7.想い
しばらくの間、沈黙が続いた。百合香と由紀は男子たちをにらみつけたままだった。
百合香「紗奈、帰ろ。」
紗奈「えっ…?」
突然の言葉に、紗奈は驚いた。てっきり、まだ責め続けるのかと思っていたからだ。
由紀「もう、こんな奴らに話すことなんてないよどーせ、謝らないんでしょ?」
そういうと、百合香と由紀はもう一度強くにらんだ後、くるりと、自転車がとめてある方向を向いた。
紗奈は迷っていた。このまま関わらずに終わりたいという気持ちと、男子たちが責められるのは嫌だという感情がどろどろと混ざっていたからだ。
あと一歩、踏み出せたら。今日だけで何度そう思ったことか。
紗奈「私…る… 」
百合香「え?紗奈、なんか言った?」
紗奈は、同じことは繰り返したくない、と思った。
今まであと一歩を踏み出せなかったのは、きっと嫌われるのが怖かったのだろう。でも、今変わらなければ、一生何も変わらないように紗奈は感じた。
紗奈「私、ここに残るよ。」
由紀「…え?」
由紀と百合香はとても驚いていた。しかし、すぐに紗奈を残してどこかへ行ってしまった。
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紗奈「これからどうしよう…」
一人きりになった紗奈は、これからどうしようかと考えていた。一人で直接謝りに行くことは、まだ怖くてできなかった。
紗奈「…あ。」
紗奈は、ふと、一つの方法を思いついた。しかし、それは男子たちに何かしらの影響を及ぼす可能性は低いと思った。紗奈が変われるわけでもない。
それでも紗奈は、やるしかないと思った。
紗奈は、カバンからスマホを取り出し、何かをやり始めた。
紗奈「…お願い。」
とても小さな声でそうつぶやいていたのを、誰も知らないだろう。