第1話:真夜中の出会い
陽ノ目家は財閥であった。ほかの財閥より頭一つ抜けて陽ノ目の財産は多かった、いつからこうなったのか、誰がどうしてここまでのし上がったのか、なぜ他より多いのか、そしてこれがいつまで続くのか、彼は常に思っていた。彼の名は陽ノ目照貴
この財閥の御曹司でありながら外出など、日常での行動は自由であった。しかし、それは彼自身が周り、特に父親から期待されていない証拠であった。
照貴「今日も見張りは無し・・・か」
夜11時 玄関の門を開け都会の街中に1人歩き出す
何か買うわけでも、待ち合わせでもなく
ただ街を見に行くのだ。
彼は家が嫌いだった、というより父親が苦手だった。彼とその父親は直接血は繋ってはいなく父親も、父親らしくいるというよりは将来や陽ノ目家がについて語る教師の様な存在であった。
照貴「ここの道・・・入った事がなかったな・・・。」
そんなこんなで、彼は家では孤立した存在と感じていた。
照貴「変な道だ・・・一本道でありながら周りに店が1つもない、というよりこの道はいつからできたんだ?昨日は気づかなかったが、人の手で作られた道であるのは確かだ」
風もなく虫すらいない道を歩く、数分後明かりが見えて来たかと思えば、布で覆われた建物がそこに現れていた。
照貴「なんだあれは・・・表札も看板もない」
すると建物の中から1人の女性が出てきた。
女性「いらっしゃいませ」
その声は落ち着きのある大人の声だった
いらっしゃいませと言っていた
まさか、こんな場所で商売をしていたのだろうか
ボクは顔を合わせず俯きながら
照貴「1つ言わせてもらう、ボクは財布を持ち歩いてない、ここへは散歩に来たんだ」
そして後ろへ振り返り歩こうとした、あの言葉を耳にするまでは
女性「代金は取りません、少なくともこの世界にいるうちは」
瞬間、ボクは女性の顔を見た
金の話より世界という言葉にボクは反応した、単なる詐欺商売なのかもしれない…ボクを中2臭いガキだと思ってのことかもしれない…話なんて聞くつもりもないはずが、ボクは知りたいと感じていた。
それは、あの道に入ってからだろうか、それとも、家を飛び出してからだろうか。
照貴「1つ言わせてもらう、ボクは本心を確かめたい、金がいらないだとか、女性の誘いだからとか、そんなチャチな想いで入るんじゃないんだ」
女性は頷いたあとテントの奥の方へ向かった、ボクは後を付けて言った。
テントの中には狭いスペースに絨毯,2つの椅子,丸い机,ずらりと並ぶ背表紙に数字だけが書かれた本のある棚,そして机の上には紙束だけがあった。
女性「どうぞおかけになってください」
照貴「1つ言わせてもらう、ボクは話を聞きに来た。どんな内容でも驚かないから名前とこの場所が何かを教えてくれるだろうか」
女性「そうですね…自己紹介がまだでした私はイドラ・ワープス、転移の女神であり、この場所は別の世界を繋ぐ狭間…言わば境界線上になります」
自分でもおかしいと感じていた、引き返すことはいくらでもできたはずだった。