5.火影公園
三人は火影公園の遊具の上で話をしていた。
火影公園には秘密基地のような、あみあみの遊具がある。そこの上は女子たちのおしゃべりスポットとして人気だった。
由紀「ほんとありえないし!」
百合香「ねー。女子を一人にしておいてくし、うそつくし…」
由紀と百合香は男子のことをぐちぐちと言う。それも、厳しいことばかり。紗奈は怖くて何も言えなかった。ただ、黙って聞いていることしかできなかった。
紗奈は、自分のせいでこんなことになってしまった、という後悔が頭の中をぐるぐるとまわっていた。
由紀「…紗奈はさー、何とも思わないの?」
何かの矛先が自分に向かってきたように、紗奈は感じた。怖くて、小さな声でうん、とだけ答えた。
百合香「紗奈ももっと言ってやりなよ!」
由紀「そうだよ!怒ってもいいんだよ?」
紗奈「うん…ありがと…でも大丈夫だから。」
紗奈は二人から目をそらした。もう、何が悪いのか、分からなくなってきた。
自分には、怒ることなんてできない。紗奈は絶対にがつくほどそう思った。気が強いわけでもなければ、今直接会えるわけでもない。なにより、紗奈がきっかけで起きた事なのだから。
由紀「ねぇ、もう一回行ってみない?」
百合香「いいよー。これでもいなかったら明日、学校で言わなきゃだね。」
紗奈「え…」
もし学校で問い詰めたら、さらに大事になってしまうかもしれない。また、男子たちにかかる迷惑もきっと増えてしまうだろう。それだけは避けたいと紗奈は思った。
自分で言わなきゃ。紗奈は自ら行動しよう、と決意した。
由紀「紗奈、行くよー。」
百合香「おいてっちゃうよー?[l]早く早く![l]」
紗奈「あっ、待ってー! 」
由紀と百合香は早歩きで桜木公園へ向かった。紗奈は二人を追いかけて走っていった。
紗奈は、このあとどうなるのかが不安で仕方がなかった。ただただ、いつもの、笑顔の毎日が戻ってくるように願うばかりだった。