8話
僕はそのまま、パンフレットの内容を確認する。すると、プライベートジェット機の座席表を見つけた。
面白いことに、プライベートジェット機を操縦していたのは、白銀乃々だったらしい。彼女の名前が、操縦席に割り振られている。
そしてその操縦席から近い順に、僕。その隣が黃島さん。その後ろが桃瀬さん。その隣が緑川さん。最後尾に青谷さん。
「うん……?」
僕はその座席表に、違和感を覚えた。
そうだ。僕はてっきり、犯人は防火斧で後ろの席から順に殺害していったものだと思っていた。なぜなら、僕たちが目を覚ました時には、死体は全て僕たちより後ろの方にあったからだ。
でも白銀さんはやはり後ろの方で死体となっていたし、青谷さんは機内前方で僕に馬乗りにされていた。
どういうことだろう。青谷さんは不時着時の衝撃で僕の方まで吹き飛んだのだろうか。それにしては傷が少ない。それにだとしたら、白銀さんの死体はどうして後ろの方にある。
犯人が順番を滅茶苦茶にしたのだろうか。なんのために? 僕だったら、座席から外して床に寝かせるだけで済ませる。わざわざ一番前の操縦席に座っている白銀さんを、後ろの方に運んだりしない。わざわざ最後尾の青谷さんを、一番前の方にまで運んだりしない。
――きゃぁあああああああああっ!
その聞き慣れた叫びによって、僕の思考は中断された。集中が途切れ、落ち着いていた緊張感が一気に高まる。鼓動が早くなり、全身に鳥肌が立つ。
「青谷さんっ!」
僕は叫び声の方へ走っていった。
*
館に着くと、玄関のドアを開けようとした。しかし鍵が掛かっていたので、まずは館の鍵を使って開けた。
玄関の先には廊下がある。廊下にはポタポタと血が垂れている跡があった。それを辿っていくと、201号室の部屋に着いた。鍵は開いていたので、そのまま中に入る。
「……ッ!?」
僕は息を呑む。先程まで強気な態度だった青谷さん。僕に対しては特に冷たい青谷さん。僕同様に、僕たちの中に犯人がいることを警戒していた青谷さん。
そんな青谷さんが死んでいた。首から上をばっさりと切断された状態で。
「う、うわぁああああ!」
僕は恐怖のあまり叫んだ。そして尻もちをつく。プライベートジェット機では冷静ではなかった。死んだ人の記憶もなかった。だから恐怖も薄かったのかも知れない。
でも今は違う。彼女は先程まで僕と話していた。仲は良くなかったかも知れない。でも彼女の胸を揉み、隣で歩き、そして会話をした。
そんな彼女が、死んでしまった。首から上のない、無残な姿で。




