競馬
シーン:春日井東陵高校 教室
(進路希望用紙を前に考え込む松川永史。彼の頭の中には、プロ野球選手としての厳しい現実が巡っている。)
松川(心の声)
「プロに入って、ファンにやじられて、監督やコーチに頭を下げて…さらにタニマチや親会社の重役相手に男芸者か。これじゃあ割に合わないかもな…。」
(ふと、教室の端から別のクラスメイトたちの会話が耳に入る。)
クラスメイトC
「今度の桜花賞、マックスビューティー、くるんじゃねえか?!」
クラスメイトD
「俺はコーセイに賭けたいけどな。1-5あたりが鉄板かもよ?」
(その会話を聞いて、松川は内心でツッコミを入れる。)
松川(心の声)
「競馬か…まったくおまえら未成年だろ。」
(だが、その瞬間、頭の中に「マックスビューティー」「コーセイ」「1-5」という文字がはっきりと浮かび上がり、視界が一瞬ぼやけるような感覚に襲われる。)
松川
「なんだ…この感覚…?」
シーン:放課後・場外馬券売り場
(学校から帰宅するも、松川はその感覚が頭から離れず、着替えると足早に場外馬券売り場に向かう。)
(カウンターで緊張した表情を見せつつ、枠連「1-5」の馬券を100円分購入。)
松川
「…よし、これでいい。」
シーン:1987年4月12日 第47回桜花賞 当日
(松川永史が自宅のテレビで桜花賞の中継を見ている。1着マックスビューティー、2着コーセイ。枠連「1-5」的中。)
(松川の目の前で「枠連 1-5 570円」の文字が表示される画面に釘付けになる。)
松川
「やった…!1-5が本当に来た…。」
松川
「…電車賃を引けば赤字か。でも…この感覚は間違ってない。次も、絶対に勝てる…!」
(松川の表情には、これまでになかった自信と確信が浮かんでいる。)