8-87
扉を開ける。洞穴の外は、鉄で肉や骨を打ち砕き、切り裂き、突く音と共に、至る所から悲鳴が鳴り響く凄まじい場所だった。
「シロ!」
前方には、シロが半透明な人型の魂の一人を追い立てて、こちらにやってくるところだった。追い立てられた半透明な人型の魂は、よく見ると、右手に高級そうな金の腕時計をはめている。
私のすぐ傍までくると、両膝に両手をつけて項垂れた。まるで、ぜえぜえと息を整えているかのようだった。
「シロ? ああ、この人が広部康介!」
「ニャー」
シロが首を垂直にして、後ろ足だけで立ち。広部康介だろう人型の魂を、チョンと右前足でつついた。
なんて……。
賢い猫なのだろう。
私一人では、ここ広大で凄惨な大叫喚地獄で、広部康介を探せずに迷い途方に暮れていただろう。
広部康介の人型の魂は、金の腕時計を外して、こちらに差し出した。
「え? 持って行けというのですか?」
人型の魂が頷いた。
広部康介は、何か思惑かやってほしいことがあるのだろう。
私は高級な金の腕時計を受け取ると、シロを連れ、再び洞穴へ戻った。
多くの人型の魂が呵責による苦痛や苦しみで、大絶叫している場所で、広部康介は、私に最後に頭を深々と下げていた。




