第14話 臆病な捕食者
この物語は小さい時から僕の心の中にもうひとつの世界として描いていました。
雑な文章にはなりますが僕の心の中にずっと秘めていた世界を誰かに見せることが出来ればと思います。
腹の傷は痛むが焔が処置をしてくれたおかげで大きな体調の不調は無い。
おかげで歩くことに支障は無かった。
焔に手を引かれ、ゆっくり歩きながら10分ほど経った。
道中、焔がこちらを振り向くことは一度も無かった。
しばらく歩いていると、少し先にスーパーらしきものが見えてきた。
「おお、こんな近くにスーパーがあったんだ」
色々な物資を補給できるという喜びに浮かれて焔よりも歩が早くなった。
突如、焔は僕の手を離し歩みを止めた。
「ん…………?どしたの?」
焔は微かに体を震わせている。なにかに怯えてるのか?
「大丈夫か……?」
僕は再び焔の手を握ろうと手を伸ばした。しかし避けられてしまった。
「ごめん…………今は近づかないでくれ」
「急にどうしたんだよ、焔らしくないな」
なんだかむっとしてしまって、無理やり焔の手を握った。
焔は目を見開いて顔を上げ、握った僕の手をぱっと振り払った。
「頼む……!触らないでくれ」
今まで見た事のない焔の怯えたような表情に戸惑いを隠せない。
「お前ほんとにどうしちゃったんだよ…沙耶さんの時からなんか変だぞ」
「ごめん………店には1人で入ってくれ…おそらく中には誰もいないから大丈夫…僕はここで待ってるから」
様子のおかしい焔を放っといて行けるわけが無い。
僕は黙って焔の傍から動かなかった。
「は…………?何してんの?行けよ」
「こんな様子のおかしいお前を置いていくほど僕は薄情じゃないよ」
「え………いや………ほんとに……」
「お前が何を怖がってるのか知らないけど、例えお前が捕食者とはいえ心配にはなるよ」
焔はきょとんとした顔で僕の顔を見つめていた。
焔が何を怖がっているのか分からないまま1人になるのは気味が悪いし…何より心配が勝ってしまう。
「別に…心配なんかしなくたって…………」
焔はそう言いながら僕の目を見た。
僕が何も言わずにしばらく焔の傍を離れないのを見て焔は根負けしたようにため息をついてその場にへたり込んだ。
「まだ君を殺したくはない」
「え?何?もしかして僕結構命の危機だった???」
焔は僕の問いに対して首を縦に振った。
「血が足りない時は自分を抑えられなくなるかもしれない。実際に部室棟で春也と別れた後、僕は人を1人殺してる。殺した後、血を吸うだけにしておこうと思ったんだ。でもさ…………」
焔は言葉を詰まらせた。
何か言いにくいことを僕に話そうとしてくれてるんだな。
「もういいよ、これ以上は話さなくても」
そう言って僕は焔の手を両手で包んだ。
「お前…馬鹿…やめろ!!」
焔は手を引っ込めようとするが僕は強く強く握って離さなかった。言いたくないことを無理に言わせるつもりは無いけど、こういう時に逃げる癖は気に入らない。
今回ばかりは絶対逃がさない。
「逃げるな。自分の手を見てみろ、焔は僕を殺さない。むしろ僕を傷つけないように自分から離れていこうとしてる」
焔は不安そうな表情で僕の目を見つめていたが、何かが気に入らなかったのか、むっとした表情に変わった。
突然僕に覆い被さるように焔が飛びかかってきた。
いきなりの事で僕は避けることが出来ず、焔に押し倒される形で地面へと倒れた。
驚いて閉じた瞼を開くと、獲物を狙う獣のような赤い瞳がすぐ目の前にあった
「僕がこうやってさ、今みたいにお前のことを襲って……お前のことを殺して食べても同じことが言えんの?」
腕に食い込む指先が痛い。
「それでもお前は俺のことを怖いと思わないのか?」
「別に…怖くないよ、今の行動だってお前の優しさだろ。僕が傷つかないように警告してくれてるだけだろ」
そう言って僕は焔の身体を跳ね除けた。
焔の力はそこまで強くない。僕の力で簡単に振り払うことが出来た。
「焔……僕は餌としてしかお前と関われないのか?もっと違う形で関わっちゃダメなのかよ?」
焔は顔を伏せたまま黙っている。
「黙ってちゃ分からないんだよ。なぁ焔、捕食者だろ?たかが1人の餌から逃げるなよ。ダサいんだよ。」
「しつこいんだよ!!お前に何が出来る!?分かったような事言いやがって…この世界のことも僕のことも何も知らないくせして偉そうに!!」
一瞬だったが、焔の冷たい仮面が外れたような気がした。
今の叫びは本音混じりだろう。
焔は一瞬苛立ちを顔に出していたが、すぐさまいつも通りの無表情に戻った。
「あまり深く探ろうとしないでくれるかな。迷惑」
さっきとは打って変わって静かな声色だった。
「あーあ、また殻に籠っちゃったか」
焔は確実に心に何かを隠してる。
それを全て聞き出したいわけじゃない。だけど全てを焔が背負うのも違うと思う。
「……ほら、早く行くよ」
焔は僕の背中を押してスーパーへ歩を進めた。
それだけで、少し焔の心に近づけたような気がして悪い気分ではなかった。
お読み頂きありがとうございます。
初作品ですので至らない部分が目立つかと思いますが楽しく書いて行こうと思います。
少しでも続きが気になると思ってくださった方はブクマ、評価して頂けるとモチベになります。




