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第16話 銀

この物語は小さい時から僕の心の中にもうひとつの世界として描いていました。

雑な文章にはなりますが僕の心の中にずっと秘めていた世界を誰かに見せることが出来ればと思います。

「腹の傷…まだ痛む?」

「痛いけどまあギリ耐えれるくらいかな」

元いた教室へ戻り食料の入ったカゴを置いた。

今は傷の痛みが少ないが、痛みが増してきている気がする


「せっかくの食料盗られないように気をつけなよ」

焔はそう言って立ち上がり、教室を出て行こうとする。

「おい待て待て、お前も背中に大怪我負ってるだろ、どこに行くんだよ。1人じゃさすがのお前も危ないって。それに僕1人だと襲われても太刀打ちできないんだけど…」

「んーそうだね……食事…かな?それに背中の傷はもう塞がってるよ。沙耶と戦った時に血を少し奪ったからね」

そう言って僕に背中を見せた。

服が破れ、真っ赤に染っているだけで肌には傷一つない。

焔が言う食事は誰かの血を摂取することなのだろう。

焔が応急処置してくれたとはいえ、致命傷を負っている僕じゃ餌として役不足なんだろうか。


「この缶詰食べるのじゃダメなのか?」

「僕にとってそれは嗜好品かな。それを食べても栄養は摂取できない」

血でしか栄養を得れないのか。なんだかそれはそれで生きづらそうだ。

しかし焔も体調が万全では無いはず。

もし戦いを避けられないのだとしたらかなり危険な状況になるはずだ。

だからと言って僕が何か出来る訳じゃないけど…


「着いて行くって言ったら嫌か?」

僕の言葉に焔は困ったような顔をした。

「いや、今の春也の身体じゃ動くのすら危険だし、グロいのを沢山見ることになるよ?」

「これから戦う機会が増えるならグロ耐性つけたいし、それに今のお前の体調じゃ心配だわ」

「どの口が言ってんだよほんとに……」

焔は困ったように苦笑いした。

「僕の事を心配してくれるのはありがたいんだけどさ、春也に何が出来るって言うの…?春也が近くにいる方が戦い辛いよ」

「でも、ここでじっとしててもこの世界のことなんて何も分からない。お前が情報を出し渋るなら自分の目で見て触れて帰る方法を探すよ」

「はぁ…………」

焔は短いため息をついた。

「分かった、勝手に着いてくればいい。僕は忠告した。死んでも知らないよ」

そう言って焔は教室の扉を開けた。

僕は食料の入ったカゴから1つだけ缶詰を手に取りポケットへ入れた。

貴重な食料が奪われないように、カゴを教卓の下へ隠した後、歩みを進める焔の後へと続いた。


焔は周りを警戒しながら歩いている。

1匹の飢えた獣が獲物を探しているみたいに見えて、なんだか不気味に思えた。

焔は人なら無差別に襲うのか?それとも自分にとって都合の悪い人だけ襲うのだろうか?

前者ではないことを祈るしかない。恐ろしい存在であるとは言え普通の人間みたいに感情があって会話ができるんだ。そんな焔が無差別に人を襲うのは見たくない。きっと良心がある、そうであってくれ。

考え込んでいたせいで焔が立ち止まったことに気づかなかった。

「いてっ………!」

立ち止まった焔にぶつかってしまった。目の前には下へ続く階段がある。

「おい……どうした?…何かいるのか……?」

「近くにいるね………もう僕達に気づいてる」

その言葉を聞いて肌が一気に粟立った。

僕は手で腰に忍ばせた包丁を探った。しかし包丁がないことに気づく。そうか、沙耶さんに刺された時に失くしたのか。

「離れとけ、邪魔になる」

今の無防備な僕じゃ何も出来ないどころか邪魔になるのは明解だ。

焔の言い方にむっとしたが今はその言葉に従うしかない。

僕は距離をとるように後ずさりした。


ふと足元に違和感を感じ、足元へと視線を向けた。

知らず知らずのうちになにか液体のようなものを踏んでいた。

「何これ…………銀色の水…………水銀………???」

金属のような光沢のある液体が足元に水溜まりを作っていた。

呆然としていると、突然銀色の水溜まりが形を変えて僕の足を絡め取った。

「うわあああ!?何これ!?」

足を絡め取った金属のようなものは伸びて木のような形へと変化した。

抵抗も虚しく、僕はそのまま宙吊り状態になった。


「…………ほんとに世話が焼けるなぁ!」

焔は自分の手首を噛み切り血をナイフへと変形させて握りしめた。

「なーんだ、春也くんこの子と行動してたんだ〜」

ふと僕の背後から声がした、なんだか聞き覚えのある声だ。

声の主が僕の前へと歩み出る。毛先の赤い髪、焔よりも暗い赤の瞳。

「零………!」

「まだ会って2回目なのに呼び捨てにしてくれるんだ、仲良くなろうとしてくれて嬉しいよ。でもね…この子と仲良くしてるなら、僕はあんまり春也くんと仲良くなりたくないなぁ」

こっちを見てにやっと笑う。笑顔の形こそは初対面の時から変わらないものの、僕を写したその目は殺意でさらに赤く染まっているように見えた。


「お前が狙ってたのって…焔だったのかよ………!」

「焔ねぇ……君、いい名前貰ったじゃん。随分と友達ごっこにご執心だったみたいだね」

零はゆらりと不気味な動きで焔の方へ向き直った。


「なんで焔の事狙ってるんだよ!!そんなに焔を捕まえることに価値があるのかよ!!」

「価値ねぇ………まあ間接的にはあるかな。」


銀色の液体が僕の足を離した。

受け身を取れずに僕の体はドサッと地面へ叩きつけられた。

「春也くんさ…こいつに脅されて着いて行ってるだけでしょ。僕なら助けてあげられるけどどうする?」

くそ…………否めねぇ。

零も特殊な力を持ってるならある程度戦えるのだろう。零について行けば守ってもらえるのかもしれない。

でもだめだ…焔は僕のこと友達だと思っていなくても………

「そうかもしれない…………でもなぁ…………利害が一致してるからこそ信用できる関係もあるんだよ!!」


──僕は焔と友達だ…!


「そっか〜……じゃあ仕方ないけど殺すね」

零の周りに銀色の液体が浮かび上がった。

一気に殺気が押し寄せてきた。

これやばい、本当に殺される。


「やれるもんならやれよ」

突然目の前に赤い壁が現れた。

銀色の液体は針のように形を変え、僕を襲った。

しかし甲高い音を立てて赤い壁に全て弾かれた。


「わっ!!!!!なんだこれ………」

赤い壁が溶けるように崩れた。

焔の周りには血が水溜まりのように撒かれていた。


溶けた壁の先に、焔が零の首を絞めあげているのが見えた。

一瞬の出来事で僕はまたもや頭が混乱しそうだった。

お読み頂きありがとうございます。

初作品ですので至らない部分が目立つかと思いますが楽しく書いて行こうと思います。

少しでも続きが気になると思ってくださった方はブクマ、評価して頂けるとモチベになります。

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