。」


(職人が驚きながらきょとんとする。)


寿司職人

「えっと…?」


松川永史

「もう一度言う。三連単12-9-11だ。俺と俺が思っている女性がもう一度出会えるのが運命なら、今日君からその話を聞けたのも運命だ。俺はその運命に感謝している。それが、俺から君へのささやかな感謝のしるしなんだよ。」


(職人が少し考えたあと、軽く頭を下げる。)


寿司職人

「わかりました。試しに買ってみます。」


(松川が微笑みながら酒をあおる。職人が再び礼を述べ、静かに部屋を後にする。)

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