十二 妖仙 沙悟浄
しばらくすると、悟空が丸を描いた位置に、ぴったり妖怪は落ちてきた。
「一体何が・・・?」
焚き火に当たって待っていた八戒だが、まだ何が起きたのか把握できていない。
確かに八戒は玄奘の武力を身をもって体感はしていないから仕方がないのだが、悟空は流石に見ていた。
「坐位からの旋風脚。しかも二旋で足払いした後打ち上げましたね」
お見事!
八戒は未だぽかーんとしている。
妖怪は大きな怪我はなかったが流石に毒気を抜かれて大人しくなっており、捕縛の必要はないと玄奘が判断したので、そのまま三人と話をすることとなった。
「して、そなた名を何と申されるか。拙僧は天竺へ向かう旅の僧、玄奘と申します。こちらが供の孫行者、そなたと手合わせしたのが猪八戒です」
「拙者は沙悟浄と申します。妖怪に落ちぶれた経緯を、少し長くなりますが洗いざらいお話しいたします」
元々は天界の捲簾大将という、天帝の近衛兵の長である。蟠桃会で天帝の宝を壊してしまい、懲罰を受け人界に落とされた。おいおい、天界の将軍、蟠桃会に出るのって死亡フラグなのか?八戒もだよな。
地に落ちた後も傷つけられるという刑罰をしつこく続けられるうちに正気を失い、空腹に耐えかね川に入って人を喰う妖仙と化した。以後この地を荒らしまくっていたが、ある時襲った相手が観音菩薩で、逆に諭され沙悟浄という名を与えられ、取経者の供をするよう仰せつかった。このネタは八戒もだよな。割とパターンネタが好きだね中国古典。(それどころか王朝の変遷も大概パターン化しています)
そこで長年待ったところに玄奘一行が通りかかったので、襲いかかった。
「そこ、話が全く繋がらないが、何で襲う?」
八戒が苦笑する。
「ええと、何ででしょうね?」
自分でも訳がわからないと悟浄も首を捻る。
で、獲物に飛びかかってみれば偉大な僧侶で天に召された。
おお、オチた。
「先ほどの非礼をお詫びいたします。心入れ替え供として修行に励むことをお許しいただきたい」
「取り敢えず手当たり次第襲いかかるのやめましょうね」
「はい」
「以後は沙和尚と名乗りなさい。武芸に励むのみならず、仏の道も探りなさい」
こうして沙悟浄が、旅の一行に加わった。




