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「いや、八天街も暑いが。ここも暑いんだなあー」
「君は、駅から降りたら……そればっかりだよ」
俺は八天街と同じ暑さの銀座に驚いていた。東京そのものも初めてだ。空も同じ。野鳥も少し雰囲気違うけど、同じ……。雑踏は……八天街よりも多いかな?
ニャー、ニャー。
ニャー。
どこかから、猫の鳴き声がする……。
「あ! 火端くん! こっちだ!」
「うん?」
「いつも、ここにいるんだよ」
「何が?」
「ほら、いた!」
「あ!」
自動販売機の隣に、一匹の黒猫がいた。
こちらを見ては、スンスンと鼻を鳴らしている。
「確か、シロって名前だったね。火端くんの飼っている猫。そういえば、シロはここへ来たがっていたようだけど、なんとなくわかった気がしてきたよ。多分、シロはここら辺の出身なんだろう。なんだかねえ。古葉くんから飼い主が東京の人だって聞いたことがるからねえ」
「へえー、シロが? ひょっとしたら、あの黒猫はシロの親猫なのかな?」
「さあてね、けれど、きっと違うんだろうなあ。あの黒猫は、私が広部康介のビルを見て回った時にもいたんだよ」
「え? 谷柿さんって、ひょっとしてここに住んでいたの?」
黒猫の真後ろには、モダンな家がある。
「シロの飼い主って……一体? 誰?」
「さあてね、さあ、こっちだよ」
モダンな家の脇道を通ると、古いモルタル塗りのビルがあった。




