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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ショートショート『死刑囚の最期の食事』

作者: 川住河住

「この世で最もうまいものは死刑執行前に食べられる」

 とある死刑囚が残した手記を読んだ俺は覚悟を決めた。

 最高にうまいチョコレートを食べるために死刑囚になると。

 そのためには罪を犯そう。死刑判決を受けるほど凶悪なものを。

 頭の悪い俺でもすぐになにをすればいいか思いついた。

 人をたくさん殺せばいいんだ。


 1人目は老人にした。

 腰が曲がり言葉をまともに話せないほど弱っていたので楽にしてやった。


 2人目は子どもにした。

 深夜の公園に来るような子どもは将来ろくな大人にならないだろう。


 3人目と4人目は両親にした。

 葬式をあげる手間を省くために家ごと燃やしておいた。


 5人目は女にした。

 顔が好みで体つきも悪くなかったので気持ちよかった。


 6人目を殺そうとしていたところを警察官に逮捕された。

 そろそろ面倒だと思っていたところを呼び止められたのでちょうどいい。

 これでもう殺す必要はないんだと思ったらホッとした。

 警察署でも裁判所でも自分のやったことを正直に告白して死刑を望んだ。

 ただし、動機については一切言わないように気をつけていた。

 精神鑑定による責任能力のなんちゃらで終身刑にされるのは嫌だったから。


 そして俺は死刑を宣告された。あまりのうれしさに叫びそうになる。

 刑務所に収監された俺は臭い飯を食べながらひたすら待った。

 一年経ち、二年経ち、三年経ってもまだ死刑執行は行われない。

 それでも俺は信じて待ち続けた。

 十年以上経ってからようやくその日がやってきた。

 とうとう死刑が執行されるのだ。

 最高にうまいチョコレートを食べられる。

 俺は、最期の食事は絶対チョコレートにしてくれ、と頼んだ。

 すると看守は呆れた様子でこう言った。























「その制度は今年から廃止された」


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