(18)『地下生活者の記録』
(18)『地下生活者の記録』
㈠
地下生活者として、地下生活が常態化すると、最早、地上も地下も、その分断が大き過ぎて、発狂しそうになるよ。無論、地下生活は、最高だがね。地上の空気よりも、淀んだ悪い空気、その空気が肺に合う、という訳なんだ。
何、おかしいって、そうだろう、俺は人生において、健康を求めているのではない、芸術を求めているのだから。であるからして、地下生活者の記録というものは、重要な位置を占めるはずだと、言い聞かせては、項垂れる。
㈡
それでも、一つ言って置きたい。俺は、地下生活者の記録を、誇りに思っているよ。そうなんだよ、当たり前だろ、そうでないと、こんなことやる訳ないんだ。頭がおかしいと思われることだって、侵害だね、自由意志が、ここには存在するから。
物事を派生させるとき、我々は言葉というものを使用するが、厳密にはこれは、記号と称されるものだ。記号を音質化したものが、言葉だ。だから、話が出来ない小説家は、文字という記号を使って、小説を地下で執筆する。
㈢
俺は訳がわからないんだ、物事というものがね。しかし、いいだろう、そんなテキストも、この地下生活者の記録の様なものだ。寧ろ、地下生活者の記録そのものがテキストだ。ちょっと何を言っているのか、分からなくなって来たね。
不都合という津法の中から、我々は様々を選ぶんだ。それは至極当然だろうよ。何度でも叫んでみろよ、地下生活者の記録、地下生活者の記録、地下生活者の記録、ってね。そのうちの、頭の混乱すら、記録すれば良い。




