87話 挨拶
扉の向こうにいたエリック王子とサラ王女は先に入場した4人のところまで歩いてきた。
そして、陛下に促されサラ王女が挨拶をし始めた。
「皆様、本日はお集まりいただきありがとうございます。私は隣国のロイル王国からやってまいりました。サラ・ロイルと申します。そして、隣は弟の――」
「皆様、改めてご挨拶させていただきます。私はエリック・ロイルと申します」
「はい、それでは……。今回の件は皆様もご存じでしょうが、ここマクラレン王国と、ロイルが友好国となったため、親善交流のため私たちはこの一カ月、マクラレン王国に滞在することになりました。その初日として、このような歓迎パーティーを開いていただき、とても嬉しく光栄に思います」
そう言うと、サラ王女は陛下に向き直り一言言った。
「このような催しの場を設けてくださり、ありがとうございます。陛下」
すると、陛下はニコニコとした笑顔で笑いながら頷いていた。
その反応を見てサラ王女は微笑んだ後、大衆の方に向き直り話し出した。
「私たちはこれから一か月ほどここに滞在して、この場にいる皆様と交流することが出来たら良いと思っております。この一カ月、私共をぜひよろしくお願いいたします」
こうして、堂々と挨拶をしたサラ王女は優雅な佇まいで持ち場に戻った。
それから、国王陛下の合図で挨拶が終わり、交流が再開された。
私はそっとお兄様に話しかけた。
「エリック王子が銀髪なので、勝手にサラ王女も銀髪かと思っていましたが、燃えるような赤ですね。ここまでの赤はアリソン嬢以外に見たことが無いです。綺麗だわ……。それに本当にお美しい方ですね。 あのようなお方がきっと、絶世の美女というのでしょうね……」
「ああ、そうだな。髪色は少し意外ではあったが、エリック王子の顔と同じように美しい方だな……。まあ、リディとディーナの方が俺は好きだけどな!」
「ははっ……」
そう言われ苦笑していると、お兄様が話を続けた。
「そういえば、アーネスト殿下とパトリシア殿下に挨拶しに行くんじゃなかったのか?」
そう問われ、私はアーネスト様たちのいる方を見た。
――アーネスト様たちのところに行くのは、挨拶をしたい人たちの行列になっているから、もう少し落ち着いてからが良いわね。
それにしても、今回はアーネスト様たちと一緒にエリック王子とサラ王女がいるから、一組一組の挨拶にも時間がかかりそう……。
「もう少し人の流れが落ち着いてからにしませんか?」
「確かにそうだな。俺も今はそれが良いと思う」
そう会話したあと、私はお兄様と一緒に、私たちから挨拶をしなければならない王族以外の貴族への挨拶回りを始めた。
もちろん、ベル公爵にはお礼も言った。
そして、挨拶回りを終え、少し休憩をした頃、アーネスト様たちのところへお兄様と挨拶をしに行った。
しかし、そのときサラ王女の姿は見当たらなかった。
どうやら、サラ王女は一時的に席を外しているようだ。
すると、パトリシア様が興奮した様子で、私の手を掴んで話し出した。
「やっと来てくれたのね! リディア様! 待ってたのよ!」
開口そうそう、パトリシア様がそう告げた後、アーネスト様の方を見た。
「ああ、いつ来てくれるのかとずっと待っていたよ。よく来てくれたね。嬉しいよ」
そう言うと、チラっと髪飾りに目をやり嬉しそうにニコッと笑いかけてきた。
2人の声掛けに少し照れていると、私が来たことに気付いたエリック王子が話しかけてきた。
「リディア様! お久しぶりです! お元気でしたか? 今日は一段とお綺麗ですね! ドレスも髪飾りもお似合いです!」
「まあ、エリック王子! ありがとうございます! あら? また背がお伸びになりましたね」
「はい! そうなんです! リディア様に最後に会った日から5cm以上は伸びましたよ!」
「この期間でそんなに伸びるだなんてすごいですね……!」
――久しぶりに会ったけれど、ロジェリオのことも知っているだろうに普通に接してくれて嬉しいわ。
知らないフリをしてくれているのよね……。
そんなことを思っていると、3人からの視線が集まっていることに気づいた。
「リディ、ちょっとお兄様のところに来なさい。まだ私はきちんと挨拶出来ていないんだよ?」
「ご、ごめんなさい!」
――つい話しかけられたから、そのまま普通に話してしまっていたわ!
ごめんね! お兄様!
そう思っていると、エリック王子がお兄様に話しかけた。
「エヴァン卿もお久しぶりです。リディア様のことを怒らないであげてください……。僕がいきなり話しかけてしまったんです。ね? リディア様?」
――うわっ、何て答えたら良いの……?
はいそうです! と言う訳にもいかないわ。
それに、慣れた人だからと気を抜きすぎてしまった私が一番ダメだったわ……。
そう思っていると、アーネスト様が助け船のようにお兄様に話しかけた。
「エリック殿もこう仰っていますから、改めて挨拶しましょう」
そう言ったかと思うと、エリック王子の方を見て一言放った。
「それで良いですよね? エリック殿?」
笑顔で話しかけるその声はいつもの優しいアーネスト様なはずなのに、その瞳の奥がほんのりと冷徹さを帯びているように感じた。
微々たるものではあるものの、私は不穏な空気を感じてパトリシア様を見た。
すると、先程までのような笑顔は消えていて、パトリシア様の方もどことなく元気がなさそうな表情をしていた。
一転、エリック王子は「はい」と同意し、笑顔だ。
――エリック王子以外、みんな一体どうしちゃったの……?
そう思いながらも、改めてお兄様と挨拶をし直した。
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