あおいの憂鬱
高蔵寺スープリームコートタワーレジデンス - 最上階 松川永史の部屋
(広々とした窓からは、遠くに名古屋駅のツインタワーがくっきりと見える。あおいはダイニングのテーブルで、松川永史が淹れてくれたアイスミントティーを飲んでいる。)
あおい
「こんなおしゃれな飲み物、飲んだことないなぁ…」
(ガラス越しの景色にうっとりしながら、アイスミントティーを一口飲む。松川が向かいの席からあおいを見守っている。)
松川永史
「模試の結果すごいじゃないか。全国70位って、東陵の誇りだね。」
あおい
「…そうなんですけどね…」
(言葉を続けようとするが、あおいはふと視線を落とす。)
あおい(心の声)
「ほめられて…うれしい。松川さんにすごいって言ってもらえて、本当にうれしい。でも…」
(ふと顔を上げ、松川を見つめる。)
あおい(心の声)
「あたしが東大に受かったら…松川さんともう会えなくなるかもしれない。そうなったら、いったい何のために頑張っているのか…」
(考えが頭をぐるぐる回り、複雑な思いが顔に浮かぶ。)
(沈黙の中、ふいに松川が口を開く。)
松川永史
「今度の土曜日、空いてるかい?」
あおい
「えっ?…大丈夫ですけど…何か?」
松川永史
「行こう。」
あおい
「行こうって、どこへですか?」
松川永史
「東京だよ。」
(その一言に、あおいの目が驚きで見開かれる。)
(松川の真剣な表情と、穏やかな眼差しに、あおいはしばし言葉を失う。)