2.約束
長い六時間授業がようやく終わった。紗奈はぐーっと背中を伸ばす。
帰りの学活もいつも通りの時間に終わった。
帰る支度をしていると、緑がめずらしく紗奈に話しかけてきた。
緑「おい、星野。」
紗奈「んー、何ー?」
緑「放課後、空いてるか? 」
紗奈「まぁ、一応…」
緑「じゃあさ、今日遊ぼうよ。」
紗奈「いいよー。 」
紗奈はあっさりOKの返事をした。まだ小学校六年生だったからだろうか。男子と遊ぶことに抵抗はなかったようだ。
緑「じゃあ、家帰ったら、もみじ公園に来て。待ってるから。 」
紗奈「りょーかい。」
『もみじ公園で待ち合わせ』と頭の中で何度か唱えてから、紗奈は帰る支度を済ませた。
………………………………………
女子友達「あれ見たー?」
紗奈「見た見た!あれめっちゃよかったよねー。」
女子友達「うんうん!あっ、あの漫画の新刊読んだ?」
紗奈「まだー。もう読んだの?」
女子友達「うん。さっそく買っちゃったよー♪」
紗奈「いいなぁ…」
女子友達「よかったら、貸そうか?」
紗奈「えっ!いいの!?」
女子友達「もちろん!紗奈ちゃんだしね♡」
紗奈「まじで!ありがとー♡」
放課後の教室で、そんな会話をしていた。ふと、時計を見ると、四時過ぎだった。そろそろ帰らなくちゃ、と女子友達が言い始めたころだった。
((何か忘れているような…))
はっ、と思い出した。『イツメン』の男子たちとの約束を。
紗奈「私も早く帰らなくちゃ!」
急な用事を思い出した、と言って、あわてて教室を出た。