2025年3月10日 午後 高蔵寺スープリームコートタワーレジデンス
シーン:2025年3月10日 午後 高蔵寺 路上
(あおいは合格の興奮を抑えきれない様子で高蔵寺スープリームコートタワーレジデンスへ足早に向かっている。スマートフォンを握りしめ、何度もLINEの画面を確認する。)
あおい
(自分に言い聞かせるように)
「どうして既読がつかないの……?松川さん、絶対気づいてるはずなのに……。」
(高蔵寺スープリームコートタワーレジデンスに到着。息を整えながらエントランスでインターフォンを押す。)
あおい
「最上階……松川さん……。」
(数回呼び出してみるが、応答はない。)
あおい
(不安そうに)
「どうして……?何かあったの……?」
(背後から声がする。)
男性の声
「あおいさん、ですね。」
(驚いて振り返ると、左腕に高級そうな腕時計を巻いた見覚えのある男性が立っている。)
あおい
(困惑して)
「あなたは……。」
寿司職人
(微笑みながら一礼)
「お久しぶりです。以前お世話になった寿司職人です。」
あおい
「寿司職人さん……!お久しぶりです。でも、どうしてここに……?」
寿司職人
(落ち着いた口調で)
「松川さんはもうこのマンションを引き払われましたよ。東京のマンションも。」
あおい
(唖然として)
「えっ……。じゃあ、松川さんは今いったいどこにいるんですか?」
寿司職人
(首を横に振りながら)
「それは私にもわかりません。ただ……3月10日の午後、あなたがここを訪ねてくるはずだから、これを渡してほしいと頼まれまして。」
(寿司職人はジャケットの内ポケットから一通の手紙を取り出し、あおいに渡す。)
寿司職人
「はい、どうぞ。」
(あおいは手紙を受け取り、立ち尽くす。震える手で封筒を握りしめながら、言葉を失う。)
あおい
(小声で)
「松川さん……どうして……。」
寿司職人
(苦笑して)
「全く、人使いが荒いですよね。手紙を渡すためだけに東京からここまで来させるんですから。」
あおい
(目を見開いて寿司職人を見つめる)
「……。」
寿司職人
(時計を軽く指で触れながら)
「まあ、パテック・フィリップ欲しさに引き受ける私も私なんですが……。」
(寿司職人は柔らかく笑い、あおいを残してゆっくりと立ち去る。あおいはしばらく動けないまま、手紙を見つめ続ける。)
シーン終了