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洞穴の中は、意外にも凍えるかのような寒さがあった。
辺りは暗く。前方の方からビュウビュウとした風が巻き起こり。いや、猛威を振るっていた。
風の音で、耳を傷め。耳を両手で抑えると、さっきまでの大汗の滴が、瞬時に凍る。私は、今度は肩に下げた布袋から、提灯を取り出すと、暖を取るとともに明かりを点けた。
「ニャーーー!!」
「あ!! シロ!」
シロが突然、真っ直ぐに暗闇の中で走り出したのだ。
この洞穴には、人魂がない。
明かりは、手に持った提灯だけだった。
それでも、私はシロが何かを、それも必死に探してくれるために走り出したのだと思った。
提灯片手なので、この吹雪の中。シロを追って、私は走ることができなかった。辛抱強くゆっくり歩いていると、やがて、洞穴の出口だろう。そこに巨大な扉が見えた。
扉の取手は、血で真っ赤に染まり。
おびただしい血が地面に流れていた。
ムッとくる血の臭いに、鼻をハンカチで抑えると、この扉の向こうには大叫喚地獄が広がっているはず。と、確信できた。
シロはどこへ?
ひょっとして?
「シロ! やーい!」
巨大な扉に呼びかけてみると、「ニャー」と微かだがシロの鳴き声が返ってきた。
そこで、自分の肩が震えていることに気づいた。ここからは、恐ろしい大叫喚地獄だ。血も凍るような呵責の場所。
だけど私は、火端さんを思い出して、勇気を振り絞り。ここにいても仕方がないので、扉をゆっくりと開けることにした。




