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大唐西域記演義  作者: 河谷守
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四 玄奘三蔵、五行山に至り孫悟空を配下とする

時を戻して玄奘三蔵に目を向ける。

大唐西域記によると、玄奘のルートは長安から西に向かい高昌国を経てサマルカンドに抜けるルートとなっている。

孫悟空が封じ込められた五行山がどこなのかは定かではないが、ここでは玉門関から高昌に至る途上と推察し設定する。

で、その五行山。麓の大岩に封印され500年を過ごした孫悟空が反省して丸くなったかというとそうでもなく、隙あらば抜け出して報復する気満々で英気を養っていた。

「そういや釈迦が500年後に徳の高い僧が通るから共をしろとか言っていたな。けっ、下らねえ坊主だったら頭からかっ食らってやるぜ」

と、そこへ折良く玄奘三蔵が遠くから白馬に乗って現れるのが中国古典の御都合主義。

「ぬ、何やらあの山から唯ならぬ妖気が立ち上っているな。悪さをする妖怪なら退治てくれようか」

おおよそ一般に知られる三蔵法師のイメージとはかけ離れたセリフを吐きながら、玄奘三蔵は山の麓に到達した。

「よう、あんた徳の高い坊さんなんだろ?こんなところに閉じ込められて500年も経ってんだ、助けてくれよぅ」

「ふむ、で、助けたは良いが拙僧を打ち殺し、再び自由の身となって好き勝手暴れ回るつもりなのだろう?そなたの目には野心がありありと宿っておるぞ」

「そんな事考えていませんでさぁ、ひひひ。お願いしますよぅ、助けて下さいよう」

「急に卑屈になって下手に出てくる輩を信用する阿呆もおらんものだが、どうしたもんかの」

玄奘がふと悟空の埋まっている岩の脇を見ると、悟空のあらましと経緯、今後の指針がご丁寧に書いてある。

「ほほう、そなた孫悟空と申すか。釈尊の慈悲に縋るために拙僧と天竺行きに同行するなら解放しても良いがいかがかな?」

「ところでこの岩壊せるのかよ、今まで何人か試したけど無理だったぜ?俺を助けてくれるなら天竺だろうが地獄だろうがお供してやるぜ」

「約束を違えなさいますなよ。さて、しばし目を瞑っていただきましょうか」

玄奘はすくっと立ち上がると、何の前準備もなく無造作に岩に気を込めた拳を叩きつけた。

「ちょっ!何?うわっ!イテ!イテテテ!ゲフッ!ゴゲゲッ!ギャァ!」

強烈な破壊音と共に地響きを立てて大岩が崩れ落ち、瓦礫の山に押しつぶされた悟空が埋まっている状態になった。

「おーい、生きてますかー?」

「そ、そう思うならもっと優しく出してくれよう」

悟空の手を引き物凄い力で瓦礫から引き抜く。

「ふむ、流石不老不死の大妖仙、簡単には壊れもせんの」

「俺じゃなきゃ死んどるわい!てか、今どうやって大岩割った?」

「どうって、内功を叩きつけただけですよ?」

ナンジャソレ

「気功の奥義で、貯めた気を一点に集中させる事で壮絶な破壊力を産むのです」

「さっぱり分からん。500年も閉じこもってる間になんか変なもん出来たんか」

「金庸の本でも読んでくださいよ」

あんまりな救出劇に悟空も毒気を抜かれてしまい、逆に面白そうだと興味が湧いてきた。

「俺は孫悟空。仕方ねえから釈迦如来をぶん殴りに天竺まで一緒に行ってやるぜ。で、あんたは?」

「拙僧は玄奘と申す。そなたが旅の供をするのであれば心強い、普通の人間だと皆逃げ出す旅路ゆえ、よろしく頼みますよ」

手を差し伸べる玄奘の隙を見て取り、悟空が不意打ちを試みる。

「そんな急に俺様がしおらしくなるわけねぇだろ!ぐべぇっ!」

殴りかかる悟空の拳を紙一重でかわし、玄奘の内功の篭った殺人アッパーが悟空を跳ね飛ばす。遥か空高く雲の上まで打ち上げられ、地面に叩きつけられるまでの間に悟空も敗北を悟った。

「すみません、大人しく従いますから連れて行って下さい」

「おや、もう終わりですか。では今後よろしく頼みますよ孫行者」

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