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(15)『地下生活者の記録』

(15)『地下生活者の記録』



劇的なのうのうとした、暮らしの中にある荘厳を、我々は、精神で感得する。地下生活者はまさに、そういうことを、というより、そういうことに、気を配っているのだから。であるからして、結果は結果、進化は進化である。

絶え間ない押し寄せる波の在り処を、その動態を模写して、浮世絵などでも、その波の姿は描写されてきた。これは、地上生活ばかりに居る我々には難しい問題だが、すぐ、そうさ、地下に入ってしまえば、簡単な原理なんだ。



幾度も幾度も、我々は世界を闊歩する訳だが、その実の意味などというものを、刻銘には知らない。知らないことが、知ろうとすることへと転化し、物事の定めの様に、世界を動かすのである。何、そんなもんだよ、と声が聞こえる。

だましだましの生活にも、小銭は居るだろう。地下生活者の記録では、そんなことも、記録しておきたいんだ。丁度、子供だった頃に描いた標的者が、また、俺が俺なる標的者として、世界に君臨するのを、自分で待つだけだよ。



俺の為体は、人々を困惑させ、やがて失望させるだろう。虚体である俺は、自分でもよく、自分がどう写るのか、良く分からない。その時の場所や温度や風景によって、姿形まで、変容してしまうんだ、陽が当たるからね。

地下生活者であるうちは、俺は誰にも見られないから、気にせず生活を運ぶんだ。地下生活者の記録として、地下生活者ほど便利なものはない。自由に動態し、時折、ライトを壁に当てては、自分に自分を重ね合わすんだ。

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