十五 玄奘三蔵囚われの身となり従者ら躍動す
可汗の歓待を受けその庇護のもと西に進んだ一行。
八百里黄風峰という山の麓で日も暮れたので一軒の民家に一夜の宿を願い出た。
「おやおやこれは旅のお坊様、このようなあばら家ですが、うちでよければどうぞお泊りくださいませ」
主人は快く一行を迎え入れてくれた。
食事などを済ませ、皆が寝静まった頃。
「ふっふっふ、かの三蔵ともあろう者が愚かなことよ。すっかり油断し腐って。さて、主のもとへ連れ帰り、その肝でも頂くとするか」
舌なめずりしながら現れたのは虎先鋒という妖怪。彼は主人に化けて、旅の僧侶をさらって喰らう妖怪であった。
すっかり縛り上げられて虎先鋒に抱えられた玄奘。ふと目を覚ます。
「ぬ、助けを求めても無駄ぞ。もう手遅れじゃわい」
家を飛び出すが早いか、虎先鋒は風のように駆けだした。
「あーれー、おたすけをー(棒読み)」
その逃げる姿を見送る三人。
「なあ、あれどう思う?」
「わざとですな」
「あの顔、見ましたか?完全に笑顔でしたぞ」
八戒が苦笑する。
「まあ、妖怪風情相手にどうこうなるような御仁ではありませんが、従者としては駆けつけねばなりますまいな」
「そういう試練でしょう」
「面倒臭ぇなぁ・・・」
悟空は筋斗雲を呼び、八戒と悟浄は地を駆けだした。
一方、一足先に黄風洞という洞窟に住まう妖怪のもとへ、虎先鋒はたどり着いていた。
ここに住む妖怪を黄風大王という。
「黄風大王様、旅の僧侶をまた捕えて参りましたぞ」
「む、でかしたぞ虎先鋒。おや、これはまた徳の高そうな僧侶で、げへへへへ」
舌なめずりする黄風大王。
玄奘はにこやかに話しかける。
「貴公らはこの山に棲み、道行く僧侶を捉えて喰らう妖怪であるか」
「おめさん、立場が分かってねぇみてぇだな。これから俺らに喰われるんだよ、あんたは」
「僧侶を喰らうと、何か良い事でもあるのか?」
「そうよの、徳の高い坊主ほど、妖力の高まりを感じるのよ、見るに貴僧の徳は中々に高そうじゃの。かの伝説の妖仙、五行山に封印されし石猿ぐらいには力を蓄えられそうじゃ」
ん?五行山の石猿?
と、その時洞外でその石猿の大音声が鳴り響いた。
「おうおう、妖怪!三蔵法師に手を出すなら、まずはこの俺様を倒してからにしてくれねえかな!」
「なんと、最早たどり着くとはあの従者ども、只者ではないな!」
いやまあ、その伝説の妖仙つうのがアレなんだが。
「虎先鋒、まずは奴を仕留めて参れ。その後ゆっくりとこの僧を喰らおうではないか」
「かしこまりましてございます」
虎先鋒は風のように去った。
さてさて、囚われ(笑)の玄奘三蔵と、それを救い(笑)に向かう三人の運命やいかに?




