2023年 春 高蔵寺駅前 交番
シーン設定
春日井市・高蔵寺駅の交番前。夕暮れ時で、柔らかい日差しが差し込む中、駅前は人通りもまばら。高校生のあおいが落とし物のカードケースを手に、交番へ向かう。
(交番前、あおいがカードケースを差し出している。)
警察官
「これは…ありがとうございます、ちゃんと届けてくれて。高校生のお嬢さん、偉いね。」
あおい
「いえ、見つけちゃったので…。すぐに届けたほうがいいかなって思って…」
(そのとき、後ろからスーツ姿の男性がゆっくりと歩いてきて、交番の前で足を止める。)
松川永史
「あ、もしかして…そのカードケース…私のものですか?」
(あおい、振り返り目を見張る。松川はヴェルサーチのスーツを着こなし、眼鏡をかけた大人の雰囲気を漂わせている。)
あおい(心の声)
「えっ、すっごいカッコいい…こんな人が持ち主だったなんて…」
警察官
「そうですね、免許証の名前も一致してます。こちら、落とし主の松川さんです。」
(松川があおいに軽く会釈をして、柔らかな微笑みを見せる。)
松川永史
「ありがとう。君のおかげで助かったよ。名前、聞いてもいいかな?」
あおい
「え…あ、あおいです。高校生で、特に何もしてないんですけど…その…」
松川永史
「あおいちゃんか。いや、本当に感謝してるよ。もしよければ、今度あらためてお礼をさせてもらいたいんだけど、連絡先を教えてくれないかな?」
(あおい、驚きつつも、どこかぼんやりした表情でスマホを取り出す。LINEのIDを交換する。)
あおい(心の声)
「こんなことってあるの…?私が、こんなイケメンとLINE交換するなんて…」
(ID交換を終えて、松川が微笑む。)
松川永史
「ありがとう。改めてお礼するから、楽しみにしてて。」
あおい
「は、はい…」
(松川はもう一度軽く会釈し、颯爽と去っていく。あおいはその後ろ姿をただ見つめたまま、しばらく動けずにいる。)
あおい(心の声)
「夢みたい…さっきの、本当にあたしが体験したの…?こんなドラマみたいな出会い…」
(あおい、ぼーっとしたまま駅のベンチに座り込む。周囲の景色も視界に入らない様子で、たださっきのことを繰り返し思い返している。)