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俺は生まれて初めての救急車に乗って、八天病院へしばらく入院することになった。その間。音星に、おじさん、おばさん、古葉さん。谷柿さんに霧木さんがお見舞いに来てくれた。
「りんご剥こうか?」
「いや、バナナだろ?」
「あー、わかってないな。この場合はメロンだろ」
「いやいや、アイスなんてのもいいかもな」
「ええー、この場合って、桃の缶詰でしょ?」
みんなが一斉に、色々な食べ物を持って迫って来るので、身体が包帯でグルグル巻きの俺は青ざめた。
「そんなに食えないよーーー!!」
「あ、さっき。大福を食べてくれましたよ」
消毒薬の臭い漂う病室のベッドで、音星が取り繕ってくれた。
せっかくなので、音星と今後の話をすることにした。
俺はベッドから音星の方を向くと、
「阿鼻地獄は、もうすぐそこだ。でも、広部康介はどうして金の腕時計を音星に渡して来たんだろ?」
「さあ、でも。この金の腕時計は、これから先で、とっても重要な意味を持つと思いますよ」
「うーん……金の腕時計か……」
音星が静かに大福を箱から一個取り出した。
「火端さん。もう一ついかがですか?」
「いやいや、ここは俺のバナナがだな」
「あんた。ここはりんごさね」
「みんな。わかってないなあ」
「うーん。アイスは?」
「それより、缶詰でしょ」
「いや、いいって。いいって。俺はもう腹減ってないんだ」
俺は口を両手で押さえたい衝動に駆られた。
その時、メロン片手の古葉さんが、ふと。
「なあ、火端よ。覚えているか? あのテレビ番組のこと?」
「? テレビ番組?」
「ああ、その番組で広部康介は妹を自室で変死していたのを、発見したんだけどな。だが、確かなあ……。次の日のテレビ番組でやっていたんだが、実は犯人が広部康介自身なんだってさ」
「「えええええーーーー!!」」
古葉さんの言葉に、俺を含め。みんなが驚いた。




