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第15話 親しきナイフ

この物語は小さい時から僕の心の中にもうひとつの世界として描いていました。

雑な文章にはなりますが僕の心の中にずっと秘めていた世界を誰かに見せることが出来ればと思います。

「なんか………建物とか綺麗だし、まるでさっきまで営業してたみたい」

スーパーの中に入ると涼しい風が肌を撫でた。

空調の機械もずっと点いているらしい。

電気代大丈夫か…いや、この世界ではそういうの気にしなくても電気や水道は機能してるんだったな。ほんとに不思議な世界だ。


「すげぇ………ほとんどの食べ物が荒らされてる」

食品コーナーには空になったゴミや腐った食べ物が散乱している冷蔵ケースが並んでいた。


「缶詰とかなら賞味期限とか気にしなくてもある程度食べれるだろ」

そう言って焔は鯖の味噌煮の缶詰と味つきの鳥レバーの缶詰を持ってきた。

「鶏レバーでさっさと血を作れってことか?笑」

「たまたま手に取ったのがこれだった」

「偶然にしてはだいぶ出来すぎてるな」


缶詰のコーナーをもう少し見ようと思って焔に着いて行ったが残っていたのは瓶のラー油とニンニクのチューブ以外何も残っていなかった。


「この2缶だけか…………渋いなぁ…」

「これ食ったらいいんじゃない?あ、でもこれ食った後近寄らないでね。臭いの嫌だから」

焔はそう言ってニンニクのチューブを手渡してこようとする。あほか。

「ガチで言ってるのか冗談なのかわからんなぁ……」

「冗談に決まってるだろ、ばか」


ふと視界の端にバックヤードへの入口を見つけた。

「なあなあ焔、バックヤードがまだ荒らされていなければ宝の山なんじゃね?」

「強盗が板に付いてきたね。いいよ、行こうか」

失礼な。こういう状況なら仕方ないだろ。

焔の言葉で少し躊躇したが仕方の無いことだと自分に言い聞かせながら扉を押した。


扉を開けるとお菓子や缶詰の箱が積まれていた。

思惑通り、バックヤードはほぼ荒らされていないようだ。


「みんな馬鹿じゃん、めっちゃ食べ物余ってるし、バックヤードこそ見ておくべきだろ」

そう呟きながらお菓子が入っているダンボール箱を開けた。

パッケージには光沢のあるきのこの形をしたチョコ菓子のイラストが描かれている。

「焔もこれ食べるか?」

「僕は甘いものは嫌いだ」

我儘なやつめ。こんな資源が不安定な状況でよくそんな我儘が言えるな。


「そういえば、焔が吸血するのって食事と同意議なのか?それとも食事は別?」

「吸血は食事と同じ。血を飲んだら空腹感は無くなる」

焔は缶詰を手に取りながら答えた。

手にはまた鶏レバーの缶詰が握られている。

「お前…………ほんとレバーばっかり食わせようとしてくるな…」


近くに買い物かごを見つけ、缶詰とお菓子を詰め込めるだけ詰め込んだ。

「これだけあればしばらく持つだろ。無駄に貪り食うなよ」

「こんな状況でそんなに食欲湧かねぇよ」


焔は両手で買い物かごを持った。両手で随分重そうに持ち上げている。

「おぉい………大丈夫か?」

「………そんなに心配ならお前が持て」

ほんとに非力なんだな。沙耶さんの時と言い、化け物の時と言い、焔が戦ってる時はそんな非力さなんて感じないのに。

カゴを持ち上げると僕の力で余裕で持ち上がる程度の重さで驚いた。


「そういえばさ、沙耶さんが言ってた"最後の一人になる"ってどういうことなんだろう?最後の一人になってなにかいいことでもあるのか?」

「……………………………」

焔は僕の疑問を無視して歩き出した。

「またそうやって逃げるのか?教えろよ、僕が生きてここを出るためにも情報が要る」

「………………はぁ」

焔はため息をついて面倒くさそうに頭をガシガシと搔いた。


「沙耶は春也がここに来るよりずっと前にこの世界にいる。他にも春也より先に来てしばらく生活してるヤツらは大勢いるんだ。そういったやつがだんだんと派閥を作ってそれぞれの目的を果たすために暴れたり、殺したりして回ってる。沙耶もそのうちの1人だろう」

「………あれ?でも僕が目を覚ました時に隣に倒れていたのは………?それに派閥って複数人だろ?最後の一人になる事って辻褄が合わないと思うんだが」

「僕は春也が目を覚ました時には居合わせてないから分からないけどさ……周りから『蠱毒』って呼ばれている派閥がある。かなり過激な派閥で名前が知れ渡ってる。沙耶は恐らくその1人なんだと思う」

蠱毒………色々な種類の毒虫をひとつの壺に閉じ込めて殺し合いをさせ、最後に生き残った虫を使って呪いをかける呪術だっけ。

名前からしてどんな派閥か想像が着く。

他の派閥を殲滅した後に仲間内でまた殺し合いをしてこの世界で最後の1人が生き残るって感じか。


「春也が求めてた情報はこれで全部か?もういいか?」

焔は白い髪を手で梳きながら深いため息をついた。

「もう一個だけ。焔はなんでそんなに情報を話したがらないんだ?」

「………そりゃ、誰が裏切るか分からないからね。裏切られるかもしれないやつに情報を渡すのは気が引ける」

なるほど…焔はそんな風に思っていたのか。

勝手に距離が縮まって友達になれたと思い上がってたみたいだ。

いや、でも逆も然りか。焔が僕を裏切った時は恐らく終わりだ。ほぼ確実に命を落とすだろう。

焔という強い味方を手に入れて安心していたが身近な人間が1番の脅威になる可能性もあるんだ。


「こんなこと言ったからって裏切っていい訳じゃないからね。僕のこと裏切らないでね。」

真剣な顔が嘘だったみたいに柔らかい笑顔になった。

なんだか、この笑顔も今後安心して見る事ができなくなってしまった。

どうしようもない気まづさが2人の間を流れていた。

お読み頂きありがとうございます。

初作品ですので至らない部分が目立つかと思いますが楽しく書いて行こうと思います。

少しでも続きが気になると思ってくださった方はブクマ、評価して頂けるとモチベになります。

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