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64話 懸念

「夜会当日、兄様本人から夜会での出来事を聞いたんだ。それで、どれだけ兄様がリディア様に最悪なことをしたのか色々知ったんだ。ただ、本人からの話って言うのもあって、次の日の朝お父様とお母様からも話を聞こうと思ったんだけど、帰って来たとき2人とも、とても具体的な話を聞ける状態じゃなかったんだ」


――2人とも倒れたり、倒れそうになったりしていたから泊まることになっていたけど、話を聞ける状態ではないなんて、いつまでも居ることは出来ないにしろ、帰ってきて大丈夫だったのかしら……!?


「ライブリー侯爵と、ジュリアナ夫人の体調は大丈夫なの?」

「今のところ、2人の体調は大丈夫だよ。父上と母上の体調も心配だけど、僕はリディ様が1番心配だよ。1番嫌な思いをしたのはリディ様なのに、むしろこっち側の心配をさせてしまってごめんなさい……」


――いくら家門同士の繋がりのせいでこうなったとはいえ、私はウィルが何も悪いことをしていないことを知っている。

 そんなウィルをこの件で、こんなにも謝らせてしまうなんて……。

 罪のない子をこんなにも謝らせるように仕向けてしまったのは、結局のところ私よ。

 ウィルがこの過度な罪悪感を吹っ切ることができるのなら、恨まれても仕方ない。

 はっきりと言うしかないわね。


「ウィル、あなたが私を気にかけてくれる気持ちは有難いわ。だからこそ、はっきりと言っておくわ。……実は、弾劾を開くように進言したのは私なの。これで、私は自分がされたことに対する報復はした状態よ。だから、私はそこまでウィルに謝ってもらうような立場じゃないの。私はあなたのお兄様を――」


 言いかける私の言葉を遮るようにウィルが言った。


「そんなこと関係ない! リディ様は何も悪いことをしていないことを僕は知っているんだよ? 弾劾されても仕方ないことをした兄様たちが悪いんだ! それに、リディ様は兄様の処分で、兄様の騎士への道を残してくれたじゃないか……!」


 そう感情的に叫んだあと、ウィルはぽつりぽつりと話し出した。


「昨日、お父様とお母様から具体的な話を聞けなかったから、僕は今日の朝こっそり王宮に行ったんだ。知り合いがいるから話を聞こうと思って」


――絶対、あの人のことね。


「ウィル、それってサイラス卿のことでしょう?」

「っ! う、うん、そうだよ。それで、兄様やお父様、お母様から聞けなかった夜会での話を聞いたんだ。それで、兄様だけでなく、あの女のしたことも聞いて、もう居ても立っても居られなくなって、サイラス卿から話を聞いたその足で、ベルレアン家まで来たんだ。あ! サイラス卿のことは怒らないで! 僕が無理矢理聞き出したんだ!」


――そうだったのね……。

 サイラス卿は、ウィルがどれだけ聞き出したとしても、今のウィルが聞いたら本格的に精神的に参ることは絶対に言っていないと思うから、大丈夫なはず。


「サイラス卿には怒らないわ。彼には手伝ってもらったこともあるから」

「うん、そのことについては軽く聞いたよ。弾劾についても改めて聞かせてもらったんだ。もう、どうしたら良いのか分からないくらい申し訳なさ過ぎて、リディ様に謝りに来たんだ。最低なことをしたとはいえ、やっぱり唯一の僕の兄様だから、その兄様のしたことは弟の僕も謝らないといけないと思って、リディ様に謝りに来たんだ。それに、僕は立場的にこうでもしないとリディ様に会って謝る機会が無いだろうから」


 そう言うと、ウィルは衝撃の言葉を続けた。


「ただ、兄様は絶対に気付いてなさそうだから、情けないけれど、僕が代わりに謝らせてもらいたいことがあるんだ。あの女が着ていたドレスはリディ様が着ていたことのあるドレスだよね? 自分の瞳の色のドレスをあの女が着ているってことも有り得ないし、リディ様の前でその女を見てかわいいと言うなんて、その時点で人として有り得ないのに、リディ様が昔着ていた自分の瞳の色のドレスにも気付かないなんて、もっと有り得ないよ! まず、そんなことをする時点で、兄様は何もわかっちゃいないし、反省していなかったんだ……」


――え!? サイラス卿はどうしてそんなことまで知っているの!?

 しかも、どうしてそれをウィルに伝えたの!?

 そんな人ではないはずなのに!


 そう思い、ウィルに問いかけた。


「どうして、サイラス卿はそんなことを知っているの!?」


 すると、ウィルは慌てて説明を始めた。


「サイラス卿の王宮の執務室で話していたんだけど、突然ルイス家の令嬢がノックもせずに執務室に入って来たんだよ!」


――ルイス家の令嬢ということは、ルイス伯爵の2人の娘の内のどちらだけど……。

 性格の特徴やそもそもの環境上、妹のセレーネ嬢は確実に有り得ないから、姉のアリソン嬢の方ね。


 そう思いながら、話の続きを聞いた。


「令嬢は馬術の訓練のときお互い話したことがあるから、僕を見て誰か分かったみたいで話しかけてきたんだ。それで、『夜会でファーストダンスの前に、あなたのお兄様はリディア嬢の前でエイミー嬢のことをかわいいと言っていたわ。それに、エイミー嬢が着ていたドレスはリディア嬢が昔着ていたドレスを少しアレンジしたもののはずよ! 間違いないわ! あのドレスはとっても素敵だったから、絶対に見間違えるはずがないもの! それにそのドレス、あなたのお兄様の瞳の色を映し出したかのような色のドレスなのよ。あなたのお兄様に一言言ってやりたかったけれど、私の出る幕ではないと思って聞こえないふりをしていたの。どうか、お兄様によろしくね』って言われたんだ。それで、兄様がしでかしたことを知ったんだよ。他にも気づかずに兄様がしでかしたことがあると知って、僕には想像もできないようなことを他にもリディ様にしていたんじゃないかと思うと、とても正気じゃいられなくて……」


 そう言うと、再びウィルの目には涙が滲み始めた。

ここまでお読みいただき、大変ありがとうございます!


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