99話 王子の頼み
「どういったことをご所望でしょうか?」
――エリック王子の頼みごとが何なのかは分からないけれど、私にできることってあるのかしら?
ふとそんな疑問が湧いたが、一応頼みとやらを聞いてみた。
「僕の恋を応援してほしいです……! そしてこちらはできればですが……彼女に僕の魅力を伝えてくれませんか? ちょっとナルシストみたいで恥ずかしいですけど、現状ではこんなリディア様を介した方法しか思いつかなくて……。もちろん僕自身も積極的にアピールを試みますが、嫌がられては元も子もないのでお願いしたいのです」
懇願の眼差しで言われると、頼まれた側としても真剣な気持ちになる。
――エリック王子は本当に真剣なのね。パトリシア様が嫌がらない限りは、ぜひ協力してあげたい。
それに、エリック王子は性格上の欠点が私には思い浮かばないわ。
エリック王子であれば、大切な友人であるパトリシア様が付き合う相手として、皆が祝福できるのではないかと思う。
「エリック王子の真剣さ、よく伝わりました。パトリシア様が嫌がらない限り、エリック王子のその恋、全力で応援させていただきますわ!」
「本当ですか! ありがとうございます……! 僕もリディア嬢がもし何かあった時には全力で応援しますからね! 実は、勝手にアーネスト様とお似合いなのではと思っていて――」
またエリック王子からでたアーネスト様と言う言葉と、そのアーネスト様とお似合いと言われ、自身の顔に熱が集中するのが分かる。
「もう! エリック様ったら随分と人をからかうのがお上手になりましたね。そんなにからかうのであれば、全力で協力という話は――」
アーネスト様を変に意識しないようにするため、エリック王子に冗談半分で言葉を返そうとすると、エリック王子が必死な様子で話し出した。
「それは困ります! でも思ったことは本当です。ただ、しばらくはそのことに関しても口は閉ざしますので、協力お願いします!」
「分かりました。約束ですからね」
ちゃっかりしているなと思いながらも、エリック王子の恋に協力するという約束が成された。
その後、曲が終わるまでエリック王子はパトリシア様への想いをこんなにも隠していたのかと驚くほど、パトリシア様の好きなところを話し出した。
――これほどまでの気持ちを持っていて、よくぞ今まで隠しきれていたわね。
ここまできたら、もう尊敬の域に達するわ……。
「本当にお好きなんですね。今の調子なら、まだまだあるのでしょう?」
少しからかうようにエリック王子に尋ねると、エリック王子はニコニコと照れた様子で話を続けた。
「やっと人に話せたから、想いが止まらなくて。でも本当に、可愛らしい方ですよ。この間、アーネスト様と3人でお茶を飲む機会があったんです。そこで、パトリシア様が今日はストレートで飲むわと言ったんですよ。だけど、僕とアーネスト様が話に夢中で気付いていないと思ったのか、こちらの様子を見ながら急いだ様子でこっそりアーネスト様の分として置かれていた角砂糖を3個入れたんですよ。1個じゃなくて3個ですよ! 可愛すぎませんか? それに、本当にアーネスト様のために置かれていると信じているところも純粋で……! もう気付いてないふりをするのに必死でしたよ……!」
――何だか今、恋は盲目と言う言葉ができた理由を実感したわ。
踊りながら、よくこんなにも息継ぎせずに話せるわね。
溢れ出るエリック王子のパトリシア様愛を聞きながら、無事ダンスが終わった。
「リディア嬢、ありがとうございました。姉上のことが心配なので、エヴァン様のところまで僕も行きますね」
「お兄様は部下の方とどこかに行ったんですけど……あっ! 戻ってきております」
「どちらですか?」
「あの壁のところです」
そう言って、軽くお兄様のいる方に手を向けた。
「では、あちらまでご案内しますね。では、今日の約束お願いしますね」
「はい!出来るだけのことはご協力させていただきますね。応援しておりますよ!」
「ありがとうございます。今日はずっとエヴァン卿と一緒にいて、極力一対一で姉上と接触しないようにしてください」
「……はい、承知しました」
そんな会話をしながら、エリック王子はお兄様の元まで案内してくれた。
「エリック王子、リディアをエスコートして下さりありがとうございます」
「とんでもないです。こちらこそ楽しい時間をありがとうございました」
「それでしたら、私どもも嬉しいです。話は変わりますがエリック王子、少々私の仕事の関係で早めにパーティーから抜けなければならなくなりました。私の同伴者はリディアなので、今日はリディアともども早めにお暇させていただきます」
――お兄様もお仕事がお忙しいのね。
でも、今日に関しては早く帰られてラッキーね。
エリック王子も同じことを考えたのか、お兄様の話に安心した様子で言った。
「そうでしたか。お仕事頑張ってください。でしたら、今からマクラレン王室の方々にも挨拶しに行かれますよね? それなら、一緒に移動しませんか?」
「よろしいのですか? ぜひお願いいたします」
こうして、エヴァンお兄様とエリック王子の話が成立した。
――サラ王女にも挨拶をしに行かなければならないから、気を遣ってくれてるのね。
今日はエリック王子の気遣いに甘えておきましょう。
そう思っていると、エリック王子が口を開いた。
「では、主催者である両陛下に挨拶しに行きましょうか」
その言葉に従い、私たちは両陛下に挨拶をしに行った。
挨拶に行くと、両陛下は励ましの言葉やエヴァンお兄様に出産祝いの言葉かけてくれた。
そして、去り際にベアトリクス様に声をかけられた。
「リディア嬢、ぜひアーネストとパトリシアにも声をかけて帰ってあげてください」
「はい、もちろんでございます」
「良かったわ。では、今日は本当にありがとう」
こうして、私たち3人はアーネスト様たちがいる場所へと歩みを進めた。




