2023年 10月 六本木
シーン:六本木ビバリータワー 松川永史の部屋
(がらんとしたリビング。高層階の窓から東京の夜景が広がっているが、部屋の中は静まり返り、家具がすべて運び出された空間が広がる。松川永史がひとり、リビングの中央に立ち、思い出にふけっている。)
松川永史(心の声)
「……がらんとしてるな。」
(少し寂しげに笑う。窓際に歩み寄り、夜景を見つめながら、思い出がよみがえる。)
松川永史(心の声)
「ここには、たくさんの人間がやってきた。男も女も。何度もパーティーを開いて……飲んで、食べて、最後はみんなで雑魚寝。」
(苦笑いを浮かべ、天井を見上げる。)
松川永史(心の声)
「俺の歓心を買おうと、裸踊りまでしたやつもいたっけ……今思えばくだらない。でも、当時はそれが楽しかったんだ。」
(ゆっくりと部屋を見渡す。広いリビングの空虚さが胸に刺さるように感じられる。)
松川永史(心の声)
「でも、そんな生活とも、これで本当にさよならだ。」
(窓の外をじっと見つめる。遠くに輝く東京タワーが見える。)
松川永史(心の声)
「次の棲家は文京区、歓楽街からはほど遠い。」
(一瞬、微笑むが、その表情にはどこか決意が感じられる。)
松川永史(心の声)
「新しい場所で変わろう。これまでの俺と決別して……。」
(ふと、あおいの笑顔が脳裏に浮かぶ。松川の表情が柔らかくなる。)
松川永史(心の声)
「……たとえ、あおいちゃんともう会えなくても。」
(自分の胸に手を置く。あおいに出会ったことで生まれた、かすかな感情を大切にするような仕草。)
松川永史(心の声)
「あおいちゃんに出会えた証を、俺の中に残していくことはできる。」
(窓の外を最後にしばし見つめると、鍵を閉めゆっくりと部屋を後にする。。)




