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勇気と巫女の八大地獄巡り  作者: 主道 学


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はじまり

 キュルキュルと、真夜中のアスファルトを激しく摩耗するタイヤ。

 対向車のライトに映える大量の灰色の煙を吐き出し。

 片側二車線の道路を右へ左へと突っ走る。


 そんな危険な自動車が一台あった。


 白線もお構いなく走るその車は、ついに車体が大幅にひしゃげてしまった。


 対向車線を走る普通自動車との正面衝突だ。


――――

 

 テレビではちょっとしたトレンドだ。

 凄惨な酔っ払い運転による交通事故だった。

 片方の運転手は即死。

 もう片方は俺の妹だ。

 

 妹は軽傷だった。


 妹はその後、運転手の遺体をガードレールから投げ落として、飲酒運転や死体遺棄などのてんこ盛りの罪で指名手配された。まもなく、無残に首を吊った状態で発見される。


 だが、妹は酒は飲まない。

 いや、まったく飲めないのだ。


 誰かに無理やり飲まされたのだろうと俺は思った。




「弥生よ。なんでだろうなあ……」


 妹のお葬式の後、いつもの部活帰りの実家は、色んなものが変わってしまった気がするんだ。でも、急に玄関ドアが開いて、部活から同じ時間に帰ってくる弥生が「ただいまー、今日の空手の部活もしんどかったんだぜ。好きな先輩とは相変わらず進展なしだしな」とか、愚痴を言いながら、食卓へ向かって行く姿が目に浮かんだ。

 

 けど、気性は優しくて、友達想いで、だけど、学校では不良とよく間違えられていた弥生は、もう玄関ドアからは二度と帰ってくることはないんだ。


 俺はバスケットボールを持って、台所へ行くと、父さんはキッチンの椅子に座って、また下を向いていた。


「……はあ、弥生にも色々あったんだろうなあ……勇気。何度も言うが、母さんのところへ行ってやれよ」

「無駄だって……無理だって……。って、父さんはそればっかだな」


 お葬式の時に、お経を唱えていた坊さんが、近所の人達が集まっている庭で、一人しんみりと呟いているのを、偶然耳に挟んだ時から変わってきたのかな。


「なんとも悲しい話だねえ……隣のお寺でいつもニコニコしていた坊さんの。たった一人の息子さんが被害にあったようで。しかも、轢かれた後、しばらくは息があったていうじゃないか、そう確かに病院で聞いたんだけどなあ。ここの家の妹さんはきっと……」


 母さんは、俺にすら顔を見せてくれなくなった。まるで、他人を全て遠ざけてしまっているようだ。父さんは父さんで、ずっとふさぎ込んでいるかのように、下ばかり向いている。

 

 庭にいたお坊さんの独り言の中には、きっと、俺の錯覚かも知れないけれど、妹が「地獄へ堕ちてしまったのかも知れない」という言葉があった気がした。俺はそれを聞いて、居ても立っても居られなかったんだ。


 だけど。

 俺はそんなはずはないよ。

 妹は事故を自分から起こすような奴なんかじゃない。


 だから、今でも思っているんだ。

 妹は何かの事件に巻き込まれたんだ。


 そう、冤罪だと思った。


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