第二章〜展開?
宜しく御願い申し上げます。
『パン』
『どか』
そんな文章、というか単語、というかオノマトペらしき文字がひたすら続いた。
『ぱきん!』
━━うわ、今度はなんの音だ?ポッキーでも割れたか?ガラスか?それとも何事かが起きて人の骨でも・・・。
唐突な新手のオノマトペらしきの出現に、私は戸惑い訳をわからなくするしかなかった。
ひと区画ごとに文章に改行がなされるのは、いわゆるラノベ風とも言える躍動感というか、時間経過の感覚を文字の配置によって感じさせられるという狙いが見えて良いとも思うのだが。
いかんせん、場面の描写、心理描写がまったくないので、この作品の中で一体何が起き、どういう展開でストーリーが進んでいるのか、予想すらできないのであった。
それでも、何らかのストーリーを知るための手掛かりが書き手から提供されるのであろうと希望を持ちつつ、新たな展開を待つ気分で読み進めた。しかし、
『かっきーん』
━━うわ!お次はなんの音だ?金属バットでボールを打った音か?これは、野球を描いた小説だったということか?それも、木製ではなく金属バットを使うということは高校野球なのに違いあるまい。
漫画の『巨人の星』や『タッチ』みたいなものか?
いわ、しかし、そしたらバキとか、ぱし、とかはなんの音だというのだ?
━━わからない。
わたしにはわからなかった。━━もしかしたら、お笑いのオリエンタル・ラジオのネタのかっきーん、だった?
わかり得ない。
と、その時だった。一生懸命読み耽るフリをしている私に母親が話し掛けてきたのだ。
「先生、いかがでしょう。息子の、その、御作品は。はっきり仰ってくださいまし。他息子には文才はありますの?」
いちいち母親が付き添うように読んでいる傍らに鎮座しているというのもウザかったが、母親は何しろ美人であったし、先生などと持ち上げられるのも悪い気はしなかったので私は微妙な笑みで返した。
正直、自分に文才があるとも思ってないし、他人の書いた小説を添削、評価するなど初めての経験だ。私は極めて戸惑い、しどろもどろになってしまった。
「あ、え、っと。この御作品は、タイトルは何でしたっけね?」
私はわざと大げさに原稿用紙の一枚目を捲ってみせ、思えばまだ確認さえしてなかった作品タイトルを見てみたのだ。
有難う御座いました。