(19)『地下生活者の記録』
(19)『地下生活者の記録』
㈠
今日も、今日とて、今日である。そんな、当たり前のことを、実行するために生きるという所業は、地下生活者にとっては、苦労のないことなのである。苦労のないこと、そうである、全く、苦労のないことなのである。
どういうことなのかは、もうほとんどの人も勘づいているかもしれないし、そうでないかもしれないが、少なくとも俺にとっては、何故だかよく分からなかった。一に、それは、人と会わないことが、苦労を跳ね飛ばす訳である。
㈡
人と会わないことは、確かに苦労はないだろう。そして、金も掛からないということだから、益々、苦労からは遠ざかって行くのであって、それこそ、地上が地獄、地下が天国、みたいな、感じかなあと、思ったりするのだ。
しかし、デーモンは、地下をも攻撃することがある。それらは、記録され、地上の破壊神の、云わば戦争の記録として、映写機に残るくらいの精度で、記録されるのだ。問題はあるまい。地下では、地上に攻撃することはしないのだから。
㈢
そうやって、こうやって、生きていくんだなあ、という風な、間隔とでも言おうか、ぼんやりとした未来に向けて、眼光を放つ自分は、決して地下生活者として、善人だと言える、という訳ではないかもしれない。恐らく、善と悪の中間くらいだろうか。
こうやって、物事を記録するのも、悪くないのである。そぅ、悪くないね。悪くなければそれでいい、って訳じゃないけれど、それでも、悪いよりは良いほうがいい。地下生活者として、このことも、記録しておこう。




