(17)『地下生活者の記録』
(17)『地下生活者の記録』
㈠
流れる様な光線が、眩い日だった。東京へと向かう列車に乗ったのに、東京駅の一つ手前で、降りてしまったのだ、間違えて。歩いている係員にそのことを言うと、良く分からないので、階段を登って、事務所の人に言うと、次来る列車に乗ってください、とアシストを。
要は、本音と建前というやつなんだが、それを今思いだして、地下で記録している。本音と建前、建前と本音、簡単な様で難しい、難しい様で簡単な、詰まるところ、全てが迅速にうまく行けば、それに越したことはないのだ。
㈡
少し金の目処が立ってきたので、安堵という感じだが、まだまだ、安心は出来まい。いつ何時、何が起こるか分からないからである。それも人生ってやつさ、と傍観者は言う。昔習った、傍観者はいつだって、有利である。
それにしても、最強なる最悪という言葉は、神に向かって言いたい訳である。世界中に問題がこれだけあるというのに、神の沈黙と言ったらない。地下生活者の俺としては、地上での神の暴挙を、薄ら目で見ているんだ。
㈢
いとも簡単に、砂嵐の中、何かが壊れてしまうことは簡単だが、我々は立て直さなければならないのだ。世界を、世界を、神経が行き着くところの、摩耗した神経は、飾らない風景を狂わせる精神描写で、キリがないのだ。
それにつけても、俺を地下生活者から、さらに地下に落とそうとする人が居たら、俺はあきれ返るだろう。もう地獄は沢山だ、そう叫んだ時、ふと、地下に降りたのは俺だ、という盲点が、重要な記録になることは、間違いない。




