6.再び
三人は再び桜木公園へ向かった。
紗奈はそわそわしていた。
男子たちがいてもいなくても、また百合香と由紀は何か言うだろう。紗奈は、二人のとげとげしい言葉におびえていた。
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桜木公園の球場の前には、緑の家の前にあった自転車たちがとめてあった。三人は、男子たちが戻ってきていることにすぐに気がついた。
男子たちは、球場の入ってすぐ右側あたりにいた。球場の壁に寄りかかって、何かを話していた。が、紗奈たちに気がつくと、黙ってうつむいた。
それを見て、由紀が男子たちに聞こえるように、チッと舌打ちをした。紗奈は怖くて、まともに二人を見ることが出来なかった。
そして、二人は大きな声で、男子たちを責め始めた。
由紀「なんで、気づいてんのに無視すんのー? 」
男子たち「…」
百合香「こんな寒い中、女子一人にするとか。ありえないし。 」
男子たち「… 」
紗奈「っ…」
紗奈は男子たちは悪くないことを分かっている。なのに、言えない。声が震えてしまう。
百合香「てか、なんで桜木公園にいるって嘘ついたわけ?うちら見に来たけどいなかったじゃん。」
男子たち「…」
由紀「無視してないで、返事くらいしなよ。紗奈に謝りなよ。ほら。 」
二人の言葉はどんどん強くなっていった。自分のことではないはずなのに、自分が被害者であるかのように。
由紀「ちょっとは悪いとか思わないわけー?」
紗奈は、気がついた。男子たちが何も言い返さないことに。
いつもならうざいくらいに言い返してくるのに、怖気づいたのか、うつむいたまま、何も話さない。
それでも百合香と由紀は男子たちのことを悪く言い続けた。
しばらくして、二人の攻撃は止まった。紗奈は結局、何も言えなかった。
百合香「はぁ…もうあきれたわ。」
由紀「サイテーだよね。こんだけ言っても、謝ろうともしないとか。」
男子たちはうつむいたままだった。一方、百合香と由紀は、それをジッとにらみつけていた。紗奈ははじの方で、ただ、黙ってみていることしかできなかった。