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真夜中の八天街は、ここへ初めて来た時と同じくらいに不気味だった。なんだか、ぞわぞわしてしまう。
そういえば、ここは八天街だったな。
地獄に日本で、もっとも近い街と呼ばれているんだ。
居酒屋などの飲み屋がたくさんある裏道を抜けると、八天商店街まで音星とシロと大通りを歩いた。ビュー、ビュー、と、いつまでも、まとわりつくかのような夏の生暖かい夜風が気味悪かった。
俺は何か不穏な気分になって、首を向けると、隣を歩く音星は、ピンクのハンカチで時折首筋を流れる汗を拭いながら、静かに歩いていた。シロは尻尾をピンと上げて、今は俺たちの先頭を歩いている。
「なあ、音星?」
「はい?」
「なんで、俺と妹のために八大地獄巡りをしてくれているんだ?」
「ええ。ええ。それはもういいんですよ」
「え?!」
「実は、家に帰る途中だったのですよ」
「はあ? ひょっとして、地獄からかい?」
「ええ。実家の青森県まで歩いていました」
「……」
「火端さん? 私、何か変ですか?」
「いや、凄くいいやつなんだな……きっと……」
「ええ……そうですよね」
「?!」
ザッ、ザッ、ザッ、と後ろからまるで、箒で掃くような音が聞こえる。
おや? と、思って後ろを振り返ってみようと思うと、音星が俺のTシャツの袖を握って走り出す。
「火端さん! 走って!」
「ひっ! お、おう!」
後ろには足のない変な怪物が箒で木の葉を掃いていた。
何がどうしても、不気味過ぎる。




