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大唐西域記演義  作者: 河谷守
10/23

十 玄奘一行、雪解けを待ち西に向かい妖仙と遭遇す

時は過ぎ山々の雪が僅かに緩み始めると、交易路(とは言え山賊等現代日本では考えられないほど危険度は高い)も早急に進みたい人らによって勝手に除雪され始め武装商人たちが動き始める。

それらには遅れつつも、まだ雪残る天山山脈を一行は進む。

玄奘により仏教経典暗記マシーンと化した悟空がカタコトで仏説阿弥陀経を唱えながらカタカタ進む。

それに続く玄奘と八戒。

「孫行者はいつまであのままなんでしょうかね?」

「妖怪でも出てこれば元に戻るでしょう」

にこにこしながら答える玄奘が怖い。

「特に妖怪の気配などはしませんが、何しろ山賊なども跋扈していますので、気を付けるに越したことはありませんね。八戒も周囲の警戒をよろしくお願いします」

「時に三蔵様、この先はどのように進まれるおつもりですか?」

玄奘は懐から地図を取り出す。

「これより凌山(べダル峠)を越え、素葉(スイアブ)、白水を経て康国(サマルカンド)を目指します」

胡人(ソグド)の都ですね。そこから南下ですか」

「そうですね、縛喝(バクトラ)梵衍(バーミヤーン)を経て迦湿弥羅(カシミール)経由で天竺に向かいます」

「宗教・風俗も違うのも楽しみの一つではありますな」

一行が水場となる河の近くにたどり着いた時、悟空がふと立ち止まった。

「妖気を感じますね。孫行者、妖怪がおりますか」

「どこかは分かりませんが、こちらを狙ってますね」

「孫行者ぐらいにはぶん殴っても死にませんか?」

え、三蔵様殴りたいんですか?

「あ、いえ、殺生は仏門の感じるところなので忌避してはおりますが、死なないなら拙僧の力試しになるかと」

さらっとすごいこと言うね、この暴力坊主。

「一度私が手合わせしてみましょうか」

八戒が先頭に仁王立ちになると、水中から黒い影が襲いかかってきた。

「やはり妖怪か。この猪八戒、お相手いたす」

青黒い顔に燃えるような赤髪を振り乱し、ギラギラと光る目が狂気を孕む。この妖怪も強い。

「かかってきませい!」

気合い十分の八戒に、妖怪は叫び声をあげて踊り掛かった!

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