十七 黄風大王との戦い、決着する
激しい音と立ち込める砂煙。
動く者がいなくなった洞内。
砂煙が落ち着いてみれば、頭をポリポリかいている悟空と、如意棒に顎を強打され失神している黄風大王の姿が現れた。
「あー、やっちまった」
「悟空殿、流石ですな」
「一撃ですか」
うーん。悟空がうなる。
「もうちょっと遊ぶつもりだったのに、目がよく見えないから間合いを測り損ねて終わらせてしまった」
余裕ですな。
「さて、と。どうします?これ」
玄奘が手足を縛っていた紐を何の苦もなく引きちぎると、気を失った為に正体を現した黄風大王を指した。
「あれ?こいつどこかで見たことがあるような?」
「霊山から逃げ出した貂ですな。油かなんか盗んで、バレるのが怖くて逃げたとかいう」
悟浄が意外に正体を知っていたようだ。
「ちと拙者、こやつを霊山まで送り返して参ります」
「和尚、霊山までは遠いのではないのか?」
「あー、三蔵様、ご安心ください。拙者も八戒も雲に乗って移動できますので、悟空ほどの神速ではありませんがさほど時間はかかりません」
あれ、そうなの?
「では、お任せします。拙僧らはここで待っておればよろしいですかな?」
「どうか三蔵様はそのまま先にお進みください。近い内に追いついてみせますから」
「では、孫行者、猪八戒、ここは沙和尚に任せて先を急ぐといたしましょう。沙和尚、この貂の妖怪、よろしく頼みましたよ」
沙悟浄が雲に乗って黄風大王を連れ去ると、一行は更に西に向かった。
さて、沙悟浄、無事に霊山まで辿り着き、門番に事情を話すと現れたのは金剛力士。
「これはこれは、この悪党を連れ戻してくださり心より感謝いたします」
丁寧に沙悟浄に挨拶した金剛力士。貂を鷲掴みにすると奥に戻っていった。
あの貂、どうなるんだろうな・・・
あまり深く考えることなく、沙悟浄は三蔵一行に追いつくべく、元の行路に戻っていった。
沙悟浄が一行に合流したのは、三日後のことだった。




