52話 受け入れと、反論
アーネスト様が、エイミー嬢の弾劾原因について述べると言った途端、会場中が静まり返った。
そして、それを確認し、アーネスト様が話し出した。
「彼女の弾劾原因は3つある。1つは、王女宮侍女であるにもかかわらず、王女宮の風紀を乱したことだ。2つ目は、職務怠慢だ。そして、3つ目は横領をしていたということが判明したからだ」
この発言により、一瞬静まり返った会場に、再びどよめきが走った。
ロジェを見てみると、信じられないくらい目を見開き、驚きの表情でエイミー嬢のことを見ていた。
――風紀の乱れ以外のことに関しては、ロジェも予想していなかったことでしょうね。
それにしても、エイミー嬢はこの期に及んで、アーネスト様をどうしてあんなにも睨みつけられるのかしら!
私は、弾劾されている立場にもかかわらず、一国の王太子をきつく睨みつけるエイミー嬢を見て、悪寒が走った。
しかし、エイミー嬢のその視線を気にすることなく、アーネスト様は言葉を続けた。
「原因の仔細について、簡単に延べる。まず、1つ目の風紀の乱れだが、その原因となったことが2つある。まず1つは、ロジェリオ・ライブリーと恋仲という噂が広まっていることを自覚しながらも、その噂を収束させるどころか、より広めるような行動を繰り返したことだ。この件に関しては、ロジェリオ・ライブリーと同じ内容だ。もう1つの原因は、同僚の侍女たち複数人の在りもしない悪評を広めていたことだ」
これを聞き、貴族たちは近くの貴族たちと話し出した。
「一緒に働いている方の、それも複数人の悪評を1人で広めるだなんて、自分の身が怖くないのかしら? 王女宮の侍女なら、貴族の子女ばかりでしょうに」
「怖くないから、そうしたのでは? だって、弾劾されているのに、泣き出すどころか、アーネスト殿下やパトリシア殿下をあんなにも睨んでいるのよ。悪評を広げるくらい、あの子にとってはただのお喋りなのでは?」
「おい、お前王女宮の侍女と仲違いしたと言っていなかったか? もしかして、あの女から嘘の話を聞いたんじゃないか?」
「ああ、そうだ。あの女からナンシーの悪評を聞いたんだよ。全部嘘だったのか! くそっ! あまりにも真実のように話すから、騙された!」
「一方の話だけを信じて、騙されたお前が悪いな。お前は、あの女じゃなくて、ナンシー嬢の話をきちんと聞くべきだったんだよ」
「ああ、そうだ。俺は最低だ。今すぐナンシーに謝りに行かなければ!」
このように貴族たちが話している中、アーネスト様は続けた。
「次に、2つ目の職務怠慢について述べる。エイミー・コールデンは勤務時間中に、職務をおろそかにし、怠けていた。例えば、自身の勤務時間中に休憩中の者と話したり、買い出しに行けば昼には帰って来られる用事でも、夕刻まで帰って来ない等の行為をしていた。また、同僚の弱みを握り、勝手に自分のしたい仕事だけをする等の行為も日常的に行っていた。よって、我々はこれを職務怠慢だと判断した」
ここまでの話を聞き、ロジェの表情を確認すると、顔色の悪さはマシになっていたものの、驚きの表情のまま固まっていた。
「そして、最後に横領について説明する。この横領に関しては内部告発を受け調査した結果判明した。買い出しの際に王女宮の金を使い、街にいた一部の子どもに、飴を買い与えていた。額自体は大きくないものの、用途に関係ないものに対し、国の金を勝手に使ったことは、横領だ。そのため、我が国として、エイミー・コールデンは横領したと判断する」
すると、一部の貴族が困ったような声で近くの貴族と話し出した。
「私の子どもが、もしかしたらその飴をもらったかもしれないの。横領されたお金で買った飴だなんて知らなかったから、貰ってしまったわ! 私も罪に問われるの?」
その声が聞こえたのか、アーネスト様が補足説明をした。
「エイミー・コールデンは、横領した金で買った飴を、貴族の子どもたちに配っていた。そのため、その飴に心当たりがある者もいるだろう。其方たちは、横領された金で買った飴であることは、知らなかったはずだ。よって、罪に問うことはないから、飴を貰った心当たりがある者たちは安心してくれ」
この話を聞き、何人かの貴族が、目に見えて分かるほどホッとしていた。
――それなりの人数に飴をあげていたのね。
そう思いながらアーネスト様を見ると、アーネスト様が口を開いた。
「ロジェリオ・ライブリー、今述べた其方の弾劾原因に心当たりはあるか?」
「はい、あります」
「では、其方はこれらの罪による処分を受け入れるな?」
そこまで言われ、ロジェは決意を固めたような眼差しでアーネスト様を見た後、言葉を返した。
「はい。受け入れます」
「分かった。では、現時点で確定している処分については、エイミー嬢への確認後宣言する」
――ロジェは、自分のしたことをようやく理解したみたいね。
でも、エイミー嬢の表情からは、ロジェと違って、反省したような様子は一切見て取れないわ。
そう思っていると、アーネスト様はエイミー嬢に話しかけた。
「では、エイミー・コールデン、今述べた其方の弾劾原因に心当たりはあるか?」
――何と答えるのかしら?
私と同じことを思っているのか、貴族たちも、ロジェの受け入れ宣言のときと違い、静まり返っている。
そして、エイミー嬢が口を開いた。
「……私は、心当たりがないわけではないですが、誤解があると思っています! 私の意見も述べさせてください! 本当の悪人は別にいるのです! それに、ロジェリオ卿も嘘をついています! いや、絶対に嘘をつかされているんだわ!」
突然大声をあげながら、訳の分からぬことを言い始めたエイミー嬢を見て、周りの人間皆が、ギョっとした顔で彼女を見た。
ロジェも、見たことが無いくらい、驚き困った表情でエイミー嬢を見ていた。
――いったい、彼女は何を言い出すつもりなの?
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