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錬金術師の技術革命  作者: ちゃぷた3
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『錬金の書』第1章第8節 エリナの協力

ガストンの下で修行を重ねるリライ。日々の学びを通して、錬金術の奥深い知識と技術を体得していった。単なる錬金術を超えて、あらゆる自然の法則や思想まで教わる贅沢な日々だった。


一方でエリナは、リライの活動に協力する形で、傍らに寄り添い続けていた。ガストンの屋敷にも時折足を運び、リライの様子を見守っていたのだ。


「ガストンさんのお陰で、リライもずいぶん大人になったわね」

リライが書物に夢中になる様子を見て、エリナはそうひと言つぶやいた。


その言葉を聞きつけたリライは、しょげた表情を浮かべながら答えた。

「そうだろうか...俺はまだガキんちょな所があると思うけど」


「ふふ、なるほどそれは分かるわ」

エリナは優しく微笑んだ。リライは仕草や言葉使いは大人びているものの、心の中では少年のような無垢さを残していた。それがリライらしさだと思えたのだ。


「だけど、あんたは間違いなく大きく成長したわ」

エリナはそう続けると、リライに近づいて手を添えた。

「あの薬の失敗の後、とてもショックだったでしょう。でも、あんたはガストンさんのお陰で立ち直れたのよ」


リライは少し考え込んだ後、小さくうなずいた。

「ああ、確かにな。あの時はエリナや、ガストン師に助けてもらったおかげで、この修行に打ち込めたんだ」


「そうそう。だからあんたは、立派に大人になれたと思うわ」

エリナの言葉に、リライは胸が高鳴った。ガキん坊だった自分が、錬金術の基礎を学び、賢者からすら一目置かれるまでに成長できたことを、改めて実感したのだった。


「ありがとう、エリナ。君がいるおかげで、道は間違えずにすんだよ」

「何をおっしゃいます。私だってあんたをサポートしているだけですわ」

エリナはリライの頭を撫でつつ、褒め称えた。


「それにしても、ここまでくると、錬金術にもっと可能性を感じるわね」

続けてエリナはそう言った。実際、ガストンの教えを受けるうちに、錬金術の奥深さが少しずつ見えてきていた。


人々を癒す薬はもちろん、生活に役立つ道具の製造や、特殊な物質の生成まで、錬金術の可能性は無限に広がっていた。


「そうだな。この先、できることは計り知れないかもしれないね」

リライは夢を膨らませながら、一冊の本を手に取った。ガストンから学んだ錬金術の書であった。


その書を解読しつつ、リライは錬金術の有用性や可能性を想像した。ページをめくるたび、新しいアイデアが膨らんでいく。


「わあ、この技術で道具を作れば、町の人の役に立てそうだね」

「ほんとうに。道具は携帯に便利でしょう」

「そうと決まれば、早速実験に取りかかろうか」

「いいわね。私も手伝うから」


二人して夢を語りながら、ついには実践に移ることを決めた。ガストンの書を参考に、生活に役立つ道具の製造を試みていくことにした。


そうしてまた日々、ふたりで実験に没頭するようになった。リライは錬金術の知識を応用し、道具の設計図を考案する。一方でエリナはその補助をし、道具の組立や細部の手伝いをした。


互いの役割が定まり、2人の活動はスムーズに進んでいった。時折ガストンも様子を見に来ては、二人に助言を与える。賢者の薫陶を受けながら、リライとエリナは着実に力をつけていった。


そうした検証を重ねる日々の中で、ついに大きな成果が生まれた。それは、万能ナイフと呼ばれる切れ味抜群の錬金製品だった。


「できた!このナイフなら何でも切れるはずだ!」

リライが喜び勇んだ様子で錬金術ナイフを手に取ると、ゆっくりとナイフを動かしてみせた。


「わあ、すごい切れ味ね!」

エリナも目を輝かせ、感嘆の声を上げた。


ナイフを持ったリライが、様々な物体に試し斬りをくわえてみる。


まずは木の板を薄く切り裂いた。ナイフはまるで熱した包丁で切るかのように、滑らかに板を両断した。


次に石を切ってみた。普通のナイフなら決して切れないはずの石すら、あっさりと切り裂かれた。


「すごい...これは本当に万能のナイフだわ」

エリナが呆気にとられた様子で、目を見開いた。リライもまた、この驚異的な切れ味に感動の色を隠せなかった。


二人で長年検証を重ねてきた賜物であり、錬金術の先端技術がついに完成したのだった。


「よし、町の人々に見せてあげよう」

リライはそう言って立ち上がると、エリナに手を差し伸べた。

「行こう、エリナ。錬金術の輝かしい成果を、みんなに見せつけてやろう」


エリナはリライの手を取り、力強く頷いた。


「ええ、行きましょう。私たち二人の力で、この町に革新的な技術をもたらすのよ」


二人は熱い眼差しを交わすと、万能ナイフを携えて、ガストンの屋敷を出た。そしてラトビレッジ中に、錬金術の偉力を示すべく歩き出したのだった。

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