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大唐西域記演義  作者: 河谷守
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三 孫悟空、釈迦如来によりて石の下に捕らわる

孫悟空の処分を依頼された釈迦如来は、悟空に一つの勝負事を持ちかける。「あなたが私の右手のひらの上から逃げ出せたら、このまま自由にいたしましょう。しかしもし逃げられなければ、仏の法を悟るまで仕置きをいたします。」

実際にそれを受けねばならない理由も本来はないものの、調子に乗った猿でしかない孫悟空、まんまとその誘いに乗ってきた。

「面白え、俺が勝ったらついでにその辺の宝を戴いていくぜ?」

「お約束いたします。正々堂々、勝負いたしましょう。」

釈迦如来の余裕が鼻についてしょうがない孫悟空、普段以上に気負って勝負を急いてしまう。

「で?いつ始めんだ?俺はいつでも大丈夫だぜ?」

「こちらもいつ初めていただいても構いませんよ」

気が付けばニコニコと穏やかに笑う釈迦の掌の上に載っている。

「おう、お釈迦さんよ。ひとつ聞くが、何を使っても良いのかい?」

「ご随意に」

「じゃあ早速行かせてもらうぜ!」

悟空が指を鳴らすと、たちまち尾を引くひとちぎりの雲が現れる。悟空自慢の筋斗雲である。

「あばよ、お釈迦様よ。適当に宝は頂いていくぜ!」

声を残して飛び去った。

「おらおら!行くぜぇ!」

クルリと宙返りをするだけで十万八千里を走り抜けるという伝説にたがわぬ快速ぶりを発揮し、みるみる釈迦のニコニコ笑顔が遠ざかる。

空を駆け抜け山を越え、あっという間に百万里の距離を駆け抜け、とある山の麓までたどり着いた。

「ここまで来れば充分だろう。おーい、お釈迦様よぅ」

「何だね?」

「もうあんたの掌からは出ちまってるだろ?俺の勝ちだな」

勝ち誇る悟空に釈迦はニッコリと微笑みかけていう。

「よく見てください。それ、私の小指です」

「何だとぅ!」

見上げると、山と思っていたのは釈迦の小指の麓だった。

「ぐぬぬ・・・まだ逃げても良いのか?」

「もちろん構いませんよ。あなたの気の済むまでおやりなさい」

「ちっくしょう!必ず吠え面かかせてやるからな!」

それを言うと負けが確定なセリフを吐きながら悟空はさらに念を込め一気に数千万里の山谷を駆け抜けた。

流石に精も根も尽き果てて辺りを見渡すと、見たこともない土地のようだ。これなら大丈夫だろうと釈迦を呼ぶ。

「おーい、お釈迦さんよぅ!聞こえるかー!」

ふふん、流石にもう声もこないだろ?

「悟空よ、もう終わりかね?」

天上より呼びかけられ見上げると、始めと何ら変わらぬ釈迦のにこにこ笑顔が悟空を見下ろしていた。

「そこは丁度掌の真ん中あたりです」

ごごごごごと音を立てて、遥か彼方が持ち上がる。五本の指が見える。

「まだ、やりますか?」

にっこり。

愕然として悟空も負けを認めた。

「オイラの負けだ。煮るなり焼くなり好きにしやがれ!」

「そなたは煮ても焼いても無駄でしょうから、こうしましょう」

気付くと悟空、いつの間にか巨大な岩の下敷きになっており、身動き一つ出来ない。

「げ!何じゃこりゃ!」

顔だけ岩から出して慌てふためく悟空に釈迦如来は優しく諭す。

「そなたには熟成の時間が必要のようです。これから五百年の後、ここを徳の高い僧が通ります。彼に従い我が元まで供を務めなさい。共に歩み徳を積み、悟りを拓けば天上に至る道も拓ける事でしょう」

「あーそうかいそうかい、その坊さんが俺を使いこなせるとは思えねえけどな・・・って五百年?いやいやいや、いくら俺不老不死だからって長すぎね?ちょっ!!」

もう釈迦如来の声は聞こえない。

かくして孫悟空。五行山の麓に特殊な法力によって封じ込められてしまった。

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